行政代執行は魔法の杖ではない

12月6日付の読売新聞中部版に掲載された記事です。
YOMIURI ONLINE 産廃 代執行130億円未回収

 不法投棄の産業廃棄物を投棄した業者に代わって自治体や国が撤去する「行政代執行」で、東海3県の未回収費用が総額約130億円に上ることが、読売新聞の調査でわかった。廃棄物処理法が改正された1998年以降、東海3県では12か所で行政代執行による撤去が行われたり、続けられたりしているが、業者はいずれも経営破綻するなどして、回収のめどは立っていない。

 3県の最高額は、産廃処理会社「善商」が岐阜市椿洞の山林に不法投棄した産廃の撤去費用で、99億9000万円。市は2008~12年度に約40万立方メートルの撤去を計画しているが、同社や経営者らから徴収できたのは施設などの公売分を含め、今年10月末までで約8400万円にとどまる。

 同市産業廃棄物特別対策課は「全額を請求する方針は今後も変わらないが、会社が休眠状態になっているうえ資産も残っていない。これ以上の回収は厳しいのでは」と頭を抱える。

廃棄物処理法の改正要因ともなった、悪名高い善商不法投棄事件ですが、約100億円程度の撤去費用を行政などが負担することになりそうです。

肝心の不法投棄実行者からは、約8千万円しか回収できておりませんが、これでもよく回収できた方です。

不法投棄はアンダーグラウンドの世界なので、正規の処理費用の5割以下で受けることが多いため、それほど儲からないのが事実です。

「不法投棄実行者がしこたま財産を溜め込み、悠々自適の生活を送っている」というのは、少なくとも、10年前からは不可能な状態です。

それなら、「儲からないのになぜやるの?」と思ってしまいますが、不法投棄は麻薬のようなもので、一度それに手を染めてしまうと、変な話ですが、口コミで広がった客の依頼(?)を断りにくくなります。

他人の頼みを聞くうちに、「他人の役に立っている」という、間違った自己肥大感が育つのかもしれません。

いずれにせよ、不法投棄は「実行者悪し」「行政悪し」「依頼者悪し」という、誰も幸せにならない存在です。

この記事にあるとおり、「行政に撤去させれば良い」という単純な話ではありません。

行政による撤去費用の全額は、市民や企業が支払った税金なのですから。

無法者の尻拭いをするために、喜んで税金を払う人はいません。

だからこそ、このような大事になる前に、行政には不法投棄の芽を未然に摘むことが不可欠となります。

しかしながら、少し恐ろしい話ですが、行政の現場対応能力は、ここ数年で大幅に劣化し、その動きは今後も止まりそうもありません。

色々と弊害があったのも事実ですが、「団塊世代の存在は大きかった」と、どの自治体も振り返っていることと思います。

2010年の廃棄物処理法改正では、行政に「報告徴収」や「立入検査」の対象を増やす改正が行われましたが、肝心のそれを使いこなすべき行政の力が落ちている状況では、不法投棄問題が無くなることもなさそうです。

机の上で廃棄物処理法とにらめっこするのではなく、一人でも多くの行政担当官に、現場に出て「現場対応力」を身につけていただくことを望んでいます。

一声かけてくだされば、不法投棄への効果的な対処法をアドバイス、というより情報共有したいのですが、お役所のプライドからか、どの自治体も話しにのってくれません(苦笑)。

でも、諦めずに待っています(笑)。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ