対価の支払い方法の変更に関する覚書

当ブログで一番閲覧数の多い記事は、「覚書への印紙貼付の要否」なのですが、先日、その記事へのコメントで、「仲介業者経由で請求・支払いを行う旨の覚書は、印紙税の課税文書に該当しますか?」というご質問をいただきました。

おそらく、世の中の排出事業者と処理業者の大部分の方が関心のあるテーマだと思いますので、詳しく解説したいと思います。

産業廃棄物処理委託契約においては、委託者である排出事業者と、受託者である産業廃棄物処理業者間で、当事者同士が直接契約を行うことが基本原則ですが、近年では、委託者と受託者間の契約事務を第三者に委任する機会が増えており、産業廃棄物処理委託契約書に、その第三者を「請求や支払窓口」などとして登場させたいというニーズが増えています。

結論としては、既に皆様がご存知のとおり、「委託者」「受託者」「請求支払窓口担当」の三者が、一通の契約書で共同合意すること自体は合法です。

この場合、既に「委託者」と「受託者」の二者契約が先にあり、後から「覚書」等で「請求支払窓口担当」を追加する、という手法が取られることが多いと思われます。

ここで問題となってくるのが、
冒頭の「この覚書は印紙税の課税文書になるのか」と
課税文書になる場合は、「何号の課税文書になるのか」の2点です。

今回は、この2つの疑問を完全に晴らしてくれる国税庁の質疑応答事例をご紹介します。

国税庁 質疑応答事例
産業廃棄物処分に係る委託料の支払方法等に関する覚書

【照会要旨】
 当社(甲)は、既に締結した「産業廃棄物処分委託基本契約書」(以下「原契約書」といいます。)において処分業者(乙)へ支払うこととしていた委託料(処分料金)について、処分契約の当事者以外の者(丙)を介して支払うこととするため、甲、乙及び丙の三者間で、次の「産業廃棄物処分に係る委託料の支払方法等に関する覚書」(以下「覚書」といいます。)を3通作成することとしました。
 この「覚書」は、課税文書に該当しますか。
 なお、原契約書は、営業者間において産業廃棄物の処分(請負)に関する二以上の取引を継続して行うことを前提に締結していますので、第2号文書(請負に関する契約書)と第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当し、この原契約書には契約金額を記載していますので、通則3のイの規定により、第2号文書に所属を決定しています。

【回答要旨】
 ご質問の「覚書」は、第7号文書に該当します。

(理由)
 ご質問の文書は、原契約書に定める産業廃棄物の処分(請負)に係る委託料について、その「支払方法」の変更の事実を証明する目的で作成される文書ですので、契約金額の記載のない第2号文書に該当します。また、継続する請負業務に係る「対価の支払方法」の変更の事実を証明する目的で作成される文書でもありますので、第7号文書にも該当します。
 したがって、この「覚書」は、法通則3のイのただし書の規定により、第7号文書に所属が決定されます。
 なお、印紙税法施行令第26条第1号に規定する「対価の支払方法を定めるもの」とは、対価の支払に関する手段方法を具体的に定めるものをいいますので、この「覚書」のように委託料の支払経路を変更するものも、「対価の支払方法を定めるもの」(支払方法の変更)に該当します。

聞きたいことの直球ど真ん中の質問ですね(笑)。

「仲介業者経由で請求支払を行うことにする」旨を追記するということは、「対価の支払方法の変更」に該当するため、覚書は、その変更の事実を証明する書面として、第7号文書に該当するということです。

疑問や解釈を差しはさむ余地が無い明確な質疑です。

しかしながら、我々はビジネスの一環で産業廃棄物処理委託契約を締結する以上、印紙税法の解釈だけで満足してしまうわけにはいきません。

事業者にとって都合の悪いことに、上記の例の覚書には「契約金額」が記載されませんので、覚書は第1号文書や第2号文書にならず、第7号文書にしかなりません。

そのため、書式としては非常に簡易な覚書ではありますが、それに貼付すべき印紙額は、「4千円」になります。

印紙額だけを考慮するのであれば、あえて覚書で「請求支払窓口担当」を追記するよりも、原契約である産業廃棄物処理委託契約書を、三者一括契約として再作成する方が断然安いということになります(苦笑)。

具体的に説明すると、
収集運搬委託契約書の場合なら、記載された契約金額が「10万円を超え50万円以下」であれば、印紙額はたったの「400円」で済みます。

「50万円を超え100万円以下」であっても、「1千円」でしかありません。

「覚書」か「契約書の再作成」のどちらを選ぶかによって、書類1通あたりのコストが最低でも数千円単位で変わってくることになります。

第7号文書に該当する覚書を何十通も取り交わす場合は、当事者の印紙税の負担額はかなりのものとなります。

印紙税に関する悩みを根本的に解決するためには、産業廃棄物処理委託契約を、「電子帳簿保存法」の要件を満たした「電子契約」で行うしかありません。

要件を満たした電子契約の場合は、印紙税の課税対象にはなりませんので、印紙を購入・貼付する必要が無くなるからです。

「時間」「作成に費やす労力」「コスト」の面では、紙の契約書よりも電子契約の方が便利であることは間違いありません。

そのため、いずれは、「ビジネスでも電子契約が当たり前」という時代になる、と個人的には確信しています。

ただし、ビジネスの場で電子契約が当たり前のインフラとして定着するまでには、電子契約の利用者がもっと増える必要がありますので、まだまだ時間が掛かりそうです。

なお、国税庁の質疑応答にはまだ続きがあります。

また、この「覚書」は作成された3通がそれぞれ課税文書に該当しますが、丙はこの文書の課税事項である処分(請負)契約の当事者ではありませんから、課税文書の作成者(納税義務者)となりません。よって、3通に課される印紙税は、甲と乙とが連帯して納めることとなります。

印紙税の負担者は「排出事業者」と「処理業者」のみであり、「仲介業者」は請負契約(産業廃棄物処理委託契約)の当事者ではないため、印紙税を負担する義務は無いということになります。

もちろん、法的な義務は無いだけで、仲介業者が自発的に印紙税を負担すること自体は問題ありません。

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