不法投棄対策にはハイテクとローテクのどちらが有効か

最近流行の不法投棄対策として、監視カメラの設置というものがあります。

2013年7月30日 読売新聞 不法投棄防止へ監視カメラ 丹波県民局

 ごみの不法投棄を防ごうと、丹波県民局は、現場で撮影した映像をすぐに送信できる監視カメラの設置を始めた。行政や警察によるパトロールに限界があるためで、県民局では初の導入。24時間態勢で監視し、投棄した人が特定できれば原状回復を求める。

 ソーラーパネルで作動し、通常は10分間に1枚、静止画像を撮影。人や動物などの動きをとらえると、自動的に動画に切り替わる。撮影した映像は携帯電話の回線を通じて、カメラの管理運営会社のサーバーに送信。県民局職員のスマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット型端末にも転送され、現場の状況を把握できる。現場には監視カメラ作動を知らせる看板も設置し、抑止効果を狙う。

 移動式で、今年度中に、不法投棄が頻発している丹波、篠山両市の山間部など約10か所に順次置く。同県民局環境課は「異常があれば職員が即座に現場に急行する。監視カメラの設置を通じ、不法投棄への住民の関心も高めたい」としている。

 山間部の多い丹波地方では、産業廃棄物などの不法投棄が後を絶たない。2011年度、同県民局に通報のあった不法投棄は12件で、県民局では最も多かった。09年6月には、丹波市春日町の土砂埋め立て場に墓石など約970トンを不法投棄したとして、4人が県警に逮捕される事件も起きている。

記事では県民局初とありますが、監視カメラ自体は兵庫県ではもっと前から活用されています。
2002年に、私が所属していた阪神北県民局が初の運用開始だったと記憶しています。

もっとも、当時の記録媒体はビデオテープでしたので、
自動で動画撮影に切り替え、位置情報を携帯端末に送信する高機能な監視カメラとはかけ離れたものです(笑)。

ただし、これだけ高機能な監視カメラであっても、不法投棄が減るかどうかは怪しいものがあります。

アメリカのTVドラマ「24」のように、衛星映像を駆使し、高性能な顔の自動認識ソフトでもない限り、監視カメラで即時に不法投棄実行者を捕まえるのは不可能だからです。

10台も導入するということなので、兵庫県としてもかなり思い切った予算措置をしたものだと感心(?)しました。

行政的には、監視カメラの設置によって、不法投棄対策に取組んでいるというアピールをすることが目的の大部分
だろうと思います。

もしかすると、本気で不法投棄が撲滅できると信じている可能性もありますが、
10年以上の運用実績からも、そんな都市伝説のような可能性を信じていないと思いたいところです。

監視カメラを設置した場所に限定すれば、不法投棄は確かに減ります。
しかし、その減った分は少し離れた別の場所で投棄されることになるので、地域全体で見れば監視カメラで不法投棄を減らせないのです。

費用対効果を考えると、監視カメラはイメージほど良い働きをしないと言えます。

一方、その対極に位置するランニングコストほぼ0円の不法投棄対策があります。

2013年7月25日付 長野県発表 不法投棄防止啓発用「ごみ無し地蔵」を設置します

・今回設置する「ごみ無し地蔵」は、上小管内で発生した松枯れ材(くん蒸処理済のもの)を活用し、管内で木彫りを行う方にボランティアで作成していただいたものです。
・現在、上小管内では長和町に7体、青木村に1体(ごみ去り地蔵)が設置されており、既存の警告・啓発看板の設置に比べて格段に防止効果が高いことから、今後、管内の設置数を順次拡大していきます。

行政が「既存の警告・啓発看板の設置に比べて格段に防止効果が高い」というくらいですから、お地蔵様には半端ではない御利益があります(笑)。

木彫りという手作りのため、一体一体違う味わいがあるのも素敵ですね。
ボランティアで作ってくださる篤志の方のお陰でもあります。

周囲の景観を破壊しないためには、無粋な監視カメラよりも、手作りの地蔵や鳥居の方が望ましいし、
実際に効果を発揮しているわけなので、各地域で競争してより良い地蔵を設置してはどうでしょうか。

もっとも、地蔵や鳥居が置かれた場所で不法投棄は減りますが、地域全体では不法投棄が減らないという点は監視カメラと同様です。

しかし、監視カメラは壊れることもありますし、ランニングコストも掛かる。
そして、何より無粋という大きな欠点があります。

ピンポイントで「この場所には捨ててほしくない」という場所にお地蔵様を設置するのが、ベストプラクティスと言えそうです。

長野県の取組みはまさにベストプラクティス!


※お地蔵様の画像は、長野県上小地方事務所のブログから転載させていただきました。 じょうしょう気流 (上小地方事務所)

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