「下請け業者が勝手にやった」で済むか否か

災害廃棄物は、迅速に災害現場から廃棄物を片付け、それをできるだけ早く処分することがポイントになります。

阪神淡路大震災や東日本大震災のような大規模災害の場合、発生する災害廃棄物が桁違いに多くなるため、迅速な処分がより優先されます。

そのため、台風などによる災害の場合とは異なり、震災の場合は廃棄物処理コストも桁違いに増えますので、短期間にせよ大きな取引市場が形成されることになります。

今回ご紹介するニュースは、産業廃棄物処理業者による震災廃棄物の不法投棄容疑の報道です。

2014年11月17日付 河北新報 <大和の不法投棄>宮城県内最大規模か

 宮城県大和町の産業廃棄物処理会社「タイワコスミックミリュー」が東日本大震災の被災家屋の解体ごみなどを不法に投棄したとされる事件で、県警は17日、廃棄物処理法違反容疑で、同社のごみ焼却施設を現場検証した。産廃の総量は計約176トンに上るとみられ、県内で起きた不法投棄事件としては過去最大規模になる見通し。
 検証は午前10時ごろ、県警生活環境課と大和署の捜査員計約10人態勢で開始。同社の男性社長が立ち会い、がれき搬入から焼却までの一連の流れを確認した。
 県警はことし8月に廃棄物処理法違反容疑で同社事務所など3カ所を家宅捜索、9月に事務所隣の山林を現場検証した。県警によると、同社が埋めたのは木片などの廃材約116トンと焼却灰約39トン、廃プラスチック約21トン。気仙沼市などの被災地から運んだものが含まれているとみられる。
 同社幹部は県警の任意の調べに対し「下請け業者が勝手にやった」などと話しているという。
 同社は1991年創業。産廃の収集運搬と中間処理などを請け負っている。震災後、敷地内の施設で、家屋解体に伴うがれきの破砕や再生処理を行っている。
 現場は東北自動車道大和インターチェンジから約5.5キロ東南の山あい。

「10t以上の不法投棄は激減した」というのが政府の公式見解であり、実際にもそのとおりではあるのですが、
それだけに現在の日本において、これだけ大量の廃棄物が不法投棄されていたということに少々驚きました。

さて、捨てられた廃棄物が本当に家屋解体で発生した廃棄物だとすると、ニュースの報道どおり産業廃棄物の不法投棄となります。

「下請業者が勝手にやった」という、誠に古典的な責任転嫁が通用する時代・法体系はとうの昔に過ぎ去っていることは、読者の皆様がよくご存じのとおりです。

そもそも、産業廃棄物処理を下請という他の事業者にさせることは、委託者(排出事業者)の承諾を得ない限り違法となります。

そのため、産業廃棄物処理業者が下請という表現を用いること自体に違和感があります。

では、「(排出事業者にとっての)解体工事業者等の」下請がやった場合はどうなるでしょうか。

その場合は、家屋解体工事を受注した元請事業者の責任が厳しく追及されることになります。

ただし、新聞報道では焼却灰が39tも捨てられていますので、家屋解体工事で発生したものではなく、中間処理(焼却)後に発生した残さと思われますので、「建設工事の下請業者」が不法投棄をしたわけではなさそうです。

状況と幹部のコメントを照らし合わせると、
「ウチは適切に焼却をしたが、燃え殻の最終処分場までの運搬委託先である収集運搬業者(幹部のコメントでは「下請業者」と表現)が、焼却場の隣接地の山林に勝手に不法投棄をした」という趣旨なのかもしれません。

真相は今後の警察の捜査で明らかにされますが、
不法投棄実行者のみならず、投棄された廃棄物の排出事業者責任が問われる可能性は十分にあります。

こうしたリスクを低減させるためには、現地確認を慎重に行うと共に、「産業廃棄物を大量に溜めすぎていないか」などを定期的に観察、あるいは収集運搬業者からのヒアリングをしておきたいところです。

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