廃棄物処理法の“現実的な”リスクとは

昨日から東京に出張しています。

25日(金)に、NEW環境展の記念セミナーで「廃棄物処理法の罰則」について講演するためです。

昨日と今日はほぼ終日セミナーの受講にあて、情報のインプットに努めています。

金曜日に講演するテーマにも共通する内容ですが、
廃棄物処理法の“現実的な”リスクとはどんなものかを、昨日聴講したセミナーをきっかけに考えました。

処理業者の場合

処理業者の場合は、許可取消、行政処分、刑事罰など、企業存続に直結するリスクとなるということは、衆目の一致するところだと思います。

そのリスクを最大限低減させるためには、廃棄物処理法の罰則の理解をベースとし、廃棄物処理基準やマニフェストの運用を正確に理解すれば良いということになります。

行政処分の内容を知ることも非常に重要ですが、なんでもかんでも行政に相談をすれば良いというものでもありません。

行政が常に正しいというわけではないことを、我々は知識として知っておかねばなりません。

行政に相談すると、違法か合法かはっきりしない行為については、十中八九(いや十か?)、「それをやってはいけません」という回答になります。

もちろん、その行為が明確に法律で禁止されているのであれば、そのアドバイスが適切ということになりますが、
違法か合法かわからないときは、「それをやってはいけません」と何でも禁止するというのが、一番間違いようのない最強(最凶?)のアドバイスです。

何もしない限り、法律上の問題点に触れる可能性もないわけなので、困った結果が起こらなかったという意味においてはそのアドバイスが常に正しいという結果になります。

ただし、事業者においては、その事なかれ主義に付き合い続けるだけでは、他社への競争優位性を作ることは永遠に不可能です。

違法行為はもちろんいけませんが、どうすれば合法に近づけられるかを考え、それを実行する必要があります。

当然ながら、行政はアドバイザーではないため、ほとんどの担当者は合法化に役立つヒントなどを教えてくれません。
というよりは、そのような知識もなく、アドバイスしてやろうという方向には思考回路が働きません(苦笑)。

ゆえに、廃棄物処理企業にとって今一番重要なのは、法律を正確な理解と、それを元に行政と対等に議論する力です。

「お上の言うことには盲目的に従います」というのは、企業として恥ずかしい姿勢だと思ってください。

高圧的に圧力や威迫をするのではなく、廃棄物処理という社会的インフラの担い手としてのプライドを持ちながら、対等に見解をぶつけ合い、法律的な妥協点を探るということが重要です。

排出事業者の場合

難しいのが排出事業者の場合です。

もちろん、排出事業者であっても罰則の適用を受けるので、罰則が現実的なリスクであることは間違いありません。

ただし、排出事業者が刑事罰の対象になるケースというのは、現実的にそれほど多くはなく、
立件される事件の大半は、排出事業者自身の不法投棄などのある意味古典的なわかりやすい犯罪です。

委託契約書の不備で担当者が懲役刑になる、ということは法律的には可能な構成になっていますが、現実的にはほぼ考えにくい事態です。

排出事業者が真に恐れるべきなのは、「措置命令」と「処理困難通知」ではないかと考えています。

株式公開企業や、マスコミ媒体で広告を出稿している企業にとっては、
措置命令の対象にされてしまうと、経費をかけて培ってきた企業イメージを一夜で崩すことになりますので、失うものは非常に大きい場合があります。

また、CSRや環境報告書で自社の信頼性をアピールしている企業の場合も、措置命令の対象になった時点で、それらの努力が水泡に帰することになります。

措置命令の対象になったからといって、排出企業が倒産することはほぼ有り得ませんが、
社会からの支持や好感をどのように考えているかによって、措置命令の重さは決まります。

当然ながら、社会からの支持を重視する企業であるほど、措置命令を受けるダメージは大きくなっていきます。

処理困難通知の場合は、社会的な評価の失墜につながるわけではありませんが、
排出企業の担当者にとっては、通知後30日以内に都道府県知事に報告書を提出しなければならないという、非常に忙しい手続きが付随してきます。

場合によっては廃棄物処理費用の更なる負担が必要な場合もありますので、現地確認を励行し、処理困難通知を出してくる可能性のある処理企業とは取引をしないようにしたいところです。

講演するたびに「処理困難通知を受けた経験がある方はいますか?」と質問しますが、
東京以外では受けたことがある人はゼロでした。

東京においても、最近は処理困難通知という規定が忘れられている可能性が高いため、「1年以内に受けた人」と限定すると、ゼロになるような気がします。

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