愛知県はダイコーの許可をいつ取消すのか?
「羈束行為となる許可取消」の続きです。
羈束行為となる許可取消では、
「法第7条の4第1項または第2項」や「法第14条の3の2第1項(第四号部分のみ除く)」に該当し、ある自治体から廃棄物処理業の許可が取消された場合、「他の自治体も、その業者の許可を取消さねばならない」
と書きました。
2016年4月18日付で、岐阜県と三重県がダイコーの産業廃棄物収集運搬業許可を取消しました。
いずれの県も、許可取消の理由を、ダイコーが無断で産業廃棄物の積替え保管行為をしたことが「無許可変更」に該当するためとしています。
岐阜県の取消理由を以下に転載
4取消理由
当県が、法第18条によりダイコー株式会社から報告を求め、第19条により同社が海津市内に賃借している倉庫に立入検査を行ったところ、同倉庫に保管されている物は、同社に処分委託された産業廃棄物で、同社が同倉庫に運搬し保管したものであることを確認した。
当該行為は、産業廃棄物の積替え保管行為に該当するところ、当県が許可した同社の産業廃棄物収集運搬業の事業範囲には積替え保管を含んでいないことから、同社は法第14条の2第1項の規定に違反(事業範囲の無許可変更)し、法第14条の3の2第1項第5号に該当する。
さて、許可取消を行うためには、許可取消の根拠条文を示す必要がありますが、「法第14条の3の2第1項第5号に該当」と示されています。
(許可の取消し)
第14条の3の2 都道府県知事は、産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その許可を取り消さなければならない。- 一 第14条第5項第二号イ(第7条第5項第四号ロ若しくはハ(第25条から第27条まで若しくは第32条第1項(第25条から第27条までの規定に係る部分に限る。)の規定により、又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 の規定に違反し、刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)又は第14条第5項第二号ロ若しくはヘに該当するに至つたとき。
- 二 第14条第5項第二号ハからホまで(同号イ(第7条第5項第四号ロ若しくはハ(第25条から第27条までの規定により、又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)又は第14条第5項第二号ロに係るものに限る。)に該当するに至つたとき。
- 三 第14条第5項第二号ハからホまで(同号イ(第7条第5項第四号ニに係るものに限る。)に係るものに限る。)に該当するに至つたとき。
- 四 第14条第5項第二号イ又はハからホまでのいずれかに該当するに至つたとき(前三号に該当する場合を除く。)。
- 五 前条第一号に該当し情状が特に重いとき、又は同条の規定による処分に違反したとき。
- 六 不正の手段により第14条第1項若しくは第6項の許可(同条第2項又は第7項の許可の更新を含む。)又は第14条の2第1項の変更の許可を受けたとき。
2 都道府県知事は、産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者が前条第二号又は第三号のいずれかに該当するときは、その許可を取り消すことができる。
五 前条第一号に該当し情状が特に重いときの「前条第一号」とは、「法第14条の3第一号」を指しますが、具体的には以下のとおりとなります。
第14条の3 都道府県知事は、産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者が次の各号のいずれかに該当するときは、期間を定めてその事業の全部又は一部の停止を命ずることができる。
- 一 違反行為をしたとき、又は他人に対して違反行為をすることを要求し、依頼し、若しくは唆し、若しくは他人が違反行為をすることを助けたとき。
- 二~三 (略)
つまり、ダイコーの違反行為(無許可変更)が、「その情状が特に重い」と両県に判断されたために、産業廃棄物収集運搬業の許可が取消されたということになります。
ちなみに、情状が特に重いか否かは、都道府県の判断(裁量)となりますので、無許可変更をすると自動的に許可取消が行われるわけではありません。
無許可変更で罰金刑が科された場合は、廃棄物処理法違反という刑事罰を根拠に許可取消を行いますので、都道府県は必ず許可を取消さねばなりません。
岐阜県及び三重県の「情状が特に重い」という判断が適切かどうかはさておき(個人的には適切と思います)、両県による許可取消が行われた以上、他の自治体もダイコーの業許可を取消さねばならなくなります。
それが、冒頭でご紹介した、
「法第7条の4第1項または第2項」や「法第14条の3の2第1項(第四号部分のみ除く)」に該当し、ある自治体から廃棄物処理業の許可が取消された場合、「他の自治体も、その業者の許可を取消さねばならない」
という部分です。
しかしながら、この記事を書いた2016年4月25日現在、愛知県はダイコーの産業廃棄物処理業許可の取消をまだ行っていません。
廃棄物処理法で上記のように書かれている以上、愛知県もいつかはダイコーの業許可を取消すのは確実ですので、現在は許可取消の決裁中ということなのでしょう。
奇しくも、2016年3月30日付で三重県が許可取消をした処理業者に対し、愛知県は2016年4月18日付で、
平成28年3月30日付けで三重県知事から、法第14条の3の2第1項第5号に該当することを理由として、同項の規定に基づき産業廃棄物収集運搬業の許可の取消処分を受けた。
という理由で、許可取消を行っています。
年度末の人事異動に伴う混乱という事情を斟酌すると、先行した許可取消から約10日後に、追随した取消を行う計算になりましょうか。
手続としてはそれでも問題はないと言えますが、
すでに愛知県が発出した改善命令をダイコーが履行していない以上、
他の自治体に追随した取消ではなく、少なくとも、改善命令違反が確定した段階で速やかにダイコーの許可取消を行うべきだったのではないでしょうか?
前代未聞の不祥事事件を起こしたのは、他ならぬ愛知県が許可を出した産業廃棄物処分業者であったのに、他の自治体の処分に追随するというのでは、自治体としての主体性が欠けていたという批判を受けても仕方がない結末です。
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2016年4月25日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:行政処分