契約の重さ

東証一部上場企業タケエイの関連会社が、鎌倉市から一般廃棄物処理委託契約を解除されたという報道がありました。

2020年10月30日付 産経新聞 「鎌倉市、リサイクル業者を契約解除 「処理方法に違反」を検証

産経新聞の報道では、社名を仮名として表記する謎配慮がありますので、先に注釈しておくと、
「東証1部上場の産業廃棄物処理大手」が「株式会社タケエイ」で、
「A社」は「株式会社タケエイグリーンリサイクル」です。

 市が契約を解除したのは、リサイクル事業を手がけ、東証1部上場の産業廃棄物処理大手を親会社に持つ「A社」で、市によると、前身に当たる法人の時代から15年にわたり、市の木くず処理を担当してきた。市との間で結ばれていた主な契約内容は次の通り。

 〈A社は市内で発生する木くずを関谷の受け入れ事業場から、およそ100キロ離れた山梨県富士吉田市の同社施設に運び、ここで粉砕処理を行い、木質チップや土壌改良剤(いわゆる肥料)に加工。市はA社に処理その他の費用として、木くず1トン当たり1万3千円を支払う〉

 そのA社の関連会社は昨年10月、横須賀市内に木質チップを主な燃料とする発電施設を建設。今年5月、A社はこの会社を吸収合併した。そして翌6月、鎌倉市議会で一つの疑惑が取り上げられる。要約すると、「発電所完成以降、A社は受け入れ事業場から、富士吉田市へではなく、この発電施設に木くずを持ち込んでいるという話がある」という内容だ。

 A社はホームページなどで、富士吉田で生産された木質チップを横須賀の発電施設で使用しているなどとしているが、同時にこの発電施設でも木くずを粉砕処理する「破砕機」を導入していることを公表している。約100キロ向こうの富士吉田に比べれば、鎌倉-横須賀間は目と鼻の先だ。

 事実なら、輸送費も格段に安くなるはずで、「木くず1トン当たり1万3千円」が支払われている税金の行方にも注目が集まった。結論からいえば、鎌倉市は「契約と違う処理方法が行われていることを確認した」として、8月末日でA社との契約を解除した。

この記事を読んで真っ先に思い浮かべたのは、「一般廃棄物処理の再委託?」でしたが、
タケエイグリーンリサイクルが持ち込みをしたのは、タケエイグリーンリサイクルの横須賀事業所ですので、タケエイグリーンリサイクルは他者に再委託していることにはなりません。

ちなみに、もしこれが再委託に該当した場合は、
廃棄物処理法第26条第一号の罰則により、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はこれの併科」の対象になるところでした。

また、横須賀事業所には、横須賀市から「一般廃棄物処理施設設置許可」を得た施設があるとのことですので、一般廃棄物処理施設として適法に稼働できる状態にありました。

そのため、廃棄物処理法上は、富士吉田に持ち込むはずの木くずを横須賀に直接持ち込んだとしても、罰則の対象にはなりません。

しかし、それはあくまでも刑事罰の話であり、このようなショートカット行為は、委託者である鎌倉市との契約に違反していることになります。

廃棄物処理法第6条の2および同法施行令第4条には、市町村からの一般廃棄物委託基準として、

廃棄物処理法施行令第4条 
 法第6条の2第2項の規定による市町村が一般廃棄物の収集、運搬又は処分(再生を含む。)を市町村以外の者に委託する場合の基準は、次のとおりとする。
七 一般廃棄物の処分又は再生を委託するときは、市町村において処分又は再生の場所及び方法を指定すること。

と定められているため、たとえ自社の事業場とはいえ、鎌倉市が指定した富士吉田を経由せずに、横須賀事業所に直行することは、鎌倉市との一般廃棄物処理委託契約違反となります。

今回は、その契約に基づき、鎌倉市は「契約違反」として、粛々と契約解除をしたものと思われます。

こと廃棄物処理においては、契約内容を恣意的に曲解し、恣意的に運用することは大変危険と言えます。

このような契約の恣意的な変更は、意外と多く存在するものですので、市町村の契約担当者の方は、契約どおりに一般廃棄物処理が進められているかどうかを定期的にチェックする必要があります。

※ケーススタディ
・タケエイグリーンリサイクルは横須賀事業所を吸収合併した際、鎌倉市とどのような協議をすべきだったでしょうか?
・また、その場合、鎌倉市との契約内容のどの部分を見直すことが必要でしょうか?

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