「由らしむべし知らしむべからず」か・・・

ブログという公開が前提の媒体で解説するべきかどうか悩みましたが、現実に存在するリスクとして立ち現われた以上、ふたをするよりは知識として公開した方が良いと判断し、お知らせします。

長年、両罰規定の具体例としてセミナーや執筆等で使ってきたケースですが、まさか現実に行う人間が現れるとは思っていなかった事件です。

2015年6月2日付 読売新聞
勤務態度注意され、腹いせで空き地に廃棄物投棄

 愛知県警岡崎署などは1日、解体作業員O容疑者(34)を廃棄物処理法違反の疑いで逮捕した。

 発表によると、O容疑者は今年3月28日頃から30日頃までの間、岡崎市千万町町の山あいの空き地に石こうボードや木くずなど4・4トンを不法投棄した疑い。

 幸田町の家屋を解体した際に出た廃棄物で、O容疑者はいったん豊川市内の勤務先へ運んだ後、正規の処分場へ捨てるよう指示されたが、日頃の勤務態度を社長に注意された腹いせに、ダンプカーで通りがかりの空き地に投棄したという。調べに対し「捨てたことは間違いない」と容疑を認めているという

※容疑者の氏名は簡略化して転載。

自らが確実に逮捕されるというリスクに目をつむるならば、会社に対する最強、かつ最恐の報復攻撃です。

もし、容疑者が働いていた会社が産業廃棄物処理企業であるならば、是が非でも両罰規定が適用される事態を防がねばなりません。

推測の域を出ませんが、今回の事件は、そこまで緻密に会社のダメージを計算した上での犯行ではないように思えますが、腕が良く熱意のある弁護士を雇わないと、使用者である会社にも不法投棄の罰金刑が適用される可能性があります。

新聞報道によると、3月28日から30日の3日間にかけて不法投棄をしていたようですので、司法によって使用者の監督責任がどう判断されるかというところでしょうか。

こうしたリスクに対処するためにはどうすれば良いか?

中国古典の論語には、次のような言葉があります。

コトバンク デジタル大辞泉 由らしむべし知らしむべからず より

《「論語」泰伯から》人民を為政者の施政に従わせることはできるが、その道理を理解させることはむずかしい。転じて、為政者は人民を施政に従わせればよいのであり、その道理を人民にわからせる必要はない。

文字を読むことができない人民が大半だった古代ならいざ知らず、
誰でも簡単にスマートフォンで情報にアクセスできる現代では、この格言を信じて経営をするのは大変危険と言わざるを得ません。

現代語で言い換えるならば、
「従業員に罰則の詳細を理解させるのは困難なので、会社の決めたルールに従わせるだけで良い」と言っているようなものです。

会社が教育をしなかったとしても、「従業員が自ら情報収集をし、会社に対する効果的な攻撃方法を見つける」
あるいは、今回の事件のように「意図せずに、会社に対して最も効果的な報復攻撃をする」ことは防げません。

「従業員満足度を高めるしかない」というと非常に陳腐に聞こえますが、
それは福利厚生を充実させたり、給料を多く出すことのみを指すわけではありません。

究極的な対策としては、「従業員一人一人に、働き甲斐を持ってもらい、自発的に仕事をしてもらう環境にする」必要があります。

もちろん、「言うは易し行うは難し」で、それが簡単にできないからこそ経営者の皆さんは苦労をされているわけですが、
最低限、すべての従業員に「違法行為をしてはいけない理由」を納得してもらうことが不可欠かと思います。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ