アクリル板はキープする方が合理的では?

材料として無償譲渡でどうでしょう?」に続き、2日連続でパーティションとして使用されたアクリル板について思うところを記したいと思います。

テレビニュースであるにもかかわらず、サービス業の現状や、リサイクルの限界や課題について、コンパクトにうまくまとめた良い報道がありました。

2023年5月23日付 RSK山陽放送 「「お金を出して買って、処理するにもお金が」5類移行で“アクリル板”どうなる 再資源化にハードルも【岡山】

飲食店の店主さんのコメント
「自分の中で5類になったからすぐ処分しようとは思っていなかった。でも処分にお金がかかるのは本当に大変なこと。お金を出して買い求めて。また処理するにもお金がかかる」

仰るとおり、買ってすぐに廃棄するということは、経営者にとっては抵抗感の大きい支出です。

アクリルの加工を行う企業社長のコメント
「一般的に見るとほとんどわからないんですけど小口(材料の断面)から見ていくとですね、やはり透過率が良くないだろうと、やはり横から見たときのその美しさとか、そういうものをお客さんは気にされる。我々としては使いづらいなと」

新品のプラスチックと再資源化したプラスチック。2枚を重ねてみると…リサイクル品は緑がかっているのが分かります。

アクリル板の再生利用自体は容易ですが、「透明な板」としての品質においては、リサイクル品は新品(バージン原料で製造した物)に劣るとのことです。

またパーティションで使われるプラスチックはアクリルやポリカーボネートなど主に約9種類。回収時に素材が混じると品質が悪化するといいます。「分別」という課題です。

(社長)「分別するにも手間がかかるだろうな。ここを乗り越えないと再利用っていうのは難しいと思います。

私、プラスチックの素人ゆえ、「アクリル板って単一素材でしょ?」と浅はかに考えておりましたが、個々の製品原料としては単一素材であっても、「アクリル板」というカテゴリー全体では、「アクリル」の他、「PET」や「塩化ビニル」等の様々な樹脂原料を使っているとのこと。

飲料容器のように、「PET」か「ガラス」と容易に見分けられる素材であれば、選別自体は非常に簡単ですが、
アクリル板を原料の素材ごとに分別する作業を想像すると、考えただけでゲンナリします。

おそらく、そうした選別作業を人力とするにせよ、AIその他の設備投資で対応するにせよ、「アクリル板のリサイクル専業」では、およそコスト的に成り立たないと思われます。

これまでの報道は、「新型コロナウイルスが5類に移行したので、アクリル板はもう二度と使わない」という前提に立っている気がします。

しかし、多くの有識者の方が言われているとおり、「5類に移行したからと言って、新型コロナウイルスが無くなるわけではない」ですし、
2023年5月23日付 日本経済新聞 「中国でコロナ再拡大 専門家「6月末に第2波のピーク」」といった報道もありますので、日本においても、再度の大流行が起きてもおかしくない状況です。

感染者数がピークになるたびにアクリル板を買い直すことは無駄でしかありませんし、幸い、場所をそれほど取るものでもないため、将来の再流行に備えた保険として、アクリル板をキープし続ける方が合理的なのではないでしょうか?

パーティションとして使うのであれば、必ずしも透明である必要はありませんので、汚れや傷が目立つ場合は、塗装をしたり、広告やメニューを貼り付けたりして、「仕切り兼ポップ」としてかなり長い期間使い続けることも可能です。

「廃棄」や「リサイクル」にこだわるのではなく、(残念なことかもしれませんが)サービス業においては不可欠の備品として、今後は社会全体で「アクリル板」と付き合い続ける覚悟が求められているように思います。

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