エサを与えないでください
当ブログ2022年10月31日付記事「捨て得を阻止するためには」の続報が入りました。
2023年1月24日付 神戸新聞 「町有地に大量の産業廃棄物放置 上郡町が事業者提訴へ 採石場跡地、撤去費など2億円請求」
兵庫県上郡町赤松の町有地に事業者が契約期限後も大量の産業廃棄物を放置している問題で、上郡町は事業者などを相手取り、撤去費など約2億円の損害賠償を求め、2月にも神戸地裁姫路支部に提訴する方針を固めた。
町有地は採石場跡地で、同県加古川市の建設工事会社が建設廃材の仮置き場などに使用していたが、昨年7月末の契約期限後も約3300立方メートルを放置している。12月末までの撤去を求めたが応じなかったため、町が撤去することにした。業者を選定し、6月ごろの撤去を目指す。
町有地を貸した相手が建設廃材を放置したまま、その借主が別の場所での不法投棄事件で逮捕されたため、アスベストが含まれる建設廃棄物(石綿含有建材と思われる)の自主撤去が見込めなくなり、土地所有者の上郡町が代わりに撤去せざるを得なくなりました。
件の土地は、約4400平方メートルという広い場所で2年契約。
1年当たりの賃料は約70万円とのことです。
2年契約で得られた賃料収入は140万円から150万円というところですが、放置された廃材(3300立方メートル)の撤去に約2億円掛かる見込みのようですので、土地所有者の上郡町にとっては、明らかに割に合わない取引です。
言うまでもなく、もっとも気の毒なのは、2億円の血税を負担した上郡町民と事業者の方々ではありますが。
これだけ高額な撤去費用になった理由は、放置された量が多いこともさることながら、石綿含有産業廃棄物の処分先が管理型最終処分場となるため、1立方メートルあたり約6万円という高額なコストになったものと思われます。
現地には、スレートその他の石綿が含まれている可能性がある廃棄物と、その可能性が無い廃棄物を一緒くたに放置されている可能性が高いですが、そうなると、石綿含有産業廃棄物とそれ以外の廃棄物とを改めて正確に分別することはほぼ不可能ですので、「土地上に放置された時点でアウト」でした。
土地を賃貸借する時点では、廃材を不法投棄される可能性など微塵も想定していなかったと思われますが、
現実には、広大な土地を安い賃料で貸した結果、廃棄物を不法投棄されてしまい、土地所有者の責任が問われることになる状況が、昔から現在に至るまで星の数ほど起きています。
おそらく、最初から不法投棄を意図して土地を借りるといった、根っからの悪人の割合は非常に少ないように思います。
大部分の人は、最初は真面目に事業を行うつもりで土地を借りたが、その後のキャッシュフローの悪化により、不適正保管や不法投棄を行えるという誘惑、あるいは行う欲求にさらされ続けた結果、
「これくらいなら」
「バレなければ」
「他の人もやっている」
等の様々な言い訳を繰り返しつつ、最悪の状況に突き進む・・・
これこそが、不法投棄が起きる根本的なパターンだと、個人的には確信しております。
もちろん、不法投棄は、それを実行した人間自身の選択の結果であり、彼自身が責任を負うのが当然であるのは間違いありません。
しかしながら、土地の賃貸借という「営利」目的の取引関係において、
賃貸人には、一方的な被害者面をして、行政に後始末をさせるという無責任な行為が許されることもありません。
土地の賃貸借において、廃棄物が放置、あるいは不法投棄された場合のリスクを一切想定しない賃貸人は、やはり無責任と言わざるを得ません。
供託金や保証金、保証人等の具体的なリスク対策は、不動産取引の専門家の方にお任せするとして、
私の人生経験から抽出した、不適正保管、または不法投棄の誘引要因(エサ)を挙げておきます。
・人目に付きにくい場所
・広い土地
・安い賃料
この3点が揃った場所は、賃借人、または第三者に不適正処理される確率が非常に高いと言わざるを得ません。
もう1点「車によるアクセスが便利(都心から車で1.5時間圏内)」という要因が加わると、さらに事態は悪化しやすくなります。
不動産賃貸人の方の参考になれば幸いです。
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2023年1月26日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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