廃棄物処理業における法務知識の重要性
先週7月29日(金)は、顧問先処理企業で、営業担当者向け法務研修を行いました。
株式上場をしている企業の場合、大体は「法務部」を設置し、そこで契約書の内容をチェックしているわけですが、
産業廃棄物処理委託契約の場合、法務部が契約書の審査に関与しているという事例を、
個人的には聞いたことがありません。
多くの企業では、産業廃棄物処理委託契約を
「法務部の審査不要の継続的な少額取引案件」と定義しているのかもしれません。
または、法務部が審査しようにも、廃棄物処理法の内容を理解していないため、審査ができないのかもしれません。
東証一部上場企業の産業廃棄物処理委託契約書を多数みてきましたが、
完璧に法定記載事項が網羅されている契約書の数がどれくらいだったかというと・・・
実は「皆無」です。
「委託料金」や「産業廃棄物の種類」など、未記載だと大変大きなリスクがあるミスが多数見受けられます。
排出事業者が違法な契約をしようとしているのに、
プロである処理業者はあえて間違いを指摘しないのでしょうか?
もちろん全部の処理企業がそうではありませんが、
大部分の処理企業は、廃棄物処理のプロであるにもかかわらず、排出事業者の間違いに気づいていないことがほとんどです。
ですから、「違法性を知りつつ黙認する」のではなく、「違法とは知らずに契約をしている」というのが正確になります。
「違法とは知らずに契約をしている」わけなので、「越後屋 おぬしも悪よのお~」というような悪意はありませんが、
法律の知・不知とは関係なく、違法な契約のつけはいずれ払わされることになります。
「廃棄物処理法が難しすぎるので、いちいち読みこなす時間が無い」という言い訳が認められる時代ではありません。
「法律の内容を知らずに違反をした」場合でも、「違反をした」という事実自体が変わるわけではなく、
「知らなかった」ことで罪が免責されるわけではありません。
また、このような理念的な理由以上に重要なのは、
廃棄物処理業は、日本国内でも有数の厳しい欠格要件で規制されている産業であり、
役員の個人的な刑事罰が会社全体に波及して、企業生命自体が抹消されるという環境の中にあります。
金融業や証券業の場合も、業法の規制が厳しいことはよく知られていますが、
彼らの免責事項の証拠として、預金者などが膨大な書類を書かされることに、預金者自身も異を唱えません。
しかし、産業廃棄物処理委託契約の場合はどうでしょうか?
マニフェスト1通を用意するだけで、ブーブーと不満を漏らす排出事業者が多いのが現実ですし、
それを異常と思う処理企業もほとんどありません。
もっとも、委託契約などの作成は、「委託」基準ですので、
預金の場合とは異なり、廃棄物処理企業ではなく、「排出事業者」を規制するものです。
そのため、廃棄物処理企業自体が、委託契約書の内容に神経を使う必要性は少ないと言えなくもないですが、顧客が間違った道を歩もうとしているのを、顧客からお金をもらっている処理業者がブロックしてあげるべきではないでしょうか。
「金さえ払ってくれたら、後は顧客がどうなろうが知らん」という処理企業と
「お客様のリスクを考えると、委託契約書の記載はこのようにした方がベターですよ」と提案してくれる処理企業
あなたが排出事業者の担当なら、どちらの処理企業と付き合いたいと思うでしょうか?
「安い業者に横から仕事を取られる」とか
「廃棄物ではなく有価物として買い取ってくれという排出事業者ばかりだ」という愚痴を言う前に、
処理業者自身の足元には、処理業者がやるべきことがたくさん眠っています。
上記のような考え方に基づき、廃棄物処理企業や排出事業者が知っておいた方が良い点を、「週刊循環経済新聞」にて、8月8日から連載します。
関心がある方は、循環経済新聞を是非ご覧ください。
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2011年8月2日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:基礎知識