プラごみの分別回収は低調となりそう

2021年12月10日付 読売新聞 「家庭プラごみの「分別回収」低調…新法施行3年以内の導入は全国の1割未満

 来年4月の新法「プラスチック資源循環促進法」の施行に伴い、自治体の努力義務とされる家庭の「プラスチックごみ」の分別回収について、施行後3年以内に導入を検討する市区町村と広域行政組合が全国で72団体にとどまることが、環境省の調査でわかった。回答した団体の1割にも満たず、自治体の財政負担や仕組みの周知不足が課題となっていることが浮き彫りとなった。

(略)

 プラ製品は現在、多くの自治体で燃えるごみや不燃ごみとして扱われている。環境省が7~8月、全国の市区町村と広域行政組合を対象にアンケート調査を実施したところ、回答した867団体のうち、プラ製品を分別回収しているのはわずか3%の29団体だった。施行後1年以内の実施検討は14団体、3年以内は29団体で、実施済みを含めても72団体にとどまった。

導入予定自治体の少なさよりも、アンケート回答率の高さに驚きました(笑)。

回答自治体は867団体とのことですので、回答率7~8割というところでしょうか。

一方で、新法施行前に既に分別回収している団体が29もあることが意外でした。

ただし、どれくらいのレベルで分別回収されているのかがわかりませんので、実施済みの29団体の中においても、回収対象の範囲は大きく異なるように思います。

いずれにせよ、一般廃棄物回収の最前線においては、プラスチック使用製品廃棄物の分別回収に意義やコスト面での効用を感じている団体がかなり少ないという事実はわかりました。

 同省は自治体の動きが鈍い背景には、財政負担への懸念や、住民への周知不足などがあるとみている。

「住民への周知不足」が誰の責任なのかが重要なポイントとなりますが、この表現だと、「環境省」なのか「自治体」なのか不明確です。

あえて曖昧に表現したのかもしれませんが(苦笑)。

法的な建前論からすると、「自治体に周知責任がある」となるのかもしれませんが、国民の総意とは言いがたい新たなリサイクル法を急に制定した以上、環境省と経済産業省が率先して旗振りをしないといけないのではないでしょうか。

自治体側の財政負担軽減については、上記の記事の後に書かれているとおり、環境省において今後財政支援措置が図られることになっています。

 プラごみの対象品目は自治体に委ねられているが、「基準を示してほしい」との声を受け、同省は年内にも対象リストを公表する。歯ブラシやクリアファイルなどを対象とする一方、イヤホンなどの電子機器や注射器などの医療廃棄物は対象外とする方向だ。

一般廃棄物の再生において重要な点は、「対象品目」よりも「その地域において再生処理できる製品は何か」ではないでしょうか?

歯ブラシを分別回収したとしても、それをリサイクルできる事業者がその地域に存在しなければ、結局焼却処理するしかないからです。

個人的美意識からすると、歯ブラシはリサイクルじゃなくて焼却して欲しいと思ってしまいましたが。

もちろん、「容リ法指定法人への委託」という手段がありますので、全国津々浦々の自治体が指定法人への委託をすることは制度的には可能です。

しかし、指定法人から実際のリサイクル工程の委託を受ける事業者が全国各地に過不足なく存在しているわけではありませんので、全市町村が分別回収を始めた場合、地域によっては、分別収集されたプラごみの引受先の受入能力がパンクすることは間違いありません。

そのため、少なくとも新法施行直後においては、「確実に委託先がある」という自治体のみで動き出すことがもっとも合理的と言えます。

ゆえに、新法施行後に分別収集をしないと決めている自治体の判断は、合理的、かつ現実的なものと言えましょう。

ここで、「受け皿が足りないのならば、補助金交付で受け皿たる業者の数を増やせばイイじゃない?」と考えた方が多いかもしれません。

人口減少傾向が著しい日本においては、20年もしないうちに、人口減少に伴い廃棄物の発生量も激減すると思われますので、そうなると「雨後の筍」のごとく急増したプラスチックリサイクル業者が、バタバタと倒れていくことになります。

目先の問題を解決するだけの部分最適では、今後の日本社会にとっては逆に弊害となる可能性があります。

リサイクル事業者の受け皿が大きい地域においては、分別収集の推進
リサイクル事業者の受け皿が小さい地域においては、分別収集は慎重に
が、全体最適の解ではないかと愚考しております。

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