後味の悪い結末

※関連記事 当ブログ2020年11月16日付記事 「高槻爆発事件の排出事業者は不起訴

2019年7月に大阪府高槻市の産業廃棄物収集運搬業者の事業所が爆発した事件に関し、収集運搬業者社長に「懲役1年6月、執行猶予3年」の判決が言い渡されました。

2022年2月25日付 産経新聞 「倉庫3人死亡火災、男性役員に猶予判決 大阪地裁

大阪府高槻市で令和元年7月、産業廃棄物収集運搬会社「今村産業」の倉庫が燃え3人が死亡した火災で、ガス漏出致傷罪に問われた同社取締役の男性被告(52)の判決公判が25日、大阪地裁で開かれ、田中伸一裁判長は懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役2年)を言い渡した。

ここでいう「ガス」とは、「スプレー缶」を廃棄するためにスプレー缶から抜き出されたガスとなります。

起訴の対象は「ガス漏出致傷罪」ですが、無許可業者(今村産業とは別の業者)への委託その他廃棄物処理法違反の疑いがあったため、排出事業者のモノタロウは廃棄物処理法違反容疑で書類送検されています。

しかし、最終的には、地検の判断で排出事業者は不起訴処分となっています。

「廃棄物処理法違反」となり得る部分としては、
「積替え保管の許可が無い場所で産業廃棄物の荷下ろしと選別していた」ことを指摘する必要があります。

廃棄物処理法違反に関する判断ではないものの、

田中裁判長は、スプレー缶はモノタロウ側が安価で処分しようと考え、取引先の今村産業に持ち込んだと指摘。引火による火災は容易に予見でき、「極めて危険な犯行」と非難する一方で、被告がモノタロウ側に頼まれて場所を提供するなど従属的だったことを踏まえ、刑の執行を猶予した。

と、「スプレー缶の処理」が、業者の主導ではなく、排出事業者側の依頼に基づくものと、裁判所から指摘されています。

今回の事件では立件されていないものの、排出事業者がこのような依頼、あるいは強要を行うと、業者に対し「産業廃棄物処理業の無許可変更」をさせたことになりますので、刑事罰の対象となる可能性がある危険な行為です。

人が3人も亡くなったにもかかわらず、従属的に場所貸しをしただけの業者社長が、執行猶予付きとはいえ刑事罰に処されただけという結末は、何とも後味の悪い感じがします。

モノタロウは言わずと知れた東証一部上場企業ですが、
スプレー缶の排出事業者たるモノタロウの爆発への関与の度合いや、業者への指示(依頼)の仕方に問題が無かったか等が一切明らかにされていません。

もっとも、隠しているわけではなく、自社の責任の検証自体が行われていなかったモノダロウ(苦笑)。

下図は、直近5年間のモノタロウの株価の推移です。

2019年7月の爆発事故発生後も、順調に株価が上がっていることがよくわかります。

株価が上がる=出資をしたいと考える人が増える=投資先として人気を集めている、ということですね。

常々ESG投資なる高邁な理念に胡散臭さしか感じていないへそ曲がりですが、「ダイコー事件」後のココイチが過去最高益を達成した時のように、ESGは単なる理念、あるいはファンタジーに過ぎず、「企業の行状が投資先の選定理由としてまったく機能していないじゃないか!」という思いをまた強くする結果となりました。

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