市町村が合わせ産業廃棄物処理した場合の補助金返還の要否

9月13日にアップした、「合わせ産業廃棄物処理」の意味 に関し、ブログ読者の方から、興味深いコメントをいただきました。

すなわち
「市町村が産業廃棄物を合わせ処理する場合、国庫補助を受けた財産の目的外使用に当たるため、補助金の返還をしなければならない」というご指摘です。

このご指摘は、国庫補助金で整備する事業の基本原則に関するもので、そのとおりです。

恥ずかしながら、私は公務員時代に、このような国庫補助事業に携わる仕事をしたことがないため、
実務ではなく、知識としてしか補助金事業を知りません。

どちらかというと、10年間の勤務期間の中では、広報や規制など、現場に即した仕事ばかりをしていました。

そのような個人的背景があるため、前回の記事を執筆した際、補助金の返還要否については、まったく眼中にありませんでした。

言われてみると、「確かにそのとおり」と思う一方で、
「本当にそのとおりの運用しかできないのであれば、廃棄物処理法第11条第2項の規定が死文化することになるので、国の所業は本末転倒ではないか?」という疑問も湧きました。

そこで、環境省の補助事業に関する通知を、環境省HPで色々と調べてみると、
平成20年10月17日付環廃対発第081017003号 「廃棄物処理施設の財産処分について」という課長通知が出されており、

その中の3p目に、産業廃棄物を一般廃棄物処理施設で合わせ処理する場合、国の承認さえ受ければ、国庫補助金を返還しなくても良い、すなわち自由に合わせ産廃処理できる、
ということが書かれていました。

3 環境大臣が個別に認める財産処分について
 産業廃棄物を一般廃棄物処理施設で処理する際の財産処分(目的外使用)については、承認基準「第2 承認の手続」で定める別紙様式1により申請するものとし、承認基準「第3 国庫納付に関する承認の基準」の、国庫納付に関する条件を付さずに承認するものと同様の取扱とする。
 ただし、産業廃棄物の適正処理の推進に資するため、市町村が一般廃棄物に加え新たに産業廃棄物(上記2(1)(筆者注:災害廃棄物のこと)に該当するものを除く。)を一般廃棄物処理施設で処理する場合であって、次に掲げる全ての要件を満たすものとする。
 なお、承認申請の手続きに当たっては、本通知の様式3を添付することとする。
 ア当該地域において、対象とする産業廃棄物の適正処理が確保できない又はそのおそれがあること。
 イ併せて処理する産業廃棄物は、一般廃棄物と同様の性状であって、一般廃棄物処理施設において処理できるものであること。
 ウ受け入れる産業廃棄物処理量は、一般廃棄物処理量を超えないこと。
 エ産業廃棄物を受け入れる際には、排出事業者責任等を勘案し処理費用として料金を徴収するなど、市町村財政に負担をかけないこと。
 オ産業廃棄物を受け入れる期間は必要最小限のものとし、あらかじめその期間を明示するとともに、受入完了後は速やかに廃棄物処理施設財産処分完了報告書(様式4)を提出すること。

※承認基準というのは、平成20年5月15日付環企発第0 8 0 5 1 5 0 0 6 号「環境省所管の補助金等で取得した財産処分承認基準の整備について」というものですので、上記引用部分にリンクを貼っています。

行政関係者しか参照しない通知であるためか、環境省HPのすごくわかりにくい部分でしか公開されていない通知です(苦笑)。

国が色々と条件を付けすぎという感はいたしますが、税金が出所の補助金である以上、本来の目的とは異なる使い方をしてほしくないという事情を理解する必要があります。

逆に言うと、平成20年以前は、「災害廃棄物」や「鳥インフルエンザの患畜」の処理という緊急事態への対処以外には、目的外使用を認めていなかった
ということにもなります。

産業廃棄物を合わせ処理した場合、市町村に対し有無を言わせず補助金返還請求
という建前になっていたわけですね。

ただし、廃棄物処理法制定当初から合わせ産業廃棄物処理の規定は存在していましたし、
全国の方々の市町村で合わせ産廃処理を昭和時代から公然と行われていました。

旧厚生省も、現環境省も、市町村が細々とやる合わせ産廃処理を問題視することなく、補助金の返還請求などを求めてこなかったのではないかと思います。

「細々ってどのくらいの量なんだ?」という問題がありますが、
このあたりの経緯や実情については、現役の地方公務員の方の方が詳しいと思いますので、知っている方がいらっしゃいましたら、是非情報提供をよろしくお願いします!

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コメント

  1. 真茶香 より:

     尾上様

     早速に調べていただきありがとうございました。
     小生、退職公務員で、専ら産業廃棄物行政を担当してきたこともあり、尾上さんと同様国庫補助の一般論は知っていても、在職中に施行された件の通知には気がつきませんでした。
     ところで、通知の「第2 財産処分の特例」の「3 環境大臣が個別に認める財産処分について」を見ると、オに

    > 産業廃棄物を受け入れる期間は必要最小限のものとし、あらかじめその期間を明示するとともに、受入完了後は速やかに廃棄物処理施設財産処分完了報告書(様式4)を提出すること。

    という記述があるため実際には使えない条文で、堂々とこの通知を根拠に財産処分の手続きを行ってやる自治体は皆無、即ち、実態は従前どおり細々と、料金は取っても契約は結ばずマニフェストも使わずに(即ち事業系一般廃棄物として)処理することになるのではないでしょうか?

  2. 尾上雅典 より:

    真茶香 様 コメントありがとうございました。

    やはり、実務的には堂々とあわせ産業廃棄物処理をやりにくい ということになりそうですね。

    最終処分場の場合は、埋立期間や受け入れ物の選別を厳重に行えるため、堂々と承認を受けることができるかもしれませんが
    焼却施設の場合は、面倒な承認手続きを経るよりも、うやむやで処理した方が楽 となりそうです。

    このあたり、私の単なる想像でしかありませんので、現役地方自治体担当者の方からの情報提供をお待ちしております。


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