大阪湾フェニックスセンターへのばいじん不正搬入問題の整理

下記の新聞報道の表現に違和感を感じたので、「大阪湾フェニックスセンターへのばいじん不正搬入」の問題点を再整理しておきます。

2014年6月24日 毎日新聞 ダイオキシン:クリーン21長谷山の廃棄物、基準超 城南衛管、「違法搬入」を謝罪 /京都

 宇治市など3市3町の廃棄物処理を担当する城南衛生管理組合(八幡市)が、基準を超えるダイオキシンを含む廃棄物を大阪湾フェニックスセンターの大阪沖埋立処分場(大阪市此花区)に搬入していた問題。宇治市の折居清掃工場で23日に記者会見した組合管理者の山本正・宇治市長は「重大な事案。信頼を裏切り、深くおわびします」と、ダイオキシン類対策特別措置法に基づく報告をしていなかった「違法搬入」を謝罪した。

 2010年の自主検査で、クリーン21長谷山(城陽市)から出た廃棄物のダイオキシン類含有量が基準を超えていたことを知りながら、報告を怠ったことについて、組合の越智広志・安全推進室長は「ダイオキシン類は不完全燃焼で発生しやすい。しかし、焼却施設の運転環境に異常が見られなかったことや、その後の5回の測定で基準値を下回ったことで、継続的な状況ではなく、何らかの要因による異常値と判断したようだ」と説明した。

(略)

 組合が「一時的な異常」と判断して報告しなかったことについて、大阪湾フェニックスセンターは「おかしいと思う」と話し、クリーン21長谷山からの搬入停止の処分について「停止期間は決まっていない」と語った。

記者の言いたかったのは、「城南衛生管理組合が大阪湾フェニックスセンターに対して、『管理型処分場でそのまま処分できるレベルのばいじんではない』ことを告げずに埋立処分をやらせたことが違法だ」という趣旨であろうと思われます。

しかし、ダイオキシン特措法には、ばいじんに3ng-TEQ/g以上のダイオキシン類が含まれている場合に、委託先処理業者(厳密には、大阪湾フェニックスセンターは処理業者ではありませんが)にその旨の報告を義務付ける規定はありません。

正しくは、管理型処分場でそのままでは処分できない廃棄物を委託したことに該当するので、廃棄物処理法に基づく市町村による特別管理一般廃棄物の委託基準違反です。

詳細のすべてを説明すると非常に複雑になり、逆に理解がしにくくなりますので、あえて結論だけを書きますが、
市町村が処理すべき廃棄物の委託基準違反があったとしても、市町村を罰する罰則はありません。

民間の焼却炉設置事業者がやった行為なら逮捕者が出たケースかもしれませんが、市町村が同じ行為をやった場合には何ら罰せられないということになります。

ただし、罰せられないからと言って、喜々として法律違反を続ける市町村はあり得ませんので、重大な(政治的)責任が発生するのは避けられません。

では、そもそもダイオキシン特措法では、焼却炉のばいじんの処理をどのように規制しているかについてですが

広島県の解説が一番わかりやすいと思いましたので、広島県のサイトから画像を転載してご紹介します。
広島県HP ダイオキシン類対策特別措置法に基づく規制の概要

dxn

要点をまとめておくと、

・一般廃棄物のごみ焼却施設から発生したばいじんは、特別管理一般廃棄物になる
・特別管理一般廃棄物であるばいじんは、溶融や焼成などの処理をし、ダイオキシン類の含有量が3ng-TEQ/g以下になれば管理型処分場で処分可能
・言い換えると、溶融や焼成などを行った場合でも、含有量が3ng-TEQ/g以上のものは、どこにも持っていく先が無い

となります。

今回の一連の不祥事は

ばいじんから3ng-TEQ/g以上のダイオキシン類が検出された!
    ↓
しかし、溶融や加熱等のばいじんの再処理を行うには多額のコストが掛かる。
※筆者追記 最近の新聞報道で、高島市では燃えがらなどの溶融処理を行っていたことがわかりました。
    ↓
だったら、ばいじんのダイオキシン類含有量が「3ng-TEQ/g以下」という分析結果になるまで測定を繰り返せば、フェニックスに大手を振って搬入できるんじゃね?
測定結果を改ざんしているわけでもないので、良心も咎めなーい!

という、思考経路をたどったものと推察されます。

ばいじんという廃棄物の最終形態で対策を取ろうとすると、
再処理に多額のコストを掛けるか、
分析を繰り返すという不正に手を染めるしかありません。

一番合理的なのは、焼却時からダイオキシン類の発生を抑制することですね。

「言うは易く、行うは難し」なのですが。

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コメント

  1. とある排出事業者の人間 より:

    尾上さま

    一応社内向けの廃棄物関連の管理部門にいる
    「とある排出事業者の人間」と申します。

    今回のフェニックスの搬入騒動ですが、一般廃棄物の焼却施設から
    発生したばいじんは、ダイオキシンの濃度に関係なく特別管理一般廃棄物に
    該当するのでは、ないのでしょうか?

    ダイオキシンが出ていない、ばいじんであればコンクリート固化などの
    処理をすれば、埋立処分ができるとの認識ですが、今回はそれすら
    やっていなかったのでしょうか?

    差支えなければ、ご見解をお聞かせください。

  2. 尾上雅典 より:

    とある排出事業者の人間 様 コメントいただき、ありがとうございました。

    おっしゃるとおり、一般廃棄物のごみ処理施設である焼却炉から発生したばいじんは、ダイオキシン類の濃度に関わりなく、特別管理一般廃棄物になります。
    環境省「特別管理廃棄物規制の概要」 http://www.env.go.jp/recycle/waste/sp_contr/

    特別管理一般廃棄物の処分基準については、一般財団法人九州環境管理協会の解説が簡易明瞭でわかりやすいです。
    http://www.keea.or.jp/qkan/waste/waste88.htm

    最近の新聞報道を見ると、高島市の焼却炉には溶融炉が併設されていたようですので、ばいじんの溶融処理はしていたものと思われます。

    が、肝心のダイオキシン類の含有量が多すぎる場合、ばいじんの溶融処理をしたところで管理型最終処分場に埋めることはできませんので、再測定が繰り返された
    ということになろうかと思います。

    問題点がさらに明確になるご質問をありがとうございました。

  3. とある排出事業者の人間 より:

    尾上さま

    先日、ご質問させて頂きました「とある排出事業者の人間」と申します。

    フェニックスの搬入騒動についてご見解を頂きありがとうございました。


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