一般廃棄物清掃工場へ受入不可の産業廃棄物を搬入すると不法投棄になる理由

2024年11月29日付 NHK 「産業廃棄物を不法に処分疑いで小樽の産廃業者社長を逮捕

食品製造工場から出た産業廃棄物を一般のごみに混ぜて不法に処分した疑いで、小樽市の廃棄物処理業者の社長が逮捕されました。産業廃棄物を一般ごみに混ぜて処分にかかる費用を浮かせる手口で1000万円近くの差額を不正に受け取っていたとみられるということで、警察が詳しく調べています。

「食品製造工場」から発生した産業廃棄物ということなので、おそらく「動植物性残さ」と思われますが、それを一般廃棄物に混ぜて、そのまま小樽市の清掃工場へ搬入していた容疑で社長が逮捕されたことになります。

「清掃工場」って、廃棄物を燃やす場所なわけだから、そこで廃棄物を燃やしてもらうことがなぜ不法投棄になるの?

という、根本的な疑問を抱いた方が多いかもしれません。

この手の逮捕報道は珍しいものではないため、当ブログでも何度か取り上げたことがある題材なのですが、今回は根拠条文の引用から始め、その意味するところを一つずつ見ていこうと思います。

まずは根拠条文から

廃棄物処理法第16条(投棄禁止)
 何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。

句読点を入れてもわずか21文字です。

「何人(なにびと)も」は、「誰もが」「誰も」という意味ですね。

「廃棄物を捨ててはならない」は、読んで字のごとく「廃棄物を捨てることを禁止する」という意味ですね。

重要な部分は「みだりに」となりますが、
公益財団法人日本漢字能力検定協会のHPでは、「みだりに」の同訓異字として4つの例が紹介されています。
https://www.kanjipedia.jp/sakuin/doukunigi/items/0006609600

「みだりに」

  • 妄りに しっかりした根拠もなく。むやみやたらに。
    「妄りに人を信用するな」「妄りに論ずべからず」「妄りに会社を休む」
  • 漫りに しまりなく。だらだらと。勝手きままに。
    「漫りに時間を過ごす」「漫りに女性を口説く」「漫りに軽口をたたく」
  • 濫りに 抑制しないでむやみに。度を超して。
    「濫りに原生林を伐採する」「濫りに酒を飲むな」「濫りに金を遣う」
  • 猥りに 正当な意味もなく、原則を押しまげてやたらに。
    「猥りに禁句を口にする」「猥りに立ち入ることを禁止する」

法律の条文上の表現としては、「みだりに」としか書かれていませんが、
上記の廃棄物処理法第16条の「みだりに」は、「正当な理由なく」、あるいは「正当な理由があるとは認められない場合」と説明されることが多いため、漢字としては「猥りに」となりそうです。

一部の方が大好きな「猥褻」の「猥」の字ですね。

よって、「みだりに」を無理やり口語訳すると、
廃棄物処理法第16条は、

「何人も、そうする正当な理由が無いのに廃棄物を捨ててはならない」

となりますが、逆に若干読みづらくなった感があります。

さて、報道事例に話を戻すと、
小樽市の清掃工場は、小樽市内で発生した「生活系一般廃棄物」と「事業系一般廃棄物」を処分(焼却)するために、小樽市が税金を使って設置した施設です。

その清掃工場に、「事業系一般廃棄物」ではない「産業廃棄物」を持ち込み、小樽市にそれを焼却してくださいと依頼したとしても、
小樽市にしてみれば、排出事業者に処理責任がある産業廃棄物の「動植物性残さ」を受け入れる理由や必然性がありませんので、小樽市は産業廃棄物の搬入を当然断ることになります。

よって、小樽市に知られないように産業廃棄物を一般廃棄物の中に混ぜ込み、小樽市に産業廃棄物を焼却をさせるという行為は、「本来なら産業廃棄物を持ち込む権限がない場所に正当な理由なく産業廃棄物を持ち込み、置き去る」ことに該当し、「不法投棄」になります。

類似のケースをさらに挙げると、
「粗大ごみ」を、「粗大ごみ」の回収日ではない日に「ごみ回収ステーション」に放置した場合、
「ごみ回収ステーション」という場所自体は「元々廃棄物を置いても良い場所」ではありますが、
「ごみ回収ステーション」は「24時間365日いつでも使える場所」ではなく、「特定のごみ回収日限定で、常識の範囲内の特定の時間帯のみ、ごみステーションとして使える場所」ですので、「粗大ごみ」を「粗大ごみ回収日以外の日」に出すと、「正当な理由なく、廃棄物を捨てた」ことになり、やはり「不法投棄」に該当します。

今回は、廃棄物処理法第16条の「みだりに」の定義で終わりにしておきます。

次回の記事では、「委託物を不法投棄された排出事業者への責任追及の有無」について解説します。

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