不法投棄の企図者

茨城県では、最近建設廃棄物のゲリラ不法投棄が急増しているそうです。

2021年9月26日付 読売新聞オンライン 「鼻につく「腐敗臭」…空き地・道路脇に少量の産廃捨てて逃走、「ゲリラ投棄」横行

 茨城県内で近年、「ゲリラ的不法投棄」が増えている。人目につかない夜間に、人通りの少ない道路脇や空き地を狙って比較的少量の産業廃棄物などを捨てる手口だ。2020年度に157件あり、県が統計を取り始めた16年度の約7倍に上る。県は今年度、ゲリラ投棄を封じるための組織を新設。県警OBらの「不法投棄等機動調査員」が巡回し、不審なダンプカーなどに目を光らせている。

茨城県内で不法投棄が急増していることは記事のとおりだと思いますが、慎重に記事を読み進めると、ステレオタイプな偏見に見える部分がありましたので、指摘をしたいと思います。

記事中段に、実際に不法投棄があった現場の画像に関する説明として、

 ごみの多くは、プラスチックを細かく砕く中間処理施設から出たものだ。本来は最終処分施設に運ばれ、処理されることになっている。

 ただ、最終処分の費用はかさむという。県はゲリラ投棄によって、「不法投棄ビジネス」が広がっていると警戒する。正規処分の費用を免れるため、業者や個人ドライバーなどに安価で「処理」を依頼。受け手側も「臨時収入」を得るというカラクリだ。

とあります。

たまたま、その現場で不法投棄されていた物が、「細かく破砕されたプラスチック」であったため、「中間処理施設から出たもの」と断定されています。

事実がそのとおりである確率は高いと私も思いますが、その画像の下に掲載した説明イラストの内容がよろしくありません。

このイラストでは、「中間処理業者」が“あらゆる”不法投棄事件の首謀者であるように見えます。

言うまでもありませんが、実態はそうではありません(苦笑)。

環境省が毎年公表している統計資料に掲載されているとおり、
不法投棄件数の約半数は「排出事業者自身」による犯行であり、
中間処理業者を含めた「許可業者」による不法投棄は、年によって変動がありますが、だいたい数パーセント程度です。

※参考
産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和元年度)について

また、破砕後のプラスチック片が捨てられているからと言って、中間処理業者が首謀者と確定するわけでもありません。

信頼性の高い収集運搬業者を選ばなかった中間処理業者にも法的な落ち度はありますが、
収集運搬業者が中間処理業者に無断で不法投棄を行う事例も多々あります。

ゆえに、ここまで簡略化してイラストで表現してしまうと、読む人によっては「中間処理業者って悪逆非道!」という誤解をする可能性が高くなります。

正しくは、
「不法投棄企図者の大部分は排出事業者で、ごくごく一部のアホな中間処理業者がまれに不法投棄を企図することがある」
となります。

ここで「アホ」と甚だ扇情的な表現を用いましたが、
まともな思考と経営をしている中間処理業者であれば、「コスト削減」という理由で不法投棄を企図するとは思えないからです。

どう考えても、不法投棄で恒常的なコスト削減ができるわけがありません。

中間処理業者の場合、不法投棄は「見つかったら即死亡」に等しいチキンレースとなります。

不法投棄で得られるメリットは、せいぜいが「数万円から数十万円程度のコスト削減」でしかありませんので、「逮捕」や「許可取消」というデメリットと比較すると、いかに割に合わないかがお分かりいただけると思います。

例えるならば、中間処理業者による不法投棄は、
道を歩いている時に、「顔が気に入らない」という理由だけで、片っ端から目の合った人を殴り倒すようなものです。

ほんの一瞬だけ気持ちが良くなる(?)かもしれませんが、逮捕を免れることは不可能でしょう。

今回の記事のような、中間処理業者自身がゲリラ不法投棄を企図することは非常にまれですが、
不心得者の中間処理業者が、より巧妙な“実質的”不法投棄を企図するケースは実際にあります。

不法投棄を減らすためには、行政や警察の行動が不可欠であることは言うまでもありませんが、
それと同じくらいに、「排出事業者が怪しい中間処理業者と取引しない」ことも重要です。

「中間処理業者を目利きする際のポイント」は、今回増刷が再び決定した「産廃処理の基本と仕組みがよ~くわかる本」の初版から詳述しておりますので、未読の方はこの機会にお読みいただければ幸いです。

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