問題意識の問題なのでは?

総務大臣が環境大臣に勧告を行ったという報道があったので、今回はそれを取り上げます。

勧告のテーマは「災害廃棄物対策」です。

2022年2月25日付 総務省発表 「災害廃棄物対策に関する行政評価・監視 <結果に基づく勧告>

<背景>
災害からの早期の復旧・復興に向けて、災害廃棄物を円滑かつ迅速に処理するためには、平時における「事前の備え」が極めて重要です。しかし、災害廃棄物の処理については、初動対応の遅れから、生活環境や公衆衛生が悪化した事例等が発生しています。このため、災害廃棄物処理の現場である市区町村における災害廃棄物発生量の推計や仮置場候補地の選定などの「事前の備え」について調査を実施しました。
<調査結果>
○ 近年激甚化・頻発化している水害等を想定した災害廃棄物発生量の推計値の把握が低調
○ 仮置場候補地の選定に至っていない例がある
○ 選定に至っていたとしても、現況等の把握が未実施の例がある
など、「事前の備え」が十分でない実態がみられました。
<勧告>
水害も想定した災害廃棄物発生量の推計への支援のほか、市区町村有地以外の候補地を含む必要・適当な仮置場候補地の選定への支援、現況把握の促進など仮置場候補地が災害時に仮置場として円滑に機能するための措置などを環境省に求めました(総務大臣から環境大臣に勧告)。

共同通信が報じた内容を、各紙がそのまま引用するという形式が多かったのですが、
「環境省の指針が推計方法を十分に示していないことなどが要因」で、「水害時に発生する災害廃棄物の量の推計」が進んでいないというスタンスでした。

公平を期すために、指摘対象の環境省のサイトを見てみると、
災害廃棄物対策指針について」で、薄くはないガイドラインが公開されています。

その指針に関連する「技術資料・参考資料」中の
「046_gi14-2.pdf」というPDFファイルの8pに、

が掲載されています。

総務省は

地方公共団体からは、災害廃棄物処理計画が水害に対応しておらず水害時の処理に時間を要した事例が示されたほか、災害種別に応じた推計方法を示してほしいとの意見

があったとしていますが、そもそもの災害廃棄物処理計画策定の主体は各自治体である以上、水害廃棄物発生の想定をしなかった理由を、「環境省の解説がわかりにくいから、俺たちは水害廃棄物が起きる事態を想定しないんだぜ!」と環境省に責任転嫁しているように聞こえます。

推計値はあくまでも推計値ですので、事前に完璧な数値予測をすることは不可能ですし、完璧を期すべき合理的理由もありません。

なんなら、ある程度多めの数値予測をし、その予測された廃棄物の処理をいかにこなすかに頭を使う方が建設的でありましょう。

単なる推計であれば、環境省が公開済みの「災害廃棄物の発生量の推計方法」でも十分なのではないでしょうか。

本当に、地方自治体職員が、環境省のガイドラインの不備をあげつらい、自分の職責を放棄する理由としているのであれば、そちらの方が由々しき問題と言えます。

総務省の調査対象数が少なすぎてアレなのですが、都道府県レベルでは、
地震による発生量予測をしている自治体が100%(13の13)
水害が30.8%(13の4)
土砂災害が7.7%(13の1)と、
「我が自治体においては、地震しか発生しないのであーる」と言わんばかりのいびつな仕事ぶりです。

実際の発生確率としては、むしろこの数値とは逆に、
土砂災害の方が、どこで起きてもおかしくない災害ですし、
発生の危険性が高いエリアも「ハザードマップ」等で既に広く知れ渡っています。

土砂災害の場合は、都道府県よりも、市町村の方がより真剣に考慮しないといけないリスクですが、「盛り土規制法!(笑)」の登場を待つまでもなく、危険性について行政側が既に認知しているリスクである以上、もう既に「被害予測」と「それが起きる範囲」「復旧対策」を想定していないとおかしいのではないでしょうか。

行政職員の皆様には、
「できない理由探し」と「責任転嫁」に優位性を発揮するのではなく、
「課題の定義」と「その解決策の模索」に全力を傾けていただくことを願っております。

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