その名は「盛土規制法」!

熱海市で発生した危険な盛土による土石流発生事件に端を発し、ようやく国が重い腰を上げ、法律で全国一律の盛土規制を行うこととなりました。

2022年3月1日付 国土交通省発表 「「宅地造成等規制法の一部を改正する法律案」(盛土規制法案)を閣議決定 ~危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制します!~

盛土等による災害から国民の生命・身体を守る観点から、盛土等を行う土地の用途やその目的にかかわらず、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制する「宅地造成等規制法の一部を改正する法律案」(盛土規制法案)が、本日、閣議決定されました。

1.背景
 昨年、静岡県熱海市で大雨に伴って盛土が崩落し、大規模な土石流災害が発生したことや、危険な盛土等に関する法律による規制が必ずしも十分でないエリアが存在していること等を踏まえ、「宅地造成等規制法」を抜本的に改正して、「宅地造成及び特定盛土等規制法」とし、土地の用途にかかわらず、危険な盛土等を包括的に規制します。

2.改正案の概要
(1)スキマのない規制
・ 都道府県知事等が、宅地、農地、森林等の土地の用途にかかわらず、盛土等により人家等に被害を及ぼしうる区域を規制区域として指定
・ 農地・森林の造成や土石の一時的な堆積も含め、規制区域内で行う盛土等を許可の対象とする 等

(2)盛土等の安全性の確保
・ 盛土等を行うエリアの地形・地質等に応じて、災害防止のために必要な許可基準を設定
・ 許可基準に沿って安全対策が行われているかどうかを確認するため、
[1]施工状況の定期報告、[2]施工中の中間検査及び[3]工事完了時の完了検査を実施 等

(3)責任の所在の明確化
・ 盛土等が行われた土地について、土地所有者等が安全な状態に維持する責務を有することを明確化
・ 災害防止のため必要なときは、土地所有者等だけでなく、原因行為者に対しても、是正措置等を命令できることとする 等

(4)実効性のある罰則の措置
・ 罰則が抑止力として十分機能するよう、無許可行為や命令違反等に対する罰則について、条例による罰則の上限(懲役2年以下、罰金100万円以下)より高い水準に強化 等

「宅地造成等規制法」を「宅地造成及び特定盛土等規制法」として、条文数ならば従来の「30条」から「61条」と倍増する、抜本的な改正となる模様です。

「宅地」のみならず「農地」の盛土も規制する法律であるため、国土交通省と農林水産省の共同所管となるそうです。

無許可で盛土を行った個人に対しては、宅造法の「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」だったところが、「3年以下の懲役または1千万円以下の罰金」と、罰則が大幅に引き上げられることになるようです。

ただし、国土交通省の発表では「実効性のある罰則」とされていますが、廃棄物処理法に基づくより重い罰則でも「実効性があるとは決して言えない」現状ですので、少し盛りすぎの感がありますが(笑)、罰則を強化すること自体は良い方向と評価いたします。

「少し盛りすぎ」と上述しましたが、経済産業省や環境省の良い意味でも悪い意味でも淡々としたプレスリリースに慣れた身としては、国土交通省のプレスリリースには熱量が感じられる部分がありました。

「法案の概要」の部分で、「法律の名称」として、「通称”盛土規制法”」とダブルクォーテーションで強調しています。

国会でまだ審議すらされていない段階であるにもかかわらず、「国民からこう呼んで欲しいッ!」と「通称名」を自ら提案するとは、立法担当者のこの法案に寄せる並々ならぬ情熱が感じられます。

さらに、「織田上総介信長、通称『信長様』って呼ばれてます」という自己紹介のように、面と向かって言われると言われた方が恥ずかしくなる気持ちと、「精一杯背伸びしてるんだね~」という「いじましさ」も同時に感じさせるという、なかなか芳醇な味わいをもつプレスリリースに仕上がっています。

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