ゴミ出しルールを巡る外国人の困惑

「オモシロ新聞記事見出し」としてシリーズ化できそうな報道を見ましたので、ご紹介します。

2021年8月23日付 読売新聞オンライン 「「分別が細かすぎて持って行ってもらえない」…家庭ゴミ72キロ、技能実習生ら海岸に捨てる

見出しを見た瞬間に、「分別を細かく実行したのに、自治体が回収してくれないってどういうこと?」と、かなり大きな疑問符が頭に浮かびました。

そのため、記事の内容をすぐに読みたくなり、記事を食い入るように見つめました。

 大量の家庭ゴミを海岸に不法投棄したとして、高松海上保安部坂出海上保安署は21日、ミャンマー国籍の技能実習生の男2人(29、31歳、香川県三豊市)と同僚の日本人の男(25)を廃棄物処理法違反容疑で逮捕した。2人は「日本は分別が細かすぎて、ゴミを出しても持って行ってもらえず処分に困って捨てた」と容疑を認めているという。

 発表によると、3人は7月下旬頃、香川県観音寺市の海岸で、空き瓶や一斗缶、ペットボトル、古着などが入ったゴミ袋19袋(約72キロ)を不法投棄した疑い。

なんのことはない。

実際の事件は見出しとは逆で、
「適切な分別をしなかったせいで、自治体からゴミ回収を拒否された。仕方が無いので、海岸でゴミ袋19袋を不法投棄した」という
古典的な不法投棄事件です。

捨てられた物は、「空き瓶や一斗缶、ペットボトル、古着」とありますので、いずれも生活ゴミとして自治体の回収対象に入っています。

技能実習生の居住地は「香川県三豊市」とありますので、試みに、三豊市のゴミ出しルールを調べてみると、

記事中の「一斗缶」が、「金属ゴミ」として、「年2回の回収」か「毎月第2・4日曜日の持ち込み回収」の対象として、少し手間が掛かりそうですが、その他の品目は、一般的なゴミ出しルールの範疇に収まりそうです。

ただ、同じプラスチック製のゴミであっても、シャンプーの容器は「プラスチック製容器包装」、シャンプーのポンプは「燃やせないごみ」と、住民側で注意深くゴミの選別、というか分解をして出す必要がある物が多そうなので、日本語が不自由な外国人の場合、戸惑いあるいは絶望感を抱くことがあるかもしれません。

惜しむらくは、逮捕された同僚の日本人男性が、不法投棄ではなく、ゴミの分別方法を教えてあげていれば、皆がハッピーになっていたことは間違いありませんが、
ゴミを安易に不法投棄する人は、往々にして視野が狭く、不法投棄されたゴミがそのままでは消滅しないことについて、思いを寄せることはありません。

小学生くらいから、こうしたゴミの発生と適切な処理方法の教育をしない限り、視野の狭い人間の増殖を止めることはできないと思いますが、
現在の大人が、平気でタバコや空き缶をポイ捨てしている姿がある以上、教育の効果が著しく低減することもまた事実です。

ゴミは日々の生活に直結する問題です。

地方においても今後増えると思われる外国人がゴミ出しで困らないようにするためには、
「ゴミ出しのルールを単純化する」
「ゴミ出しのルールを、各国の言語を使って丁寧に説明する」
のいずれかを選ぶしかなさそうです。

後者の「丁寧に説明する」ことは、自治体の責任とも言えますが、
技能実習生という労働力を受け入れる企業側にも、言葉が通じない異国の地で暮らす従業員のために、彼らの言語に翻訳した案内チラシを渡すくらいのサポートは最低限不可欠と言えましょう。

記事を読んだ直後の感想は、「不法投棄なんてけしからん」でしかありませんでしたが、
こうして記事を書くうちに、「不法投棄は駄目だけど、日本語が苦手な外国人がゴミ出しのルールに困惑したことも間違いなさそうだ」と、徐々に印象が変ってきました。

ひょっとすると、読売新聞がおかしな見出しを付けたのは、
このようなアウフフーベンを起こすことを計算して、意図的に行ったことなのかもしれません(笑)。

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