ブドウの搾りかすを活用した歯周病予防食品の開発

歯周病は、狭心症、心筋梗塞や脳梗塞という死につながりかねない病気の原因となる、実は非常に恐ろしい症状ですが、
今のところ、根本的な治療法や治療薬が存在せず、症状のそれ以上の悪化を防ぐしかない厄介な代物です。

そのため、歯周病にならないように、口腔ケアを常に行うのが最大の防御となりますが、「ブドウの搾りかす」から抽出した成分で歯周病菌の発生が抑制できることが明らかとなり、その成分を菓子に使う研究が進んでいるそうです。

2015年9月7日付 日本農業新聞 ブドウ搾りかす活用 歯周病予防の菓子製造へ 北海道の研究所と大学、業者

 北海道池田町の同町ブドウ・ブドウ酒研究所と北海道医療大学、日本製粉(東京都渋谷区)は、道産ブドウの搾りかすを使って、多くの世代を悩ませる歯周病予防効果のある菓子などを製造する取り組みを始める。今秋から同大学が搾りかすに歯周病菌を抑える効果があるかを検証し、今年度中に成果をまとめる。日本製粉はグミやガム、キャンディーへの商品化を進める計画だ。

 ワインを造る際のブドウの搾りかすは廃棄物として処理されたり、堆肥や飼料として利用されたりするのが一般的だ。同研究所によると例年、道内で生産される醸造用ブドウ約500トンから約75トンの搾りかすが発生し、廃棄物として処理するのに数百万円かかるという。

 研究チームは、搾りかすの皮に含まれる「オレアノール酸」が、虫歯菌を抑える効果があると学術的に証明されていることに着目。実際に同研究所の搾りかすで効果を確認し、日本製粉が2010年、搾りかすの粉末を製品化。虫歯を予防するグミやタブレットなどの商品が開発された。

 今回は、多くの世代が悩む歯周病で予防効果を実証し、商品化につなげる。同研究所は「虫歯にかかるのは多くが子ども。歯周病に効果があることが示せれば、搾りかすの需要は増える」と見込む。

産官学の共同研究ですが、商品化もそれほど遠くない時期に実現しそうですね。

日本製粉株式会社の研究成果レポートに、研究の背景や研究データの詳細などが公開されています。
nippn

当ブログ2015年9月3日付記事 「「昆虫ソース」の開発成功に見る“邪魔者”活用の視点」では、イナゴやバッタを原料とした醤油の製品化をご紹介しましたが、

「ブドウの搾りかす」は1tあたり数万円程度の処理費(運搬費+処分費)が掛かる不要物ですので、コストや環境保全上も利用価値が高い研究と言えます。

もちろん、歯磨きが不可欠なのは当然としても、菓子を食べるだけで歯周病予防になるのであれば、地味ながらも、医療費の削減に大いに役立ちそうです。
(歯周病患者が減少すれば、心臓病や脳梗塞で重篤な事態に陥る人の数も減るなどの大きな波及効果が期待できるからです)

商品化が実現すれば、日本発祥の健康食品として諸外国に輸出できますし、フランスやイタリアその他のワイン産地との連携も視野に入ります。

夢が広がる明るいニュースでした。

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