長野市、1億円弱の撤去費用回収に成功

タイトルでは「回収」と書きましたが、より正確に言うならば、「排出事業者に1億円弱の撤去費用負担をさせることに成功」となりましょうか。

2015年9月8日付 信濃毎日新聞 長野市、代執行で産廃撤去 有害物質流出懸念の1000トン

 長野市穂保に大量の産業廃棄物が放置されている問題で、市は8日、廃棄物処理法に基づき、産廃を放置した同市の建築解体業「アクト全産」(破産手続き完了)に代わり、行政代執行による撤去を始めた。放置されている産廃は約1万9千トンで、このうち土壌や地下水に有害物質が流出する恐れのある約千トンを撤去する。市はこれまで、同社に同法に基づく措置命令を出すなどしていたが、撤去は見込めないと判断し、総事業費約1億3200万円をかけて代執行に踏み切った。

 県資源循環推進課によると、県内で産廃撤去をめぐっての行政代執行は、県が2000年度に旧南安曇郡三郷村(現安曇野市)と大町市に放置されていた廃プラスチックなど約3700トンを、02年度に上伊那郡南箕輪村に放置された有害物質「硫酸ピッチ」入りドラム缶など約230トンを撤去した例がある。長野市は県内唯一の中核市で廃棄物行政を担っており、県内で市による行政代執行は初めて。

 アクト全産は中間処理などのため回収した2万トン余を長野市穂保の市道を隔てて南北の借地2カ所に放置した。うち北側の一部にあった3097トンは、同社に不適正な手続きで処理を委託した排出事業者46社が費用計9928万円余を負担し、市が13年5月下旬までに撤去。他に、1社が南側の70トンを自主撤去した。

 現在放置されている産廃は廃プラスチックや木くずなどで、南側に約千トン、北側に約1万8千トン。南側は土壌と地下水に有害物質のヒ素やフッ素の流出が推定されるため撤去することにした。撤去費用は8200万円余で、12月中旬までに終える予定だ。

 一方、北側は量が多く、がれきや土砂が9割を占めて有害物質も検出されていないため、4900万円余で傾斜を緩やかにした上で、土で覆う作業を10月初旬から来年2月初旬まで予定する。

 市は費用について、元アクト全産役員の2人に請求するとしている。

46社で総額9,928万円の費用負担ですから、1社あたり215万円の費用負担をした計算となります。

現実的な話をすると、これは非常に高い金額です。

ここまで高い金額を46社が素直に支払った理由としては、

1.長野市の折衝担当職員が優秀だった
2.委託基準違反の内容が非常に悪質で、反論の余地が無かった
3.関係していた排出事業者達が素直だった
の3つが考えられます。

おそらくは、「1」と「2」の要因が大きかったものと思います。

記事ではそのあたりの責任追及の手法に触れられていませんが、
一般的には、実際の取引状況と、委託契約書とマニフェストとの記載の照合を行い、法的に不整合な点を委託基準違反として追及されます。

いずれにせよ、長野市職員の方の対人交渉能力や、廃棄物処理法への理解が深くないと積みあがらない実績です。

他に同じような問題を抱えている自治体にとっては、大いに参考となるノウハウが聞けそうですね。

その一方で、追及を受ける側の排出事業者としては、
委託基準に則った手続きを実行するのは当然として、
実効性の高い現地確認をしなければならない実例として、今回の事件を読み直す必要があります。

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