自社敷地の仮置きが不法投棄と認定される可能性

写真付きで興味深い事件報道がありました。
産経ニュース 新築なのに…ごみ屋敷? 引き渡しトラブルで大量不法投棄 神戸・長田

新築の民家のガレージに大量のごみを不法投棄したとして、兵庫県警生活環境課と長田署は26日、廃棄物処理法違反容疑で、兵庫県西宮市の建設会社社長(62)を逮捕した。容疑者はこの民家の建築工事を請け負ったが、民家の引き渡しをめぐって発注者らと長年にわたりトラブルになっていた。「(民家の)管理権は自分にあり、一時的に置いていただけ」と容疑を否認しているという。

民家の土地と建物の所有者が誰であったかはわかりませんので、容疑者の建設会社社長の主張が事実かどうかはわかりません。

ただし、当ブログは民法を解説するブログではありませんので、容疑者の主張が事実であるという前提で、自社敷地に廃棄物を一時(?)保管する行為が不法投棄とみなされる可能性があるのかどうかを考えたいと思います。

一般的な感覚としては、「自社敷地に置いてある以上、単なる保管で、不法投棄には該当しないのではないか」と思われる方が多いと思います。

しかし、自社敷地に堆積させる行為であっても、保管方法や保管期間の長さによっては、不法投棄とみなされる可能性があるのです。

平成18年2月20日最高裁判所第二小法廷決定 という判例があります。

この判例では、アルミニウム再生精錬工場が、汚泥を自社の敷地に埋立てる前提で、敷地内に大量に汚泥を堆積させた行為が、不法投棄と認定されました。

・工場関係者は、本件汚泥等を被告会社の保有する工場敷地内に積み置いただけであり、廃棄物をみだりに捨てたものではない旨主張する。
・しかし、本件各行為は、本件汚泥等を工場敷地内に設けられた本件穴に埋め立てることを前提に、そのわきに野積みしたというものであるところ、その態様、期間等に照らしても、仮置きなどとは認められず、不要物としてその管理を放棄したものというほかはないから、これを本件穴に投入し最終的には覆土するなどして埋め立てることを予定していたとしても、法16条においう「廃棄物を捨て」る行為に当たるというべきである。
・また、産業廃棄物を野積みした本件各行為は、それが被告会社の保有する工場敷地内で行われていたとしても、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図るという法の趣旨に照らし、社会的に許容されるものと見る余地はない
・したがって、本件各行為は、同条が禁止する「みだりに」廃棄物を捨てる行為として同条違反の罪に当たることは明らかであり、これと同旨の原判断は正当である。

論旨が明快で、犯罪の構成要件が具体的に説かれている名判決ですね(笑)。

ちなみに、自社敷地であっても、廃棄物を埋め立てる行為は最終処分に該当しますので、最終処分場の設置許可なしに廃棄物を埋めてしまうと、結局は不法投棄になります。

さて、上記の判例を今回の事件にあてはめて考えてみると、
・廃棄物の大半はガレージに入っているものの、一部歩道部分にまで廃棄物があふれかえっているように見える。
・4年前から、2tトラック30台分の廃棄物を搬入し続ける一方で、搬出された形跡が無かったように見える。
ことから、不法投棄と認定される可能性があると考えられます。

冒頭で書いた、民家の管理権が建設会社にはないと判明すれば、不法投棄と認定される可能性がより高まります。

もっとも、上記の前提は、すべて報道写真を見ただけの推量ですので、事実や実態とは異なっている可能性があります。
そのため、当ブログでは、容疑者の氏名などはあえて削除し、ケーススタディの材料として活用させていただいております。

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