委託基準違反とマニフェストの記載漏れに基づく許可取消

少し前の事例になりますが、廃棄物処理法第21条の3の規定や、委託基準について考えさせられる許可取消事例がありますので、ご紹介します。

2016年3月7日付 山口県発表 「産業廃棄物処理業者に対する行政処分について
※事例として学ぶことが目的ですので、法人名称はイニシャル化しています。

2 処分の内容
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という。)第14条の3の2の規定に基づく、以下の産業廃棄物処理業の許可の取消し
○ 産業廃棄物収集運搬業

3 処分の理由等
(1) 処分理由
対象者は、平成27年7月28日、産業廃棄物収集運搬業の許可(積替え又は保管を除く)を有する有限会社A工務店と産業廃棄物処理委託契約を締結し、平成27年12月14日16時頃及び12月15日16時頃、対象者が元請けの宇部市大小路二丁目における建設工事で生じたアスファルトがらの収集運搬について、有限会社A工務店が積替え保管することを了知した上で委託し、有限会社A工務店は同社資材置き場で当該アスファルトがらの積替え保管を行った。
また、当該収集運搬において、対象者は「数量」及び「交付年月日」を記載していない産業廃棄物管理票の要件を満たしていない書類を、有限会社A工務店へ交付した。
このことは、委託基準を定めた法第12条第6項及び産業廃棄物管理票記載義務を定めた法第12条の3第1項に違反する。

(2) 根拠条項
法第12条第6項(委託基準違反)
法第12条の3第1項(産業廃棄物管理票記載義務違反)

下請業者に無許可状態の積替え保管をさせ、マニフェストに「数量」と「交付年月日」を記載せずに交付した元請業者の、産業廃棄物収集運搬業許可を取消す処分です。

マニフェストの記載漏れだけであれば、山口県も業許可を取消さなかったかもしれません。

平成23年3月15日付環廃産発第110310002号「廃棄物の処理及び清掃に関する法律第14条の3等に係る法定受託事務に関する処理基準について」によると、マニフェストの記載漏れは許可取消の対象としてリストアップされていないからです。

しかし、「委託基準違反」については、許可取消の対象として挙げられています。

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上記通知では、許可取消の対象となる「委託基準違反」が2つ挙げられています。

「許可業者への委託」と「委託契約書の作成・保存」は両方とも委託基準の構成要素ですが、
「許可業者への委託」違反は、法第25条の「5年以下の懲役、もしくは1千万円以下の罰金、または併科」の対象であり、
「委託契約書の作成・保存」違反は、法第26条の「3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金、または併科」の対象となります。

今回のケースでは、下請は産業廃棄物収集運搬業の許可業者ではありましたが、積替え保管の許可は所持していなかったため、その下請に積替え保管を委託するということは、無許可(変更)状態の業者に処理委託をしたことになり、法第12条第5項の委託基準違反と評価する余地もありました。

山口県は、法第12条第5項の委託基準違反ではなく、外形的に違反が明確となる、委託契約書に関する法第12条第6項の委託基準違反を許可取消の理由として採用したようです。

さて、環境省の通知では、
マニフェストの虚偽記載が「事業の全部停止30日間」が妥当とされる一方で、
委託基準違反は「許可取消」が相当と、委託基準違反には非常に厳格な理由がよくわかりません。

もっとも、優良認定処理業者でも、マニフェストに関しては、年間1件や2件の間違いが発生することが常ですので、
マニフェストの虚偽記載(意図的ではなかったとしても)のみで許可取消となった日には、処理業者の大半(ほぼ全部!?)の許可が取消される大粛清の嵐となってしまいそうですが。

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コメント

  1. 詠み人知らず より:

    はじめまして、貴ブログをいつも興味深く拝読させていただいております。

    環境省通知で許可取消し相当となっている「委託基準違反」の2つについて、当方は以下のとおり理解しております。
     ①委託基準違反(法第12条第5項違反、罰則:法第25条第6号)
     ②委託基準違反(法第12条第5項違反、罰則:法第26条第1号)
    ①の違反が「無許可業者に委託すること」を指すのに対して、
    ②の違反は「委託基準に違反して委託すること」を指すのだと思われます。
    委託基準の中には「事業の範囲から外れた処理の委託をさせてはならない」という規定がありますので、
    話題に挙がった処分は「許可業者に事業の範囲外のことをさせた」、
    すなわち「許可業者に実質的に無許可営業(無許可変更)をさせた」ことが問題視されたのだと思います

  2. 尾上雅典 より:

    詠み人知らず様 コメントいただき、ありがとうございました。

    私見を先に申し上げると、
    「許可業者に事業範囲外のことをさせてはいけない」と直接規制する条文はありませんので、②の委託基準違反は、やはり契約書などの法定記載事項不備と考えるべきかと思いました。

    重要性の非常に高いご指摘と思いますので、後日、ブログの記事として取りまとめさせていただきます。


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