置き方の問題

日本語の使い方がおかしいと感じる報道に接しましたので、お勉強の題材とさせていただきます。

2022年3月16日付 テレビ朝日 「都内の公園で“産廃”土砂適切処理せず 都が公園財団など指導

 全国の国営公園などを管理する財団法人などが、都内の公園で出た産業廃棄物にあたる土砂を適切に処理しなかったとして東京都から行政指導を受けていたことが分かりました。

 都などによりますと、公園財団などは、管理する文京区立の公園で側溝を清掃した際に出た土砂18立方メートル分を公園裏手の崖などに積み上げていました。

 都は土砂について、「斜面に置くなど管理状態が悪く、産業廃棄物にあたる」などとしていて去年11月以降複数回、財団側へ処分するよう指導していました。

 取材に対し、公園財団は「土砂は園内の補修などに利用していた」「他の自治体では産業廃棄物に当たらず、認識不足だった」などとしています。

まず、「産業廃棄物にあたる土砂」という用語がヘンテコです。

「日本人である中国人」レベルの違和感です。

産業廃棄物として位置づける場合は、「土砂」ではなく「汚泥」と表現しなくてはいけません。

「汚泥」とは「泥状を呈した廃棄物」を指しますので、公園内の側溝に溜まった土砂を、公園管理者が公園の維持管理という事業目的で回収した場合、「泥状を呈している」のであれば、産業廃棄物の「汚泥」として扱うことは間違いではありません。

しかし、それはあくまでも「汚泥」であり、「産業廃棄物にあたる土砂」は、法的には成立しえない言葉です。

次に、東京都が実際にその言葉どおりに指導したとは思えませんが、
「斜面に置くなど管理状態が悪く、産業廃棄物にあたる」にも、特殊詐欺犯が使う日本語のような違和感があります。

最大限斟酌すると、おそらくは総合判断説の一要件である「占有者の意思」を問題としているものと思いますが、
この文京区立公園の指定管理者は、斜面に土砂を置いていたことは事実ですが、土砂を飛散流出させたわけではなく、土砂の管理を放棄したわけでもありません。

※ただし、斜面から土砂が容易に滑り落ちる可能性はあったのかもしれません。その場合は、飛散流出のおそれがあるため、保管方法としては不適切と言えます。

「斜面に置いたから、即、不法投棄とみなす!」となるわけでもないため、今回の報道表現については、「言葉の端折りすぎ」、あるいは「極度の説明下手」と評したくなります。

最後に、東京都の産業廃棄物担当部局が、都市公園に対して廃棄物処理法に基づく立入検査を行うことは、通常は有り得ません。

そのため、おそらくは、「土砂⇒産業廃棄物⇒毒性があって危険!」という事実とは異なる認識を持った自然人が、文京区か東京都に何度も苦情を入れたのではないかと推測しています。

あるいは、公園の指定管理者の地位を狙う、同業他社の誹謗中傷プロパガンダとか?

わずか1分少々の報道で、ここまで想像力を刺激してくれるテレビニュースって、本当にスバラシイですね。

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