(第2回)3.21ではなく321通知らしい

予定どおり、321通知に関する連載を始めます。

まずは、321通知そのものを全文掲載します。

と、その前に、環境省のサイトで通知文を検索したところ、環境省は「3.21」ではなく、「321」と呼称しているようですので、今後は非常に不本意ながら、わかりやすさを優先し、「321通知」と当サイトでも一応呼びます。

ちなみに、超個人的な感想でしかありませんが、321通知という呼称が嫌いな理由は以下のとおりたくさんあります。

  1. 日付だけでは通知の内容がまったくわからない
  2. 日付だけで文書の狙いを説明できるという夜郎自大感がスゴイ
  3. エラそう
  4. 誰のために出した通知なのか、行政としての公平中立性が疑わしい
  5. 731部隊を連想してしまう
    etc

平成29年3月21日付環廃対発第1703212号、環廃産発第1703211号 「廃棄物処理に関する排出事業者責任の徹底について」

環廃対発第1703212号
環廃産発第1703211 号
平成29年3月21日

各都道府県・政令市廃棄物処理担当部(局)長殿

環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課長
産業廃棄物課長

廃棄物処理に関する排出事業者責任の徹底について(通知)

 廃棄物処理行政の推進については、かねてより種々御尽力、御協力いただいているところである。
 事業活動に伴って排出される廃棄物については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)第3条第1項において「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」とする排出事業者責任が規定されており、これまで、委託基準・再委託基準の順次強化、産業廃棄物管理票の全面義務化等により強化されてきたところである。
 しかし、平成 28 年1月、建設廃棄物について、下請け業者に処理の委託を無責任に繰り返し、最終的に処理能力の低い無許可解体業者によって不法投棄がなされた不適正処理事案が判明するとともに、同月、食品製造業者及び食品販売事業者が廃棄物処分業者に処分委託をした食品廃棄物が、当該処分業者により不適正に転売され、複数の事業者を介し、食品として流通するという事案が判明したところであり、不適正処理事案は後を絶たない。特に、食品廃棄物の不適正転売事案は食品に対する消費者の信頼を揺るがせた悪質かつ重大な事件である。
 食品廃棄物の不適正転売事案を受け、平成28年3月に取りまとめられた「食品廃棄物の不適正な転売事案の再発防止のための対応について(廃棄物・リサイクル関係)」(平成28年3月14日環境省)において、食品廃棄物の転売防止対策の強化に取り組むこととされた。また、排出事業者に係る対策としての食品廃棄物の不適正な転売防止対策の強化に関して、平成28年9月、中央環境審議会において「食品循環資源の再生利用等の促進に関する食品関連事業者の判断の基準となるべき事項の改定について(答申)」が取りまとめられた。同答申では、排出事業者責任について、食品関連事業者(食品製造業者、食品卸売業者、食品小売業者及び外食事業者)による食品廃棄物等の不適正な転売防止の取組の具体的方向性に関連して、「食品関連事業者が、自らの事業に伴って排出された食品廃棄物等の処理について最後まで責任を負うとの排出事業者責任を重く再認識する」ことが必要であり、「排出事業者の責任において主体的に行うべき適正な処理業者の選定、再生利用の実施状況の把握・管理、処理業者に支払う料金の適正性の確認等の廃棄物処理の根幹的業務が地方公共団体の規制権限の及ばない(中略)第三者に任せきりにされることにより、排出事業者としての意識・認識や排出事業者と処理業者との直接の関係性が希薄になり、排出事業者の責任が果たされなくなること等が危惧」され、「そもそも廃棄物の処理には、不適正な処理をすることによって利益を得る一方で、重大な環境汚染を引き起こすという構造的特性がある。このため、排出事業者も、その事業活動に伴って生じた廃棄物の処理を委託する場合であっても、再生利用業者との信頼関係を基礎に、廃棄物処理の根幹的業務を自ら実施していく体制を整備する必要がある」等が指摘されている。
 また、平成29年2月の中央環境審議会の「廃棄物処理制度の見直しの方向性(意見具申)」においても、「排出事業者責任の重要性がすべての事業者に適切に認識されることが重要」であり、「排出事業者が、自らの責任で主体的に行うべき適正な処理事業者の選定や処理料金の確認・支払い等の根幹的業務を、規制権限の及ばない第三者に委ねることにより、排出事業者としての意識が希薄化し、適正処理の確保に支障を来すことのないよう、都道府県、市町村、排出事業者等に対して、排出事業者の責任の徹底について改めて周知を図るべき」とされたところである。
 ついては、貴職におかれては、排出事業者責任の徹底に係る下記事項について、貴管下の排出事業者及び廃棄物処理業者への周知徹底及び適切な指導を行うとともに、貴管下市町村に対し、当該市町村管下の排出事業者及び廃棄物処理業者への周知徹底及び適切な指導を行うよう周知をお願いしたい。

1.排出事業者責任とその重要性について
 廃棄物処理法第3条において、事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならず、また、当該廃棄物の再生利用等を行うことによりその減量に努めなければならないとする排出事業者責任を定めている。排出事業者は、その廃棄物を適正に処理しなければならないという重要な責任を有しており、その責任は、その廃棄物の処理を他人に委託すれば終了するものではない。
 排出事業者は、その廃棄物について自ら処理をするか、自ら行わず他人に委託する場合には、産業廃棄物であれば産業廃棄物処理業者等、一般廃棄物であれば一般廃棄物処理業者等、廃棄物処理法において他者の廃棄物を適正に処理することができると認められている者に委託しなければならないなど、 廃棄物処理法における排出事業者責任に関する各規定の遵守について改めて認識する必要がある。
 以上の点について、排出事業者及び廃棄物処理業者への周知徹底及び指導方お願いしたい。

2.規制権限の及ばない第三者について
 排出事業者による処理業者への廃棄物処理委託に際し、地方公共団体(一般廃棄物にあっては市町村、産業廃棄物にあっては都道府県又は政令市)の規制権限の及ばない第三者が排出事業者と処理業者との間の契約に介在し、あっせん、仲介、代理等の行為(以下「第三者によるあっせん等」という。)を行う事例が見受けられる。
 一般廃棄物については、平成11年に通知「一般廃棄物の適正な処理の確保について」(平成11年8月30日付け衛環第72号厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課長通知)を発出し、第三者によるあっせん等は、一般廃棄物の処理責任が不明確になる等の理由から、市町村の処理責任の下での適正な処理の確保に支障を生じさせるおそれがある旨周知してきたところである。
 1.で述べたように、排出事業者は、排出事業者責任を有しており、排出事業者が廃棄物の処理を他人に委託する場合は、廃棄物処理法に規定する処理業者に委託しなければならないなど、排出事業者の義務を遵守しなければならない。
 その場合、排出事業者としての責任を果たすため、排出事業者は、委託する処理業者を自らの責任で決定すべきものであり、また、処理業者との間の委託契約に際して、処理委託の根幹的内容(委託する廃棄物の種類・数量、委託者が受託者に支払う料金、委託契約の有効期間等)は、排出事業者と処理業者の間で決定するものである。排出事業者は、排出事業者としての自らの責任を果たす観点から、これらの決定を第三者に委ねるべきではない。
 これらの内容の決定を第三者に委ねることにより、排出事業者責任の重要性に対する認識や排出事業者と処理業者との直接の関係性が希薄になるのみならず、あっせん等を行った第三者に対する仲介料等が発生し、処理業者に適正な処理費用が支払われなくなるといった状況が生じ、委託基準違反や処理基準違反、ひいては不法投棄等の不適正処理につながるおそれがある。
 以上のように、廃棄物処理における排出事業者の責任は極めて重いものであり、排出事業者においては、上記の点を十分認識した上で、自らの事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理することが強く求められる。
 以上の点について、排出事業者及び廃棄物処理業者への周知徹底及び指導方お願いしたい。

以上が、321通知(笑)の全文となります。

「責任」とか「認識」という重要な日本語が非常に気軽に散りばめられているため、難解な印象を受けるかもしれませんが、実のところは“見かけ倒し”で、誰もが知っている内容をもっともらしく繰り返しているだけの空虚な修辞です。

そう思う根拠は次回の記事で。

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コメント

  1. セイトン より:

    元自治体職員です。
    2.規制権限の及ばない第三者について、ご見解を伺いたく投稿させていただきました。
    14条第15項に受託の禁止を謳っていると思います。
    なので、産廃については、排出者と許可業者以外の者がその処理に携わる場合、14条15項違反で規制されると考えておりました。しかし、環境省が自ら「規制の及ばない第三者」が存在すると明記しております。
    となると、14条第15項違反に該当するケース、しないケースは、どのように線引きするのでしょうか?
    (最も、本通知については、契約する収運業者が処分業者を決定している実態を無視した実効性のない物であると認識しております。)

  2. 尾上雅典 より:

    セイトン様 コメントいただき、ありがとうございました。

    廃棄物処理法第14条第15項のご指摘

    産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者以外の者は、産業廃棄物の収集又は運搬を、産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者以外の者は、産業廃棄物の処分を、それぞれ受託してはならない。

    私もセイトン様とまったく同じ解釈で、「無許可受託」が禁止された経緯からも、「規制権限が及ばない第三者」は理念的に存在し得ないと考えております。

    「規制権限の及ばない」という恥ずかしい表現は、一日も早く公的文書から撤廃していただきたいと思っております。


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