「委託する産業廃棄物の種類=許可証のとおり」は適法か?

産業廃棄物処理委託契約書中の「委託単価」を「見積書のとおり」と記載することの是非については、

当ブログ
・2021年10月21日付記事 「「委託料金」は「見積書記載のとおり」でOK?
・2015年10月9日付記事 「契約書の「委託料金」欄を「別途見積」とすることの可否
で「委託基準違反を引き起こす可能性が高いため、推奨できない」と解説してきたところです。

「委託単価=見積書のとおり」以外の新種の記載手口が見つかりましたので、今回はその新種の危険性について解説いたします。

※前提条件
・排出事業者が委託する産業廃棄物の種類は「廃プラスチック類のみ」
・委託先処理業者が所持する収集運搬業許可の「事業の範囲」は、「廃プラスチック類」の他「木くず」「がれき類」等の建設廃棄物関連の全部で8品目

2.(委託する産業廃棄物の種類、数量及び単価)
甲が、乙に収集・運搬を委託する産業廃棄物の種類、数量及び収集・運搬単価は、次のとおりとする。
種 類: 許可証のとおり
数 量: 10㎥/月
単 価: 見積書のとおり

排出事業者が「委託する産業廃棄物の種類」が「廃プラスチック類」のみであるのに、上記の記載方法では、「委託する産業廃棄物の種類」をまったく特定していません。

「許可証のとおり」という文字を百万回眺めても、「廃プラスチック類」という文字が浮かび上がってくることはありません。

処理業者が提供した許可証の写しの「事業の範囲」の中に「廃プラスチック類」が含まれてはいますが、
産業廃棄物処理委託契約書の「委託する産業廃棄物の種類」は、廃棄物処理法で義務付けられた法定記載事項の一つですので、
排出事業者は「どの種類の産業廃棄物(今回の場合なら「廃プラスチック類」)を委託するのか」を、具体的に記載して特定する義務が有ります。

※参考 産業廃棄物処理委託契約書の法定記載事項の一覧

よって、このような産業廃棄物処理委託契約書を作成・保存している排出事業者は、「私は委託基準違反をしています」という自社にとって不利益にしかならない証拠を適法なものと思い込み、真面目に(?)保存していることになります。

自社の違法行為を証明する書類を嬉々として保存している様子は、他人から見ると喜劇でしかありませんが、さらにその喜劇性、あるいは悲劇性を高める要素は「委託基準違反の契約書で罰せられるのは排出事業者のみ」という事実です。

十中八九、このような記載を提案するのは、排出事業者ではなく、産業廃棄物処理業者だと思われますが、委託基準は排出事業者のみに課された責任ですので、排出事業者だけが刑事罰に処されることとなります。

ではなぜ、処理業者はこのような危ない契約方法を提案してくるのか?

その理由は簡単で、「その処理業者が契約書作業の手抜きをしたいから」に他なりません。

手抜きをしたい業者目線で言うと、
「許可証のとおり」と書いておけば、後から契約対象の産業廃棄物の種類を増減させるのが簡単!

いちいち顧客ごとに、「ここは廃プラと木くず」「あちらは金属くずとがれき類」と契約対象を書き分けなくて良くなるので、アタシって天才!

と良いことづくめだからです(改めて言うまでもなく、違法な契約方法です)

「産業廃棄物処理業者はプロフェッショナルだから、完璧な契約書を提案してくれるに違いない」という思い込みは危険であり、誤っています。

もちろん少なくない数の「廃棄物処理法に関してもプロフェッショナル」な業者は存在しますが、
「手抜きだけのプロフェッショナル」という、企業としては取引したくない相手が実在していますので、排出事業者自身が委託基準を理解しておくことは非常に重要なのです。

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