全日空機誤操作に見る設備面でのコンプライアンス対策

時事ドットコム 全日空機が1900メートル急降下=副操縦士がスイッチ誤操作-浜松沖

 6日午後10時50分ごろ、浜松市の南約43キロの上空約1万2500メートルを飛行中の那覇発羽田行き全日本空輸140便(ボーイング737-700型機)が、約1900メートル急降下し、女性客室乗務員2人が軽傷を負ったことが7日、分かった。全日空と国土交通省が明らかにした。
 トイレのため離席した男性機長(64)が操縦室に戻る際、男性副操縦士(38)が、ドアの鍵を開けるつまみと間違え、機体の左右方向の向きを調整する「方向舵(だ)調整スイッチ」のつまみを左に回した。このため、機体が左に傾き降下したという。
 ほかの乗客乗員115人にけがはなかった。国交省は事故につながる「重大インシデント」と判断し、運輸安全委員会は8日、航空事故調査官3人を羽田空港に派遣する。
 国交省と全日空によると、同機は子会社のエアーニッポンが運航。巡航高度の約1万2500メートルから、約30秒間で約1万600メートルまで降下した。
 操縦室ドアの鍵を開閉するつまみは、左右の操縦席の間の操作盤にあり、方向舵調整スイッチの左斜め隣に位置する。機長からの合図で、鍵のつまみを左に回して解錠するはずが、副操縦士は誤って方向舵調整スイッチを左に回した。
 当時は自動操縦中だったが、自動操縦中でも方向舵調整スイッチは操作できるという。
 副操縦士が機体の姿勢を立て直し、機長は自分で鍵を開け戻った。

今朝のTV報道を見ていると、この事故の発生を受け、全日空は「全機長に注意を喚起する」旨の声明を発表していました。

それを聞き
あぁ まことに日本らしい「精神的な」対応だなぁ
と慨嘆してしまいました。

もちろん、事故のもっとも大きな原因は、副機長の誤操作にあるのは間違いありませんが、
そもそもの基本的前提として、人間は必ず間違えるものです。

「機長の扉を鍵で開ける手間が省ける」メリットと
「誤操作で乗客全員が死ぬ」デメリットを比較すると

比較の対象にもならないくらい、デメリットの方が大きいです。

このような場合、訓練された副機長でも誤操作をする可能性がある以上
トイレのために離席した乗員は、自分で鍵を使って扉を開けるようにするべきなのではないでしょうか。

精神論的に、「注意喚起して終わり」では、精神集中状態が少しでも緩むと、また同じか、それ以上の大惨事が発生するかもしれません。

飛行機の安全対策などは、設計の問題であり、コンプライアンスとは無関係だ
と思われる方も多いと思いますが、

「人間は間違えるものだ」
「人間は楽な方法を選ぶものだ」
という現実に目をつぶり、精神論でリスクに対処するのが日本企業の欠点です。

飛行機会社のもっとも重要な使命は、
乗客を安全に目的地に運ぶことです。

いくら法律を順守していても、乗客を安全に運べない事態が発生すれば、
それだけで飛行機会社の信用は失墜します。

安全な運行という、社会的な要請を満たしてこそのコンプライアンスです。

廃棄物処理現場でも、個々の注意喚起のみに頼る精神論が幅を利かせていないでしょうか?

パッカー車での巻き込み事故、高所からピット穴への転落事故その他
まさに「注意一秒、怪我一生」の一触即発の状態が満ち溢れています。

逆説的に言うと、たった一秒の注意で生死が分かれる現場というのは、危険極まりない環境と言わざるを得ません。

せめて、注意十秒くらいか、あるいは構造的に生死に関するリスクが発生しない環境を構築していく必要があります。

世界に冠たる安全大国の名にふさわしい「コンプライアンス対策」を取っていただければと思います。

このままでは、事故電車を土に埋めた某国の所業を笑うことはできません。

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コメント

  1. イージー より:

    セキュリティー対策で操縦室からでないと開けられないものと思ってました。『機長は自分で鍵を開け戻った』とあるなら、はじめっから彼はそうすればよかったのに。副操縦士も楽だろう、そのほうが。以上。

  2. 矢板橋@ミダック より:

    今朝のブログネタが尾上先生と被ってしまいました。
    私にとっては、ネタが被ったこと自体、光栄なのですが。(笑)

    私は、事故が浜松上空だったこと。副操縦士の操作ミスという点。
    この二つが、気に入ってネタとして取り上げたのですが、事件に対する視点や分析が私と先生とではレベルが全く違うので、正直恥ずかしい限りです。

    尾上先生のように、鋭い視点で事件を分析できるよう、これからも努力し続ける所存です!

  3. 尾上雅典 より:

    イージー様 
    コメントありがとうございます。
    最初は私も操縦室でしか開閉できないのか
    と思っておりましたが、

    よく考えると、それでは操縦室に入ること自体が
    できないため、鍵は絶対にあるのではと気づきました(笑)。

    面倒といえば面倒ですが、誤操作の危険を冒してまでの
    面倒ではないと思うので、これを機会に運航規程を変えてほしいものです。

  4. 尾上雅典 より:

    矢板橋@ミダック 様

    コメントありがとうございます。
    最近浜松周辺がニュースになることが多い気がします。
    ひょっとすると、社長のブログを毎回拝見しているからかもしれません(笑)。

    もちろん従業員教育も大変重要なのですが、安全対策については、設備面での配慮の方が重要だと考える今日この頃です。

  5. とおりすがり。 より:

    鍵で入れないのは、ハイジャック防止の為だと思います。
    ふつう、飛行中にパイロットが出入りする場合、ハイジャック防止の為、外にCAが立ち、そのうえ、カート等でガードするハズです。

    ただ、ANAの場合、どこまで規則が守られていたのか、全く不明です。
    規則の酸素マスクもしていなったわけですし、電車でも行われる、2人によるダブルチェック等もされなかったと思われます。(やればマスクはしているハズ)

  6. 尾上雅典 より:

    とおりすがり。様 コメントありがとうございました。

    リアルな解説をありがとうございます。
    過去の東海村の事故でもそうでしたが、完璧を期したつもりでマニュアルを作っても、それを守るか守らないかが人の意思に依存している以上、重大な事故を完璧に防ぐことはできないようですね。


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