先憂後楽

問題に対峙する際には、「後は野となれ山となれ」式の「先楽後憂」ではなく、やはり「先憂後楽」でなければならない、という思いを強くした報道でした。

2022年4月3日付 八重山日報 「最終処分場15年延命へ かさ上げ、掘り起こし同時並行 石垣市

 石垣市は2022年度、一般廃棄物最終処分場の延命化に向け、処分場のかさ上げと廃プラスチックごみの掘り起こしを同時並行で進める。処分場は現状のままだと22年度内にも満杯になる計算だが、かさ上げなどで約15年の延命化を見込む。市は22年度、クリーンセンター(ごみ焼却施設)の基幹的設備改修も予定しており、ごみ処理のインフラ整備が大きく進むことになる。

 市によると、最終処分場の容量は約14万立法㍍。年間約5000立方㍍のペースでごみが埋め立てられている。昨年時点で残りの容量は約5000立方㍍に減少し、満杯が目前に迫っていた。
 市は処分場の周囲を土砂で約5㍍かさ上げし、新たに3000立方㍍の受け入れ容量を確保する。かさ上げに使用する土砂は公共事業の残土を使う。工事費は約2億6500万円を見込む。

(中略)

 これと併せ、処分場に埋まっている廃プラスチックの掘り起すことで、市は年間計5000立方㍍程度の受け入れ容量が生まれると試算している。
 掘り起こしに向け、プロポーザル方式で選んだJV(共同企業体)と昨年10月に契約を結んでおり、既に作業は始まっている。掘り起こした廃プラは梱包し、JVが固形燃料として活用する予定という。市は、近く直近の掘り起こし量などのデータ提供を受ける。

八重山日報のサイトに掲載されている画像を見ると、撮影の仕方の問題かもしれませんが、最終処分場は残存容量がゼロに近い、ほとんど更地の状態に見えます。

地面に散乱、または地表から見えている廃棄物の大部分は、プラスチックごみに見えますので、「アメリカのニュース?」と思い、ニュースの見出しを読み直しましたが、やはり日本の沖縄県石垣市としか書かれていません。

「なぜプラスチックごみを燃やさずに、そのまま埋めているのか?」が気になったので、その理由を検索してみると、答はすぐに明らかとなりました。

石垣市一般廃棄物処理施設延命化計画(平成31年3月)」によると、

 現在、本市では資源化対象外のプラスチック類については焼却処理を行っておらず、そのまま最終処分場へ埋立処分を行っている。本市では、近年の排ガス処理技術の進展等を踏まえ、最終処分量削減の可能性を調査するため、既設ごみ焼却施設でのプラスチック類の混焼について、平成 27(2015)年度に実証試験を行い、排ガス濃度及びダイオキシン類濃度について測定調査を行った。その結果、既設設備の改造等を実施すること
を前提とした場合、施設から排出される排ガス濃度等は安定して基準値範囲内に収まることが可能であるとの結果が得られた。
 プラスチック類の焼却処理は、最終処分量の大幅な削減が可能となり、既設最終処分場の延命化に大きく寄与できることから、延命化対策工事の実施にあたっては、現行の埋立処分から焼却処理への移行が可能な施設計画を検討していくものとする。
 ただし、プラスチック類が混焼可能な施設へ改造する場合は、既設ごみ焼却施設の建設当時に「廃プラスチック類は焼却しない。」「工場の拡張・増設を行ってはならない。」とした施設周辺地域との公害防止協定の内容を変更することが前提条件となるため、施設周辺住民の理解が得られるよう、事前の十分かつ丁寧な説明努力が必要である。

石垣市のクリーンセンターが竣工したのは、「平成9(1997)年10月」とのことですので、ちょうど、「ダイオキシン問題」が全国的にクローズアップされていた時期となります。

この時期の市長や市職員が問題を先送りにした結果、現在の涙ぐましい最終処分場の延命策につながったわけです。

しかしながら、一度埋めたプラスチックを土中から掘り起こし、それを洗浄、分別した上で固形燃料化(RPF?)して再利用(=燃やす)することは、率直に言わせていただくと「壮大な無駄」です。

最終的に燃やすのであれば、土に埋めることなく、最初から燃やす方が、誰が考えても合理的です。

爆発寸前の時限爆弾の爆発をさらに先送りする方法としては、「これしかない」と言えますが、結局のところ、それも「先楽後憂」なのではないでしょうか?

首長が腹をくくり、住民の方に想定されるリスクを真摯に開示した上で、「廃プラスチック類を焼却する」ことへの理解と協力を仰ぐことこそが、「先憂後楽」のための唯一の手段と思いました。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ