廃棄物処理企業は利潤を得ることを認められています(苦笑)

大同特殊鋼に対する群馬県の立入検査に関する続報ですが、NHKが非常に紛らわしい表現をしているため、念のため補足しておきます。

1月28日 20時42分 NHK 「鉄鋼スラグ」で群馬県が立ち入り検査

鉄鋼メーカー、大同特殊鋼の群馬県の工場が、鉄を製造する過程で副産物として生じる「鉄鋼スラグ」をリサイクル品として販売する際、処理費用などの名目で業者側に利益の出る取り引きを続けていたことが分かり、群馬県は法律に違反する疑いがあるとみて工場を立ち入り検査しました。

群馬県などによりますと、名古屋市に本社がある大同特殊鋼の渋川工場は、鉄を製造する過程で生じる「鉄鋼スラグ」をリサイクル品として販売する際、平成21年からおよそ3年にわたって、処理費用などの名目で、業者側が1トン当たり150円の利益が出る取り引きを続けていたということです。廃棄物処理法では、産業廃棄物をリサイクル品の材料として販売する場合、廃棄物が適切にリサイクルされるよう、廃棄物を受け取る業者側に利益の出る取り引きを禁じています。

このため群馬県は、今回の取り引きが法律に違反する疑いがあるとみて、27日、渋川工場に立ち入り検査を行いました。

大同特殊鋼はNHKの取材に対し、「販売価格より運搬コストなどが高くなる場合がありやむをえないと考えていた。県の指導があれば従いたい」と話しています。

廃棄物処理法が禁止しているのは、
廃棄物処理業の許可を持たない事業者が、他社が出した廃棄物の処理を受託することです。

逆にいうと、
廃棄物処理業者が利潤を得る目的で、他社が出した廃棄物の処理を受託するのは合法です。

企業として利潤を得ないことには、廃棄物処理事業を継続して行うことはできませんので、当たり前の話ですが(笑)。

NHKの表現だと、“業者”としか書いていないので、廃棄物処理業者が利潤を得ることが違法であるかのような表現になっています。

今回の一件は、
委託者である大同特殊鋼の排出事業者責任(委託基準違反の有無)が問題になるのは間違いありませんが、

スラグを買い取りながらも、裏でスラグの買取価格を上回る販促費を受け取っていた事業者の行為が、無許可営業に該当するのかどうかも調査する必要があります。

この事件の本質は、
「委託基準違反の有無」と「無許可営業にあたるかどうか」の2つだと思います。

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コメント

  1. 僕はハト より:

    こんにちは。

    この事件?で考えさせられるのは、昨今の廃棄物業界でよく見られる「運搬費>売却費でも、最終的に再利用されていれば許可は不要」という解釈が結構まかり通っているところに要因があると思います。

    尾上様もご承知と思いますが根拠とみられる環境省からの通知「平成17年3月25日 環廃産発第050325002号」が去年改訂され、「平成25年3月29日 環廃産発第130329111号」にて有価物として再利用していると判断するための項目を例示し、より具体的に判断せよとの指針のようです。これらに当てはまらない場合は当事者がいくら再利用していると意思表示しても、客観的に該当しなければ廃棄物として扱うという事のようですね。

    従来よく見られた解釈では、運搬費>売却費でも、持ち込み先で社会通念上妥当な再利用をしていれば
    ①排出事業者で引き取り、運搬して購入する業者に持ち込む
    ②購入業者は再利用する。
    ③運搬業者は許可業者、購入業者は無許可業者
    以上の流れで①の行為は廃棄物処理法の収集運搬行為に当たる。②の行為は売買として原材料購入にあたり、中間処理等の許可は不要。
    よって契約書は収集運搬契約のみ締結して、マニフェストもAからBまでの交付手続きで終了という解釈をよく見聞きします。この運用方法自体に法的妥当性があるものかは分かりませんが…。

    ただ、上記運用を仮にしていても、この度の改訂を見ますと出来た製品がフッ素等で土壌環境基準を超えて溶質しているような場合、再利用とみなされなず、ただの無許可業者に処理を委託したという事になるのでしょうか。
    尾上様のご見解をいただければ幸いです。

  2. 尾上雅典 より:

    僕はハト 様 コメントいただき、ありがとうございました。

    不要物の売却に関しては、運賃と売却費用の比較も重要な論点ですが、
    それ以上に、現実的にリサイクル可能かどうかが重要なポイントだと考えています。

    スラグのリサイクルが一律にダメと言う気はありませんが、今回のように、容易に溶出してしまうようなリサイクルでは、やはり脱法行為だったのかと社会から認知されてしまいますので、最初から廃棄物として適切な業者に処理委託していた方が経営的にも合理的だったと思います。

    事態の全容が明らかになっていませんので、無許可業者への委託に当たるかどうかは判断できませんが、結果的には不適切な(売買)行為であったと言えると思います。

    大同特殊鋼側にフッ素等が溶出する可能性の認識があったかどうかがカギとなりますね。

  3. 僕はハト より:

    尾上様 ご返事ありがとうございました。

    他紙に掲載されていました記事には、販売時の分析ではフッ素の溶出値は基準値内であった云々と証言しているようですね。大同特殊鋼も一応大企業ですから、私も最初の販売時には最低限溶出分析位はしてあったと思います。

    スラグ(鉱滓)に限らず汚泥や燃え殻の土木資材への再利用(中間処理経由を含む)時には、必ず原料(廃棄物段階)及び製品の分析は必須なはずです。そして経験上ではスラグ(特にスクラップから鋼を作る電炉系スラグ)は工程上、フッ素等の含有しているパターンは多いです。

    法令違反の有無やスラグを土木資材にリサイクルする事自体の妥当性は格別、経験上の推測ですが最低限行政の指導なり助言等で製品の定期的な分析を行い、全て基準値以内であったが土壌に溶出してしまったのではないかと思います。

    毎日膨大な数量のスラグ(年間数万トン)が発生するなか、わずか数キログラムを定期的に検査していても、経験上結構なバラツキはあったと思いますね。

    私的には重金属等を高く含有するスラグその他の廃棄物は、たとえ製品として出荷時に溶出基準値以下だったとしても、埋め立てか無害化処理をすべきと思います。ただ、その膨大な発生量から国はグリーン購入法の品目に指定して公共工事等での使用を後押しして来たことを考えますと、この事件は一概に一業者の問題として片付けるのではなく、国も指定そのもの是非を含めて再検討すべきではないかと思います。

    ※尾上様、この投稿のご返事は不要です。

  4. 尾上雅典 より:

    僕はハト 様 コメントいただき、ありがとうございました。

    スラグに関する現状についてはご指摘のとおりと思います。

    「スラグは不溶化するため溶出しない」という前提で、行政が土木資材として後押しをしているのが現状ですが、使っても良い場所を狭く限定するべき時期に来たのかもしれませんね。


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