事例5 陶磁器くずの肥料化(ニッコー株式会社)
「ボーンチャイナ」を肥料化するという画期的な技術を、ニッコー株式会社が商品化したそうです。
2022年3月11日付 ニッコー株式会社発表 「世界初!洋食器のニッコー、捨てられる食器をリサイクルした肥料「BONEARTH®」を商品化」
陶磁器メーカーのニッコー株式会社(本社:石川県白山市、代表取締役社長:三谷明子、以下ニッコー)は、食器が廃棄されることなく循環する世の中を目指し、サーキュラー型のビジネスモデルへの転換を行っています。この度、ボーンチャイナを肥料にリサイクルする技術を確立し、農林水産省より2022年2月10日に肥料として認定されました。
ニッコーは、レストラン・農作物生産者・生活者など、あらゆる方々と共に食をとりまく循環をつくりあげていくことを目指します。・捨てられる食器から生まれた「BONEARTH®(ボナース)」とは
ニッコーが提供するボーンチャイナ製食器(NIKKO FINE BONE CHINA)は、陶磁器の原料である石や粘土に加え、(食肉加工され残った牛の骨を溶解再合成した)リン酸三カルシウムを約50%含めており、その白さと透光性、鉛やカドミウムフリーの安全性から、多くのシェフたちに愛用されています。そのNIKKO FINE BONE CHINAのリサイクルで生まれた「BONEARTH」は、高温焼成で作られているので、臭いもなく、長期保存でき安全・清潔なリン酸肥料です。植物が自分の力で根から出すクエン酸に触れることでリン酸を溶かし養分として吸い上げるため、万が一入れすぎたとしても、成長の妨げになる心配はありません。また、水に溶けないので、長期間肥料効果が持続し、河川流出もしにくく、環境にやさしい商品です。NIKKO FINE BONE CHINAの特徴はそのままに、純白で美しく、園芸用化粧砂としてもご活用いただけます。
「陶磁器くず」は、最終処分される比率が高い廃棄物ですが、路盤材等の建築資材ではなく、肥料に加工する技術があるとは想像すらできませんでした。
「ボーンチャイナ」の「ボーン」とは、「中国生まれ?」の意味かと思いましたが、「(牛の)骨(の白さ)」を意味するそうです。
Wikipediaによると、18世紀のロンドンで発明された技術とのことです。
中国で製造された陶磁器という意味ではまったくないようです(笑)。
肥料としての加工後も鮮やかな白色を保ち続けるようですので、観葉植物用の肥料として人気が出そうですね。
肥料の需要が日本国内でどれほどあるのかは正確に存じませんが、需要自体が今後増えることは無いように思えます。
そのため、ニッコー社の意図は、陶磁器くずの循環利用を促進させ、環境負荷低減を図ることにあるのではと推測しております。
ニッコー社が外部サイトにリリースしたプレスリリースによると、
NIKKOの目指す陶磁器の循環社会
現在、第一段階として、工場での生産過程で生じる規格外品から、リサイクル肥料「BONEARTH」を製造し、2022年4月2日より販売を開始します。
今後、第二段階として、ホテル・レストランで使用された(サブスク含む)自社品の回収に取り組みます。
第三段階は、他社品を含め広く回収し「BONEARTH」以外のリサイクル商品の製造販売を行い、より多くの食器の循環を目指します。
と、三段構えの事業戦略を構想しているとのことです。
第一段階は、自社工場の端材や不良品を加工しているだけですので、廃棄物処理法の規制はかかりませんが、
第二段階以降は、廃棄物処理法の規制対象となります。
「ホテル・レストランで使用された陶磁器」は、産業廃棄物の「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず(以下、「陶磁器くず」と言います)」に該当します。
そのため、他者が発生させた産業廃棄物の回収、加工を行う場合は、産業廃棄物処理業の許可が不可欠となります。
もちろん、肥料原料として陶磁器くずの買い付けをした場合は、産業廃棄物処理ではなく、「原材料の仕入れ」になりますが、持続的に陶磁器くずを購入し続けることは非常に難しいように思います。
この第二段階では、「自社品」のみを回収対象と想定されていますので、環境大臣から「広域認定」を受ければ、各都道府県から産業廃棄物処理業の許可を取得しなくても、事業化は可能です。
しかし、第三段階では、「他社品を含め」回収を考えているとのことですので、こうなると、基本的には、広域認定ではなく、産業廃棄物処理業の許可取得が不可欠になります。
「加工」の部分で産業廃棄物処分業の許可を取得すること自体は、それほど難しくありませんが、
問題となるのは、「市中から陶磁器くずを回収する」役割を誰が担うか?です。
「箱詰めして宅配品で送ってもらう」という誰もが思いつきそうな解決策は、廃棄物処理法では違法となりますので、慎重に制度設計を行う必要があります。
実際のところ、リサイクルスキーム構築の際には、この「回収」をいかに行うかで、皆さん頭を悩ませているわけですが。
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2022年3月15日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:リサイクルスキーム事例集