死亡事故で法人と課長が書類送検

昨日は、兵庫県加古川市の加古川商工会議所において、同市内の製造事業者の方向けに3時間の研修を行っておりました。

私の研修では、廃棄物処理法の条文解説よりも、それを実務に活かす方法に重点を置いておりますので、実践した方が良いと考えるヒントを数多く提案しております。

その中の一つに、
「安全管理及び安全教育をしっかりしている処理企業は信頼性が高い」というものがあります。

昨日の聴講者の中には関西を代表する大手企業の方が多かったので、「あの話は特に参考になりました」という感想をいただきました。

製造事業者の方は、自社内での安全管理はしっかりと行っているところがほとんどだと思いますが、
その厳しい目を持って、取引先の処理業者の操業状態を観察すると、その業者の安全管理に対する取組みレベルが手に取るようにわかると思います。

それを現地確認の際に活かさない手はありません。

あまり起こってほしくない事故ですが、先述した内容の重要性が如実にわかる労災事故が奈良県で発生しました。

2016年10月4日 ABCNEWS 「【奈良】ベルトコンベヤー事故 リサイクル業者書類送検

「I・T・O」と男性課長は8月、大淀町のリサイクル工場で、男性作業員にベルトコンベヤーの下に落ちている木くずを掃除させる際、機械に囲いをつけるなど危険防止に必要な措置をしていなかった疑いがもたれています。男性作業員はベルトコンベヤーに巻き込まれ死亡しました。

「清掃・点検の際には機械を停止させる」、あるいは「巻き込まれることを防止するための囲いを設置する」というのは、安全管理の基本中の基本ですが、なぜそれをしなかったのかが気になるところです。

いずれの方法もコストとしては微々たるものですので、コストを惜しんでおざなりな管理をしたとも思えませんが、人間のやることですので、そういった非常に馬鹿らしい理由で事故が起こった可能性もあります。

ハインリッヒの法則では、
「1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する」とされていますが、
1ヶ月間で立て続けに2件の死亡事故が起こるというのもそうそうありません。

その法則を当てはまると、件の企業ではどれほど多数の軽微事故や異常が発生していたのでしょうか。

今回は経営者は訴追の対象に含まれていませんが、労災は事業リスクに直結しますので、特に中小企業の場合は、経営者自身が作業現場を定期的にチェックすることが不可欠ですね。

ちなみに、法人に対する労働安全衛生法違反に基づく罰金刑は、産業廃棄物処理業の欠格要件にはなりません。

先述したとおり、今回は役員や株主が訴追されていない以上、それらの人が欠格者になることもありません。

考えられる許可取消の可能性としては、
訴追された生産管理課長を「政令使用人」として届けていた場合で、その使用人が裁判の結果「禁錮刑以上の刑罰」に処せられた時は、使用人は欠格者となり、会社の業許可は取消されることになります。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

トラックバック

コメント

  1. 阿部 研 より:

    はじめまして。
    I・T・Oの件、ニュースで知ってから、まさかとは思いますが、弊社の
    廃棄物が排出されていないか調べてもらい、関係ないとの結果から安心した
    ことを覚えています。
    ネットのニュースを見ただけなので、詳細にはわかりませんが、この災害の
    前にも同社の他の事業所でも同様の死亡災害が発生していたとのこと。
    お気の毒です。
    重大な労働災害ですので、事業所の操業停止までにはいかなくとも「安全
    確保が確認されるまで、当該設備の使用禁止」との命令が管轄の労働基準
    監督署より出される可能性が非常に高い事案です。
    そうなれば、事業者からは処理困難通知書が出されるはずですので、あら
    かじめ、対応を考えておく必要があると思ったからです。
    現在の職務を担当するようになって数年ですが、ずっと以前にある上司
    から「個人は知らないですかもしれないが、企業は法律を知らないことも
    (犯罪ではないが)ある意味、罪」と言われたことを思いだし、いつも、
    考えさせられながらブログを拝見するとともに、職務に当たっています。
    10/6の「協同組合による無許可営業」もそんな事例でしょうか。
    これからも、実務に参考になるブログ、楽しみにしています。

  2. 尾上雅典 より:

    阿部 研 様
    コメントいただき、ありがとうございました。

    「個人は知らないですかもしれないが、企業は法律を知らないことも(犯罪ではないが)ある意味、罪」
    は、まさに至言ですね。

    人手不足が年々強まる日本では、今ある人材に気持ちよく働いてもらうことが、すべての企業にとって必要不可欠な取組みですね。
    安全管理はそのための基本中の基本でもあります。

    今後ともご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。

  3. 阿部 研 より:

    脱字でした。
    個人は知らないですかもしれないが→個人は知らないですむかもしれないが


コメントをどうぞ

このページの先頭へ