富山市側の随意契約中止が違法と認定された事例

一般論としては、自治体と事業者との間の契約は入札によって行うべきですが、実際には、引受先の事業者が1社しかない場合など随意契約を行うことが必要なケースが多々あります。

今回ご紹介するのは、
市と廃棄物処理業者の間で長年信頼関係に基づき随意契約を締結していたが、市側の事情で随意契約を指名競争入札に変更したことが違法と裁判所によって認定されたケースです。

(2014年03月26日 18時58分) チューリップテレビ 富山市の随意契約を変更 2億3300万円の賠償命令

 汚泥の処理について、富山市から業務委託を受けていた東京都の産業廃棄物処理業者が、「事業を廃止するまで」との合意のもとで結んでいた随意契約を、市側が指名競争入札に変更したのは違法行為にあたるとして市に対し、11億2500万円の賠償を求めた民事裁判で、富山地裁は、市に2億3300万円の賠償金の支払いを命じました。

 この裁判は、汚泥を有機肥料に変えて処理する業務について、富山市から業務委託を受けていた東京都の産業廃棄処理業者立山エンジニアリングが、「事業を廃止するまで」との合意のもと、1986年から2010年まで続けていた随意契約が、市側の方針転換によって指名競争入札に変更されたのは、「信頼関係を不当に破壊するもので、違法だ」として、市に対し、業務委託が継続されていた場合に想定される営業利益など、11億2500万円の支払いを求めたものです。

 判決で裁判所は、2009年に、産廃業者が工場に設置した脱臭装置について、市側が、「設置費用の3億6000万円を負担する」との提案をしていた点に触れ、「原告の期待は、法的保護に値するもので、被告がその期待を侵害した場合には、損害賠償責任を免れることはできない」として、市に対し、2億3300万円の支払いを命じました。

上述したとおり、随意契約はあくまでも例外的措置ですので、随意契約を競争入札に変更すること自体は違法ではありません。
むしろ、予算執行の公平性、透明性の確保のために、入札形式で委託業者を決めるのが世の中の趨勢となっています。

今回裁判所によって富山市の契約変更が違法と判断されたのは、24年間随意契約で一般廃棄物の処理を委託せざるを得なかった経緯や、富山市側が業者の設備投資費用の一部を負担すると提案していたことなどが勘案され、
「随意契約を事業廃止まで継続してもらえる」という業者側の期待は、法的保護に値する
と判断されたためです。

そのため、現在随意契約をしているすべての契約に当てはまる話ではありませんが、
自治体と長年随意契約を締結してきており、その地域の公共インフラとして誠実に業務を行い、自社の負担でインフラとしての設備投資もしてきた企業にとっては、関係性の高い判例と言えます。

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