収集運搬業者が運搬中に廃棄物を落下させたらどうなる?

収集運搬車から落下したものが「ニワトリの死骸」であったため、道路を通行止めにしたうえで消毒作業が行われるという大騒ぎが起こりました。

2014年11月16日付 千葉日報 運搬中の荷台から落下 産廃業者に違反切符 成田、香取のニワトリ死骸

 成田市や香取市の路上で14日夜、ニワトリの死骸が大量に見付かった問題で、茨城県神栖市の産業廃棄物処理業者がトラックで運搬中、荷台から落としていたことが15日、分かった。香取署は運転手に道交法違反(転落等防止措置義務違反)で違反切符を交付した。

 成田署などによると、ニワトリは、館山市の養鶏場で空調設備の故障により死んだもので、全体で1~1・5トンあった。養鶏場の依頼で運搬中、東関東自動車道で荷台のベルトが切れニワトリが落下。県警高速隊の注意を受け、成田市内から一般道を走行し、香取市、茨城県内でもニワトリを落としたとみられる。通報を受けた茨城県警が車を見つけ、事情聴取していた。

そもそもの騒ぎの発端
2014年11月15日付 千葉日報 車道にニワトリの死骸 成田・香取

 14日午後6時40分ごろ、成田市野毛平の国道51号で、通行人の男性から「鳥の死骸が落ちている」と110番通報があった。成田署員が駆けつけると、同市寺台の寺台インターから吉岡交差点までの約7キロの車道上に、ニワトリの死骸約100体が点在していた。同署は同区間を上下線通行止めにし、県や市の関係機関とともに撤去作業を行った。

 同市野毛平には、約10メートルにわたって数十羽のニワトリが落ちていた。交通規制までの間に通行する車両にひかれた跡もあり、周辺には異臭が漂っていた。県の担当者が午後9時ごろ到着し、ニワトリを袋詰めし回収した。

 香取署によると、香取市佐原ハの県道でも同様の鳥の死骸が散乱していた。

道路をニワトリが闊歩することはあまり考えられませんので、ニワトリの死骸を鳥インフルエンザ等の影響かもしれないと疑うのも無理ありません。

荷台から落下後1日と経たずに原因者が突き止められていますが、千葉県警の高速隊が最初に業者に対して接触をしていたことから、迅速な原因者特定につながったものと考えられます。

さて、道路交通法では、刑事罰ではない反則切符の交付のみで済んでいますが、
廃棄物処理法ではどのような違反になり、またどのようなペナルティが与えられるのでしょうか。

最も明確な法律違反としては、「廃棄物の飛散流出」に該当します。

これは、廃棄物処理法第12条第1項(同法施行令第6条第1項)で定める「収集運搬基準」違反となります。

次は、どのようなペナルティが与えられるかについてです。

今回の事件ではニワトリの死骸が千葉県によって早急に除去されていることから、現在は生活環境保全上の支障が無い状態と思われます。

そのため、ニワトリの死骸が道路上に残置し続けていない限り、収集運搬業者に対し「措置命令」を出すことはできません。

では、改善命令ならどうか?

昭和52年11月5日付環産59号通知では、

(改善)命令は事業者に廃棄物処理法第12条第1項及び第2項に規定する基準に適合した運搬、処分又は保管を行わせるために将来に向かって事業者の行う産業廃棄物の処理方法の改善等を目的として行われるものである。

という説明が行われています。

改善命令は「将来に向かって」改善を行わせることを趣旨とします。

反則切符を交付された業者が常時荷台のベルトを欠いた状態で運搬をしている場合なら命令の対象になりますが、
単なるアクシデントでベルトが一瞬切れただけであり、現在は既に新品のベルトの交換ができているならば、
将来に向かって改善する余地はありませんので、改善命令の対象にもならないように見えます。

しかし、収集運搬業者としては、
廃棄物を絶対に飛散流出させないために、荷台用のベルトが切れた場合の対処法や応急策を立てておくことが必要ですので、
それらの対処策が無いために廃棄物の飛散流出が起こったと判断されれば、
「飛散流出防止策が機能していない」という理由で、改善命令を出される可能性はあります。

具体的には
「12月15日までに新たな飛散流出防止策を講じ、それを実施できる体制を構築すること」と、期限付きの改善命令が出されるものと思われます。

その他、産業廃棄物収集運搬基準に反した運搬が行われた以上、その事実をもって、「事業の全部停止処分」などの行政処分が出される可能性もあります。

反則切符の場合は、運転手個人が反則金を支払えば問題解決ですが、
廃棄物処理法に基づく処分は、運転手個人よりも企業として負うダメージの方が大きくなります。

単なる不注意では済まない結果になることがよくありますので、
廃棄物収集運搬企業の方は、「飛散流出防止策」が適切かどうかを今すぐ確認しておいてください。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ