羈束行為となる許可取消

タイトルに難しい漢字を使っていますが、「きそくこうい」と読みます。

羈束行為とは、「一定の要件に該当する場合に、行政庁が一定の行為をしなければならないこと」(Wikipedia)を指しますが、業許可の取消にもあてはまる部分があります。

許可取消の場合、「都道府県知事は、欠格要件に該当した事業者の許可を必ず取消さねばならない」という原則があるのを、多くの方がご存知だと思います。

廃棄物処理法の条文で言うと、法第14条の3の2となります。

(許可の取消し)
第14条の3の2 都道府県知事は、産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その許可を取り消さなければならない。

一 第14条第5項第二号イ(第7条第5項第四号ロ若しくはハ(第25条から第27条まで若しくは第32条第1項(第25条から第27条までの規定に係る部分に限る。)の規定により、又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 の規定に違反し、刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)又は第14条第5項第二号ロ若しくはヘに該当するに至つたとき。
二 第14条第5項第二号ハからホまで(同号イ(第7条第5項第四号ロ若しくはハ(第25条から第27条までの規定により、又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)又は第14条第5項第二号ロに係るものに限る。)に該当するに至つたとき。
三 第14条第5項第二号ハからホまで(同号イ(第7条第5項第四号ニに係るものに限る。)に係るものに限る。)に該当するに至つたとき。
四 第14条第5項第二号イ又はハからホまでのいずれかに該当するに至つたとき(前三号に該当する場合を除く。)。
五 前条第一号に該当し情状が特に重いとき、又は同条の規定による処分に違反したとき。
六 不正の手段により第14条第1項若しくは第6項の許可(同条第2項又は第7項の許可の更新を含む。)又は第14条の2第1項の変更の許可を受けたとき。

2 都道府県知事は、産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者が前条第二号又は第三号のいずれかに該当するときは、その許可を取り消すことができる。


「イ」や「ロ」が多用されており、なおかつ一般廃棄物処理業に関する条文を多数準用しているため、暗号のごとくに意味がわかりにくい日本語になっています(苦笑)。

おそらく、この条文は、廃棄物処理法の中で最も難解な条文に入りますので、一読しても意味がわからなかったとしても問題はありません。

ポイントとしては、廃棄物処理法第14条3の2という一番大きな箱の中に、「第14条第5項第二号」や「第7条第5項」といった、より小さな箱が入れ子状に入っている状態を思い浮かべていただくと良いでしょう。

暗号解読のコツは、出現頻度の高いキーワードに着目することですが、上の条文には、「法第14条第5項」が頻出しています。

「除く」とか「限る」という用語も多数使われていますが、結局のところ、「法第14条第5項」に該当した時点で、その産業廃棄物処理業者の許可は必ず取消されることになります。

別の言い方をすると、都道府県知事は、処理業者が上記の要件に当てはまっていることに気づいた時点で、その業者の許可を必ず取消さねばならないのです。

では、2番目の入れ子である、法第14条第5項を見ます。

 都道府県知事は、第一項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。

一 (略)
二 申請者が次のいずれにも該当しないこと。
イ 第7条第5項第四号イからトまでのいずれかに該当する者
ロ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第二条第六号 に規定する暴力団員(以下この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなつた日から五年を経過しない者(以下この号において「暴力団員等」という。)
ハ 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人がイ又はロのいずれかに該当するもの
ニ 法人でその役員又は政令で定める使用人のうちにイ又はロのいずれかに該当する者のあるもの
ホ 個人で政令で定める使用人のうちにイ又はロのいずれかに該当する者のあるもの
ヘ 暴力団員等がその事業活動を支配する者

2番目の入れ子の中には、「法第7条第5項第四号」というもう一つの入れ子が入っていることがわかります。

3番目の入れ子である「法第7条第5項第四号」は少々長い条文となりますので、今回お話ししたいテーマに絞って引用します。

廃棄物処理法第7条第5項
市町村長は、第一項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。

一~三 (略)
四  申請者が次のいずれにも該当しないこと。
イ~ハ (略)
ニ 第7条の4第1項(第四号に係る部分を除く。)若しくは第2項若しくは第14条の3の2第1項(第四号に係る部分を除く。)若しくは第2項(これらの規定を第14条の6において読み替えて準用する場合を含む。)又は浄化槽法第41条第2項の規定により許可を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合(第7条の4第1項第三号又は第14条の3の2第1項第三号(第14条の6において準用する場合を含む。)に該当することにより許可が取り消された場合を除く。)においては、当該取消しの処分に係る行政手続法 (平成5年法律第88号)第15条の規定による通知があつた日前60日以内に当該法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。以下この号、第8条の5第6項及び第14条第5項第二号ニにおいて同じ。)であつた者で当該取消しの日から5年を経過しないものを含む。)
ホ~ヌ (略)

カッコ書きがやたらと多いので、さらに簡略化します。

廃棄物処理法第7条第5項
市町村長は、第一項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。

一~三 (略)
四  申請者が次のいずれにも該当しないこと。
イ~ハ (略)
ニ 第7条の4第1項(第四号に係る部分を除く。)若しくは第2項若しくは第14条の3の2第1項(第四号に係る部分を除く。)若しくは第2項又は浄化槽法第41条第2項の規定により許可を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者
ホ~ヌ (略)

再び「第14条の3の2第1項」に戻るという無限ループぶりを発揮していますが、
「法第7条の4第1項または第2項」や「法第14条の3の2第1項(第四号部分のみ除く)」に該当し、ある自治体から廃棄物処理業の許可が取消された場合、「他の自治体も、その業者の許可を取消さねばならない」ことを理解していただければ十分です。

さて、前置きだけで非常に長文になってしまいましたので、本当に言いたかったことは次の記事で書きたいと思います(笑)。

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