DOWAハイテック社の委託基準違反は行政指導で決着

利根川水系の浄水場でホルムアルデヒドを発生させた問題は、
ヘキサメチレンテトラミンの排出元であるDOWAハイテック社に対し、埼玉県から適正な処理委託をするように求める“行政指導”で決着しました。

テレビ朝日 利根川水系“ホルムアルデヒド問題”で行政指導

 利根川水系の浄水場から国の基準を超えるホルムアルデヒドが検出された問題で、埼玉県は、廃液を処理する際の手続きに問題があったとして、化学メーカーを行政指導しました。

 原因物質を含む廃液の処理は、本庄市の化学メーカー「DOWAハイテック」から群馬県高崎市の産業廃棄物処理業者に委託されていました。埼玉県は、DOWA社が委託契約する際、原因物質が含まれていると知らせなかったため、十分に処理されずに川に放出されたとされる調査結果を公表しました。しかし、原因物質は法規制の対象外で、法的責任には問えないとして、DOWA社に対して再発防止を求める行政指導を行いました。県は、原因物質に対する法規制を設けるよう国に求める方針です。

・取水制限に伴う経済的損失を別とすれば、幸いにも被害者が発生しなかった
・ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液の処理委託方法に過失があったが、悪意はなかった
という実質的な理由で行政指導に止めた、というのであれば理解したところですが、

「原因物質は法規制の対象外で、法的責任には問えない」という説明には賛同できません。

確かに、
廃棄物処理法では、ヘキサメチレンテトラミンを個別に開示する義務が規定されていませんし、
水質汚濁防止法でも、規制がされていません。

この部分に関する説明はそのとおりです。

しかし、
廃棄物処理法の委託基準(法第12条第6項、施行令第6条の2)では、「産業廃棄物を取り扱う際に注意するべき事項」を契約書に明記するか、WDS、あるいはMSDSなどで情報提供する義務が定められています。

この情報提供義務は、告知するべき個別の化学物質が限定列挙されているわけではないため、少なくとも、排出事業者(委託者)が危険性を認識している化学物質に関しては、処理委託の契約締結時に処理業者に情報提供する方法を定めておかねばなりません。

おそらく、“意図的”だと思いますが、6月7日の埼玉県の会見では、委託基準に関する詳細な解説を省略しています。

DOWAハイテック社が9年前にも同様の水質事故を起こしたことを、いち早く公表したのは埼玉県ですので、
現場の認識としては、「DOWAハイテック社は有害という事実を知っていた以上、委託基準違反に問える」というものだったと思いますが、結果的には行政指導で決着しました。

前述したように、行政指導で決着させること自体に異論はありませんが、もう少し法律に抵触する部分を詳細に説明していただきたかったと残念に思います。

とはいえ、これで問題に一つの区切りがついたわけですから、
廃棄物処理業界のリーディングカンパニーであるDOWA社には、二度と同じ事故を発生させないようにしていただきたいものです。

DOWA社に贈る言葉は

「仏の顔も三度まで」

それとも、「二度あることは三度ある」の方が適切でしょうか(笑)。

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