個人的資質ではなく組織の問題かもしれない

公務員による公務中の不法投棄という、人として最大級の愚行がまた起きました。

2022年2月25日付 産経新聞 「海自艦から不法投棄 自衛官3人を書類送検

第6管区海上保安本部(広島)などの合同捜査本部は25日、香川県と兵庫県の沖合で昨年11月、海上自衛隊の潜水艦救難艦「ちはや」から不要になった塗料缶など計41個を不法投棄したとして、海洋汚染防止法違反の疑いで、H海曹長(52)=広島県呉市=ら自衛官3人を高松区検に書類送検した。

書類送検容疑は昨年11月19日未明と同23日深夜、それぞれ香川県小豆島の南東海域と兵庫県淡路島の西方海域で、塗料やニス、グリースが入った缶や容器計41個を不法投棄したとしている。
※筆者注:記事転載の際に、容疑者の氏名はイニシャル表記に変えました

捨てられた塗料缶からなぜ海上自衛隊にまでたどり着いたかと言うと、

高松海上保安部によると、缶や容器には中身が入ったままだった。3人は船の操縦や整備を担当。「不要になったので投棄した」と容疑を認めている。缶に防衛省のシールが貼ってあったことなどから3人が特定された。

色々な面で絶望的な気持になりました。

第1に、瀬戸内海という内海で「防衛省」とシール付けされた塗料缶を捨てても、犯罪が発覚しないと思った愚鈍さに
第2に、そのような愚鈍、かつ規程を守ることができない人間が、国防上重要な役割を担う艦船の操縦を担当している恐ろしさに
第3に、公務上の犯罪であるにもかかわらず、現在に至るまで、謝罪や再発防止に関するプレスリリースを一切出していない海上自衛隊の無関心に

ちなみに、「潜水艦救難艦ちはや」は、こんな艦船です。

※画像は、海上自衛隊ホームページより転載
「長さ 128m、幅 20m」という寸法とのことですので、それほど大きな艦船ではありませんが、艦尾から海中に向けて塗料缶を3人で捨てた場合、誰にも気づかれることなく、やりおおせたのかもしれません。

イギリスの特殊空挺部隊SASの隊員は、ジャングルでの作戦行動中、人間ですから当然排泄物を排泄しますが、「そのまま野●●」ではなく、「排泄物をビニールにくるみ、さらにそれを地中に埋める」そうです。

隠密作戦に従事する特殊部隊ならではの、あらゆる行動の細部にまで配慮した緻密な行動規程ではありますが、SASの規程と比べると、今回のような「海に捨てたら廃棄物はこの世から消えてなくなるのよ~」という「お花畑な不法投棄」が起きる組織の状況の危うさを、ご理解いただけるものと思います。

問題の根幹は、
海上自衛隊において、「正規の廃棄物処理手続きを愚直に行う」よりも、「頭空っぽで海に向かって投げ捨てた方が楽」であり、「少なくとも、組織内では不法投棄が発覚しないだろう」と感じさせたことです。

近代の軍事(的)組織においては、「規律の厳守」が最上位の優先事項ですので、かかるお花畑が現役隊員にまん延している状況は、非常に危険と言わざるを得ません。

何度考えてみても、塗料缶その他の処理手続きが難しいはずがありません。

規律を規律と思わない隊員が3人も現れたということは、それと同じ行動パターンを取る隊員が既に組織内には何十倍も存在しているはずです。

古今東西、規律が緩んだ軍事(的)組織が戦いに勝てたためしがありませんので、海上自衛隊は今すぐ原因究明と再発防止策を講じる必要があると思います。

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