産業廃棄物を盛土材として利用することの可否

自社で中間処理を請け負った産業廃棄物を有効活用(?)し、建設現場で盛土材として利用した処分業者に対し、三重県から事業の全部停止処分90日間という行政処分が下されました。

2015年9月16日付 三重県発表 「産業廃棄物処理業者の行政処分(事業の停止)を行いました

1 概 要
 本日(9月15日)、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)第14条の3の規定に基づき、産業廃棄物処理業者に対し、行政処分(事業の停止)を行いました。

2 内 容
 本日(9月15日)、産業廃棄物処分業者であるO建設株式会社に対して、法第14条の3の規定に基づき、行政処分(平成27年9月16日から12月14日まで(90日間)の産業廃棄物処分業の事業停止)を行いました。
(行政処分の理由)
 O建設株式会社は、伊賀市蔵縄手地内の土砂流出防止工事現場において、工事車両進入路整備のために、受託した産業廃棄物を処理して製造した再生材を投入しました。しかしながら、当該再生材は、品質管理が十分でなく、市場取引の合理性を著しく欠如した状態(事実上無償)で投入し、工事終了後も残置(管理放棄)する計画であったなど、当該再生材は産業廃棄物であり、法第16条に規定する投棄禁止の違反行為となります。

三重県の発表内容からは、どんな産業廃棄物が使われたのかよくわかりませんが、新聞報道でその詳細が明らかにされていました。

2015年9月16日付 毎日新聞 
行政ファイル:伊賀の産廃業者を業務停止 /三重

同社は昨年9〜12月、伊賀市蔵縄手の工事現場で、車両進入路整備の際、石こうボードやタイル、ガラス片などを処理した再生材5880トンを使用。

どのような加工をして盛土材として使っていたのかはわかりませんが、石膏ボードを砕いただけで盛土材として利用、すなわち土中に埋めていたのであれば、硫化水素が発生する原因となりますので、不法投棄に等しい行為と言えます。

石膏ボードを地盤改良剤として再生利用する技術は実現していますが、下記のように手間暇をかけ、半水石膏の状態になるまで加工を行う必要があります。

※環境省 「(廃石膏ボードの)地盤改良用途への応用

石膏ボードから紙を除去、粉砕して得られる廃石膏粉を加熱処理することによって水硬性を有する半水石膏を製造し、軟弱地盤の改良材としての適応性に関する研究が数多く行われている

実際のところ、新品の石膏ボードを市場から調達し、盛土材として石膏ボードをそのまま埋めるバカはいません。

言い換えると、経費を掛けずに産業廃棄物を処分できるからこそ、あの手この手で盛土材として使うわけですので、三重県が処分理由として挙げている「市場取引の合理性を著しく欠如」という指摘は、言わずもがなという気がします。

それでもあえて処分理由として挙げたのは、「総合判断説によって判断しても、資材ではなく廃棄物になる」という念押しの意味に過ぎないのかもしれませんが。

ちなみに、不法投棄と認定された以上、告発等の手続きを経ずに、いきなり許可取消処分に臨む自治体が実際にあります。

同様の行為を行いたい場合は、最低限、「具体的な品質管理の方法」「盛土に再生材が混入する割合」等を事前に自治体に示し、法的な問題点が無いかどうかを話し合う必要があります。

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