不祥事が起こる理由が集約された一言

「ダイオキシン類を大量に含んだばいじん」があちこちに飛び火した滋賀県高島市。

問題の本質を高島市長がコンパクトにまとめています。

2014年6月24日付毎日新聞 ダイオキシン廃棄物:高島市違法搬入 「あしき踏襲」7年 市長改めて謝罪 /滋賀

 基準を超えるダイオキシンを含んだごみ焼却廃棄物を、大阪湾フェニックスセンターの神戸沖埋立処分場に搬入していた高島市の福井正明市長は23日、2007年に「誰が、どういう議論をして、どう判断したのか。当時の職員や書類記録では定かでないが、次年度からあしき踏襲が始まったと思われる」と語った。市は違法な事態の経緯を調査中で、検査で初めて基準超えの数値が出た当時について認識を示した。

 福井市長は市の問題として「職員の課題先送り、順法精神や危機管理の欠如があった。7年間もなぜ(違法事態を)続けたのか解明したい。組織としてチェックできなかったのも問題」としたが、「書類記録などでの(当時の)事実関係把握は難しい」とも語った。

 福井市長は「フェニックスセンターへは07年から7年間、再測定した低いダイオキシン数値を報告し事実を隠蔽(いんぺい)した。信頼を裏切る行為で、近畿2府4県168自治体、関係団体に多大な迷惑をかけた。心からおわびする」と改めて謝罪した。

 市は、福井市長を委員長に幹部職員らで対策強化検討委員会を設置し、書類記録の点検や職員の聞き取りを開始。退職者も含めた環境センターや関係部課の職員は約80人いるが、詳しい事情を知らない職員もおり絞り込んで聞き取りを進める方針。また、環境工学の専門家や弁護士らをメンバーとする第三者調査委員会を月内にも発足させる。

ただし、悪しき踏襲ではない、「良い踏襲」というものが存在するのかは疑問に思います。

踏襲とは、私個人の定義としては、「前例を無批判に受け入れ、現状で最善の方法かどうかを検討することなく、過去のやり方をそのまま真似すること」ですので、「良い踏襲」などというものは存在しないと考えます。

「ルールや手順を守ること」と、「踏襲」とは似て非なる言葉です。

ゆえに、問題の本質を「踏襲」の一言で片づけてしまうと、不祥事が起こる理由の本質を外した、高島市長が言われる「課題の先送り」にしかならないと思います。

役人に向かって「前例を踏襲するな」と命じるのは、彼らの行動様式を全否定することであり、彼らの本心からの心変わりを期待することはできません。

ここは、一方的な精神論ではなく、「個人で仕事の責任を負いたがらない」「(暗黙か明文かを問わず)組織の方針に忠実」という、役人の他の特質を活用するのが得策であると考えます。

具体的には、「前例踏襲禁止」という最初から守れないことを強制するのではなく、
逆に、守らなければならないルールや手順を明文化し、それが守られているかどうかを定期的にチェックすることが有効だと思われます。

おそらく、「大阪湾をダイオキシンで汚染してやろう」などと、反社会的な動機で不正にばいじんを搬出していた職員は皆無のはずです。

自分、あるいは組織としての行動がもたらす結果に対する想像力が欠如していたことが最大の問題。

一人一人の想像力を補うためには、
それぞれの人に自発的に想像力を身に付けてもらうか、
ルール違反がもたらす結果がわかるように工夫をして、ルールを明文化するしかありません。

前者は言いっぱなしの精神論ですので、やはりここは後者の再発防止策を取っていただきたいものです。

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