福井市がため池の不法投棄実行者に損害賠償請求

※当ブログ関連記事
2012年9月26日記事 撤去費用の負担は誰が行うべきか
2013年5月29日記事 福井市の福井市による福井市のための損害賠償請求

2013年8月1日午前7時05分 福井新聞 不法投棄撤去費用求め業者提訴 福井地裁、市が損害賠償請求

 福井市下市町にある市所有のため池に土砂などが不法投棄された問題で福井市は31日、市の許可なく、建設廃棄物などでため池の一部を埋めたとして、地元建設業者と元代表者、建設業者に廃棄を委託した元請け業者に、撤去などに掛かる費用約2億7800万円の損害賠償を求める訴えを福井地裁に起こした。

 弁護士によると、内訳は埋め立て物の掘削や運搬、処分の撤去費用約2億3300万円と、市が支出した調査費用約2千万円など。

 市は、6月補正予算に撤去費用2億7千万円を盛り、損害賠償請求額は約3億1千万円を見込んでいると説明していたが、作業内容を精査し請求額を引き下げた。

今回の記事には書かれていませんが、市民が起こした調停で、「約3600立方メートル(約6400トン)のがれき類を含む土砂」が埋められていることを不法投棄実行者自身が認めています。

撤去物ががれきと土砂だけであれば高額すぎる撤去費用と言えますが、環境基準を上回る水銀・鉛・ヒ素などの有害物質が現地で検出されたために、処理費が高額になるのも仕方がありません。

 地元住民が撤去を求めた調停の中で、建設業者は埋め立て物の約3分の1(1020立方メートル)は元請け業者の工事現場から出た残土で、それをため池に持ち込んだことを認めている。建設業者の元代表者の家族は「何も分からない」としている。

毎日新聞の報道によると、「不法投棄実行者の建設会社は現在清算手続き中」とのことですので、十中八九撤去費用の支払いはできないものと思われます。

2005年から2008年にかけての不法投棄であるため、刑事事件としては時効が成立している部分がほとんどのようです。
損害賠償請求という民事訴訟に頼るしかないのが苦しいところ。

そもそも、不法投棄現場のため池は福井市の所有地であったため、規制当局の福井県も二の足を踏んでいたのではないでしょうか。

福井市がもっと早く対応を始めていれば、事態はここまで悪化しなかったのではないかと思われます。

 一方、元請け業者は「埋め立てをした建設業者とは元請け下請けの関係になく、不法埋め立てなどの行為には全く関与していない」とするコメントを出した。

 市の調査によると、池の約4割を覆う埋め立て物は約3600立方メートル(約6400トン)。コンクリート片などの廃棄物が1~2割で残りは土砂。2005~08年にかけて埋め立てられた。市は9月ごろから撤去工事に本格的に取り掛かり、年度内に終える考え。

2008年以前の行為であるため、2010年改正で追加された元請業者の責任規定は適用されません。

そのため、工事を施工した元請業者が排出事業者(委託者)になるかどうかを、当時の基準で慎重に判断する必要があります。

工事の内容や施工形態がわからないため詳細な言及は避けますが、一般論としては、元請業者だったからという理由だけで損害賠償を行う義務があるとは言い難いと思います。

ただし、これはあくまでも2008年当時の法律規制に基づく考えであり、現在同じようなことが起これば、確実に元請業者の責任となりますので、誤解の無いようにお願いします。

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