高槻爆発事件の排出事業者は不起訴

2019年7月に自宅から直線で4kmほど離れた場所で爆発事故が起きました。

部屋の窓を開けていたため、爆発音がその距離でも確実に伝わってきたことをよく覚えています。

当初は「事故現場は産業廃棄物処理業者の事業所」と報道されていましたが、事実関係をよく調べてみると、たしかに原因者は産業廃棄物収集運搬業者であったものの、「積替え保管場所としては無許可状態の場所」で起きた爆発事故でした。

その事故の続報が久々に入りました。

2020年11月9日付 毎日新聞 「スプレー缶爆発4人死傷、産廃業者役員を在宅起訴 モノタロウは不起訴 大阪

 大阪府高槻市の産業廃棄物収集運搬会社「今村産業」で2019年7月、4人が死傷した火災で、大阪地検は同社のI取締役(51)をガス等漏出致傷の罪で在宅起訴した。10月26日付。

 起訴状によると、I被告は19年7月6日、今村産業の敷地内でスプレー缶1867本にハンマーで穴を開け、ガスを漏出させて引火・爆発させ、近くにいた少年に重傷を負わせたとしている。

「ガス等漏出致傷の罪」とは、

(ガス漏出等及び同致死傷)
刑法第118条 ガス、電気又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
2 ガス、電気又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

となります。

「廃棄物処理法違反はどうなったんだ?」と不審に思うと、記事の後段で簡単に触れられていました。

 一方、地検はスプレー缶を産廃収集運搬業の許可がない運送会社に運ばせたとして、廃棄物処理法違反の疑いで書類送検された東証1部上場の通信販売会社「MonotaRO(モノタロウ)」(兵庫県尼崎市)については不起訴(容疑不十分)とした。

「排出事業者は嫌疑不十分で不起訴」ですか・・・

訴追手続きにおいては、因果関係を立証する必要がありますので、それがもっともわかりやすい「ガス等漏出致死傷罪」で訴追をしたというだけのことですが、それでも「廃棄物処理法違反では不起訴」という結果には釈然としないものを感じます。

なお、上記記事中の「許可がない運送会社」とは、爆発を起こした事業者とは別の運送会社のことです。

今回はたまたま不起訴になりましたが、もちろん、無許可業者への委託は、「5年以下の懲役、もしくは1千万円以下の罰金、またはこれの併科」の対象となる重罪です。

比較することが適切ではないかもしれませんが、「ガス漏出で人を殺した場合」よりも、「無許可業者への処理委託」の方がより重い刑事罰の対象となります。

また、積替え保管の許可を持たない業者に対し、排出事業者が積替え保管行為をさせた場合も、当然犯罪となります。

事件化の成り行き次第では、今回の爆発事件は廃棄物処理実務における格好のケーススタディの対象となるはずでしたが、「不起訴」となってしまったため、社会に対する警告にはまったくなりませんでした(残念)。

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