産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付が不要な場合
産業廃棄物を他者に運搬、または処分委託をする場合、排出事業者は産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付しなければならないことは、当ブログ読者の皆様にとっては当然のお話だと思います。
しかし、廃棄物処理法で(細々と)例外的に規定されている「交付不要」となるケースの詳細を知っている方となると、その数がかなり減るかもしれません。
今回は、廃棄物処理法で規定された「産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付が不要な場合」を、法律の条文から整理したいと思います。
まずは、廃棄物処理法の根拠条文から
(産業廃棄物管理票)
廃棄物処理法第12条の3第1項
その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者(中間処理業者を含む。)は、その産業廃棄物(中間処理産業廃棄物を含む。第12条の5第1項及び第2項において同じ。)の運搬又は処分を他人に委託する場合(環境省令で定める場合を除く。)には、環境省令で定めるところにより、当該委託に係る産業廃棄物の引渡しと同時に当該産業廃棄物の運搬を受託した者(当該委託が産業廃棄物の処分のみに係るものである場合にあつては、その処分を受託した者)に対し、当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を記載した産業廃棄物管理票(以下単に「管理票」という。)を交付しなければならない。
「環境省令で定める場合」は「廃棄物処理法施行規則第8条の19」であり、具体的には次のように規定されています。
(産業廃棄物管理票の交付を要しない場合)
廃棄物処理法施行規則第8条の19
法第12条の3第1項(法第15条の4の7第2項において準用する場合を含む。以下同じ。)の環境省令で定める場合は、次のとおりとする。
- 一 市町村又は都道府県(法第11条第2項又は第3項の規定により産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分をその事務として行う場合に限る。)に産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合
- 二 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律第20条第2項の規定により国土交通大臣に届け出て廃油処理事業を行う港湾管理者又は漁港管理者(廃油(同法第3条第13号に規定する廃油をいう。以下この号及び第11号において同じ。)の収集若しくは運搬又は処分を行う場合に限る。)に廃油の運搬又は処分を委託する場合
- 三 専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集若しくは運搬又は処分を業として行う者に当該産業廃棄物のみの運搬又は処分を委託する場合
- 四 法第15条の4の2第1項の認定を受けた者(資源として利用することが可能な金属に係る当該認定を受けた者を除く。)に当該認定に係る産業廃棄物の当該認定に係る運搬又は処分を委託する場合
- 五 法第15条の4の3第1項の認定を受けた者(その委託を受けて当該認定に係る産業廃棄物の当該認定に係る運搬又は処分を業として行う者(同条第2項第二号に規定する者である者に限る。)を含む。)に当該認定に係る産業廃棄物の当該認定に係る運搬又は処分を委託する場合
- 六 第9条第二号の指定を受けた者に当該指定に係る産業廃棄物のみの運搬を委託する場合
- 七 第10条の3第二号の指定を受けた者に当該指定に係る産業廃棄物のみの処分を委託する場合
- 八 国(産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分をその業務として行う場合に限る。)に産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合
- 九 運搬用パイプライン及びこれに直結する処理施設を用いて産業廃棄物の運搬及び処分を行う者に当該産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合
- 十 産業廃棄物の輸出に係る運搬を行う者に本邦から輸出の相手国までの産業廃棄物の運搬を委託する場合
- 十一 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律第20条第1項の規定により国土交通大臣の許可を受けて廃油処理事業を行う者(廃油の収集若しくは運搬又は処分を行う場合に限る。)に同法第9条第3項に規定する外国船舶(専ら本邦の各港間又は港のみを航行するものを除く。)において生じた廃油の運搬又は処分を委託する場合
全部で11類型となりますので、読みやすく箇条書きで簡略化すると、
産業廃棄物管理票交付が不要な場合は、
- 市町村又は都道府県に産業廃棄物処理を委託する場合
- 海洋汚染防止法第20条第2項に基づき廃油処理事業を行う港湾管理者又は漁港管理者に廃油の処理を委託する場合
- 専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの処理を業として行う者に当該産業廃棄物のみの処理を委託する場合
- 環境大臣から産業廃棄物の再生利用認定を受けた者(資源として利用することが可能な金属に係る認定を受けた者を除く)に、認定に係る産業廃棄物の処理を委託する場合
- 環境大臣から産業廃棄物の広域認定を受けた者(認定事業者から委託を受けて認定に係る産業廃棄物の処理を業として行う者を含む)に、認定に係る産業廃棄物の処理を委託する場合
- 都道府県知事から再生利用指定を受けた者に、指定に係る産業廃棄物のみの運搬を委託する場合
- 都道府県知事から再生利用指定を受けた者に、指定に係る産業廃棄物のみの処分を委託する場合
- 国に産業廃棄物処理を委託する場合
- 運搬用パイプライン及びこれに直結する処理施設を用いて産業廃棄物の処理を行う者に、産業廃棄物の処理を委託する場合
- 産業廃棄物の輸出に係る運搬を行う者に、日本から輸出の相手国までの産業廃棄物の運搬を委託する場合
- 海洋汚染防止法第20条第1項に基づき廃油処理事業を行う者に、外国船舶(専ら日本の各港間又は港のみを航行するものを除く)において生じた廃油の処理を委託する場合
となります。
実務上あてはまることが多いケースは、
「専ら物を専ら業者に処理委託する場合」と「広域認定事業者に処理委託する場合」の2つであろうと思います。
「専ら物を専ら業者に処理委託する場合」は、委託相手が「専ら業者(専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集若しくは運搬又は処分を業として行う者)」であれば、「資源としての買取り」ではなく、「引取り手数料を徴収される」いわゆる「逆有償」であっても、産業廃棄物管理票の交付は不要となります。
ただし、この「逆有償」取引の場合、産業廃棄物管理票の交付は不要ですが、専ら業者との産業廃棄物処理委託契約書の締結は必要ですので、ご注意ください。
また、広域認定事業者への委託の場合、廃棄物処理法では産業廃棄物管理票の交付不要と規定されていますが、
広域認定の申請の際に、その事業者が「処理管理体制」で、「産業廃棄物の処理確認方法」として、「産業廃棄物管理票を使用する」と記載している場合は、市販されている産業廃棄物管理票を運用する必要があることにもご注意ください。
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2024年11月26日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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