群馬県、処理施設間の距離で立地規制を検討中

指導要綱等で、医療機関や教育機関からの近さで産業廃棄物処理施設の立地規制をしている自治体はよく見ますが、既設の廃棄物処理施設との距離で立地規制をするというのは珍しいのではないかと思います。

上毛新聞 産廃施設の立地制限 県がガイドライン より記事を転載します。

 産業廃棄物処理施設の過度な集中を防ぐため、県の山口栄一環境森林部長は5日の県議会一般質問で、本年度中に産廃処理施設の適正配置に向けたガイドラインを作成することを明らかにした。新設する場合、他の産廃処理施設から一定の距離を置かなければ建設できないよう規定する。法的拘束力はないが、設置を希望する事業者との事前協議で行政指導する際の基準にする方針で、来年4月の適用を目指す。県と同様に、産業廃棄物処理業の許可権限を持つ中核市の前橋市、高崎市にもガイドラインの作成を働き掛ける。

 策定に際してパブリックコメントを実施、県民から意見を募った上で、距離の基準を定める。栃木県は産廃の最終処分場について、施設の半径1キロ以内に新たな施設を造れないよう指導要綱を定めており、県は他の先進自治体の取り組みも参考にする。ガイドラインの新設対象を産業廃棄物の最終処分場だけでなく、中間処理施設にまで広げるか、一般廃棄物処理施設も加えるかどうかについても今後、検討する。

 既に事前協議に入っている計画中の施設は対象外とし、ガイドラインの適用後、新たに建設を希望する事業者を対象とする予定。

 法的拘束力がないため、県はガイドラインを守らない申請があった場合、「廃棄物処理法に基づき審査を行い、基準に適合していれば許可しなければならない」と説明する。だが、事前協議をせずに申請してきた事業者は過去に1件しかなく、実質的な規制効果は高いとみている。

 県内では廃棄物処理施設が集中している地域がある。高崎市と富岡市、安中市の境界付近は半径3キロ内に、産廃処理施設と一般廃棄物処理施設が合わせて8施設あり、さらに3施設の建設が予定されている。

 県は産業廃棄物が県内で年間380万トン(2008年度)発生している現状を踏まえ、「産廃施設の必要性は認識している。ただ、過度な集中は避けた方がいい」と、ガイドラインの趣旨を説明している。

既設の施設からの距離で立地や営業規制を行うという手法を見ると、銭湯や薬局の立地規制に関する判例を思い出します。

大雑把に結論のみを書くと、既存施設との距離に基づく、銭湯の立地規制は合憲、薬局の立地規制は違憲という判例があります。

今回の群馬県の規制趣旨は、処理施設間の距離を適正に保つことで
「県土の環境保全を図る」ためなのか、それとも、
「業者の経営基盤を確保し、優良事業者を育成する」ためなのでしょうか?

具体的に報道では触れられていませんが、おそらくは前者の理由ではないかと思います。

「経済的自由の追求」という観点で本件を考察をすると、法学的には面白いと思うのですが、当ブログの趣旨とは若干異なりますので、残念ながらこれ以上論じないこととします。

個人的に若干の違和感があったのは、
「施設間の距離が近接することと、環境汚染が発生するかどうかは関係ないのではないか」ということです。

むしろ、環境汚染をいち早く見つけるためには、処理施設が近接して立地されている方が監視しやすいと思います。

本当の狙いは?

こうして考えると、今回の群馬県の方針表明は、「施設が集中している地域への配慮」という意味合いが大きいのかもしれません。

自分の住んでいる地域に、廃棄物処理施設が集中設置されることを喜ぶ人はいませんので、その配慮の必要性も理解できます。

ただし、このような悩みに対し、単純に立地規制だけで対処するのはそれほど効果がありません。

群馬県がコメントしているように、「単なる指導要綱であるため、法的拘束力がない」からです。

より現実的に地域の不安を解決していくためには、処理施設の景観配慮設計や情報公開などを徹底することが重要ではないかと考えています。

「そんなことは行政の仕事ではない」という批判があるかもしれませんが、
スイスの廃棄物処理状況 で取り上げたように、迷惑施設だからこそ、周囲の景観に溶け込ませる配慮が必要です。

そのような努力を続けることで、廃棄物処理企業の信頼性が向上し、従業員のやる気も引き出せるようになります。

行政当局と処理企業が活発に意見交換をし、群馬県発の景観スタンダードを構築し、全国に普及してくれれば・・・
と一人夢想してしまいました(笑)。

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