『「許可取消」の取消』の取消を求める訴訟

今回は読みにくいタイトルになっています(笑)。

行政庁により許可取消をされると、取消の時点から許可は無いものとなります。

「許可取消」の取消 が成された場合は、上記の許可取消が無かったこととなり、許可は復活します。

『「許可取消」の取消』の取消を求める訴訟は、もう一度許可を取消せということになります。

2014年6月24日付 岐阜新聞 許可取り消し求める 中津川の産廃計画、住民らが集団提訴

 中津川市福岡に産業廃棄物処理施設を設置する計画について、設置に反対する地元の住民グループ「福岡産廃施設建設に反対する住民の会」は23日、国と県に裁決や許可の取り消しを求める集団訴訟を24日に岐阜地裁に起こすことを明らかにした。

 住民の会によると、原告は設置が計画されている同市福岡に住む175人。

 県は2009年11月、産業廃棄物収集運搬業者「河村産業」に施設の設置を許可したが、住民から同社の説明が不十分だったとの指摘を受け調査。10年7月に許可を取り消した。一方、同社から審査請求を受けた環境省は昨年12月、説明の不十分さが許可を取り消す理由にはならないとして、県の処分を取り消した。

 行政に対する取り消しの訴えは、処分や裁決から6カ月以内となっており、住民の会は「今しか提訴できない」と説明している。

そもそもの混乱の発端は、「住民への説明が不十分だったという理由」で、岐阜県が産業廃棄物処理施設の設置許可を取消したことです。

廃棄物処理法では住民への説明などは一切義務付けられていないため、それを根拠に許可を取消すと違法になります。

このような仕打ちは、事業者の信頼性や経営者の人間性とは無関係に、行政機関としてやってはいけない公権力の行使です。

本日の記事で勉強になったのは、赤字の部分。

最初この記事を読んだときは、
「行政不服審査法の審査請求期間は60日のはず。それに、申請者ではない住民団体が審査請求を行うことができるのだろうか?」
という疑問を持ちましたが、

正しくは、裁判所に訴えを起こしている以上、行政不服審査法ではなく、行政事件訴訟法の規定に基づく訴えとなります。

行政事件訴訟法の規定では

(抗告訴訟)
第三条  この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
2  この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
3  この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求、異議申立てその他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

審査請求に対する環境省の裁決も、抗告訴訟の対象となります。

そのため、今回の訴え自体は有効です。

そして、記事にもあるとおり、出訴期間は「裁決があったことを知った日から6カ月以内」ともされています。

(出訴期間)
第十四条  取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2  取消訴訟は、処分又は裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
3  処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合又は行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合において、審査請求があつたときは、処分又は裁決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、前二項の規定にかかわらず、これに対する裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したとき又は当該裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

2013年12月28日付の岐阜県の発表によると、
許可取消の取消裁決があったのが「2013年12月25日」ですので、
2014年6月24日に訴えを起こしたのは、まさにギリギリのタイミングとなります。

さて、問題は住民団体の訴えが認められるかどうかですが、
上述したように、岐阜県の取消処分自体が法的要件を欠く違法なものであった以上、それを取消す裁決をした環境省には落ち度がありません。

そのため、手続要件的には、勝ち目が薄い訴訟ではないかと思われます。

ただし、裁判的には勝ち目が薄いとしても、住民の生活環境を守ることも不可欠です。

全員が納得ずくで焼却炉を設置するのは難しいと思いますが、冷静かつ合理的に双方の妥協ラインを話し合う機会を作ることが必要です。

賛成か反対かという極端な一元論ではなく、
景観や環境配慮のために、近隣の利害関係者と合意形成を図る手段を法制化する必要があると考えます。

廃棄物処理施設のみならず、建築物を建てる際にはすべて問題となる内容ですので、新法を制定しても良いくらいだと思います。

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