行政指導前置主義
当ブログ2014年8月25日付記事 廃家電の不正輸出容疑で家宅捜索(東京都) で解説した家電スクラップの不正輸出事件に関し、業界誌が事件が起こった背景をより詳しく報じていますので、再度ご紹介します。
2014年9月9日付 WEB産業新聞 スクラップ業者、不正輸出で通報 家庭用空調に廃棄物判断
環境省が5月上旬、スクラップ商社の泰和商事を、廃棄物処理法違反(無確認輸出未遂)で警視庁に通報した。家庭用エアコンなどの廃家電をタイに輸出しようとした疑いで、無確認輸出未遂での通報は、スクラップ業者では初めてになる。同社と同様に雑品をメーンに扱うスクラップ輸出業者は多いが、今回の事例では何が問題になったのか。
今回注目されたのは、スクラップに家庭用エアコンが含まれていたことだ。家庭用エアコンは、家電リサイクル法の対象となる4品目に含まれ、国内における適切な再資源化処理が義務付けられている。このため、家電リサイクル法への違反が問題視されたとみる向きが少なくない。(略)
一般的に、廃棄物は金銭価値がないものを指し、有価で引き取ったものは廃棄物ではないとの考え方がある。しかし、実際はそうではない。環境省で家電リサイクル制度の評価・見直しを検討する合同会合は、2012年3月19日に「使用済家電製品の廃棄物該当性の判断について」(以下、3・19通知)を各自治体に発出。違法な廃棄物処理ルートへの対策を強化するため、使用済特定家庭用機器の廃棄物該当性についての判断基準を示した。
3・19通知では、無料または有価で買い取ってもただちに有価物とは判断できないと記載。リユース目的か、リサイクル目的かにかかわらず、性状や有害物質の有無などを総合的に判断してから、有価物とみなされる。
つまり、今回の事例は、泰和商事が輸出しようとしていた積み荷を環境省が目視で確認した結果、廃棄物に当たる可能性が高いと判断したのだ。問題となった荷の詳しい廃棄物該当性評価は現在行われている。
環境省は泰和商事に対して、過去にも行政指導をしてきた。まず口頭による指導、次に文書による指導を行っており、最終段階の厳重注意を行わんとしていたところ、今回の事例が発生したという。環境省の担当者は、「行政指導に応じる限り、いきなり通報ということはない」と話し、改善が見られなかったことが通報に至ったと説明する。 …
他の一般紙ですと、環境省がいきなり告発したかのような書き方をしていますが、
さすがは鉄鋼関連の業界誌。無確認輸出罪の容疑で通報された経緯や、行為の問題点をわかりやすくまとめてあります。
まずは口頭の行政指導に始まり、文書指導、それでも改善されないので警察への通報に至ったとのこと。
行政指導は、必要性や根拠が曖昧であることが多いため、ネガティブに捉えられることが多々ありますが、行政としては犯罪者を作ることが目的ではなく、違法状態を速やかに改善してもらうことを主旨として、行政指導で行為者の自発的な改善を促すケースもあります。
今回はまさに後者のケース。
ただし、廃棄物処理業者の方が注意しないといけないのは、
すべての違反に対して必ず行政指導で改善を促されるわけではないということです。
例えば、廃棄物の野外焼却をした場合には、警察への告発などの手続きを踏まずに、いきなり業許可を取消す自治体が実際にあります。
また、野外焼却や不法投棄を行われた場合には、環境省も「行政処分の指針」によって、「業許可の取消が適当」という判断を示しています。
「違反があっても行政指導を必ずしてくれるので、その後で対応すれば良い」という、自社にとってだけ都合の良い考え方をするのは極めて危険と言えます。
記事中で言及のあった3.19通知は、下記のもののことです。
平成24年3月19日付 「使用済家電製品の廃棄物該当性の判断について(通知)」
ただし、「3.19通知」という表現は残念ながら一般的なものではありませんが(笑)。
一般的には、通知の主旨である「廃棄物該当性の判断指針」などと呼ばれることがほとんどです。
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2014年9月11日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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