福井市がため池の廃棄物撤去を開始

公有地に廃棄物が不法投棄された場合に、どのようは法的措置を取っていくことになるかを示す実例です。

※当ブログ関連記事
2012年9月26日記事 撤去費用の負担は誰が行うべきか
2013年5月29日記事 福井市の福井市による福井市のための損害賠償請求
2013年8月5日記事 福井市がため池の不法投棄実行者に損害賠償請求

2013年10月16日 中日新聞 不法投棄廃棄物の撤去始まる 福井市のため池

 福井市下市町のため池に、所有者である市の許可なく大量の土砂や廃棄物が捨てられ、池の一部が埋め立てられた問題で、ため池内の埋め立て物の本格的な撤去作業が十五日、始まった。作業は来年三月末まで行われる。

 市などによるとため池には全体の40%に当たる千七百平方メートルにコンクリート片、金属片など計六千四百トンが埋められたとみられる。この日は市から委託を受けた業者が重機を使って埋め立て物を掘り起こし、トラックに乗せる作業をした。埋め立て物は兵庫県の最終処分場に運ばれる。

 ため池の問題では、市の調査で土壌から国の基準を上回る水銀やヒ素などが検出されたため、市が二〇一三年度一般会計補正予算案に投棄物の撤去費など二億七千万円を計上。市は埋め立てた実行者とされる地元建設会社ら三者を相手取り、約二億七千八百万円の損害賠償訴訟を起こしている。

公有地で起こった不法投棄であるため、行政代執行ではなく、土地所有者による原状回復がまず行われ、それに掛かった費用を損害賠償請求するという手続きになっています。

ため池全体の4割に当たる面積に廃棄物が捨てられていたとのことですが、
廃棄物の撤去費用は1tあたり約4万3千円と、非常に高額なものになりました。

過去記事で触れているとおり、不法投棄実行者の建設会社(下請)は、法人の清算手続き中という報道がありましたので、裁判で勝ったところで、掛かった費用を回収するのは非常に困難と思われます。

福井市は、不法投棄実行者の元請にあたる別の建設会社に対しても損害賠償請求を提起しているようですが、
報道によると、その建設会社は、「埋め立てをした建設業者とは元請け下請けの関係になく、不法埋め立てなどの行為には全く関与していない」と反論しているようですので、この会社からも撤去費用を回収するのは難しいと思われます。

ただし、福井市としては、地元住民から福井簡裁に廃棄物撤去の調停を起こされていますので、
もはや撤去費用を不法投棄実行者から回収できるかどうかよりも、
一日も早く廃棄物を撤去せざるを得ない状況になっています。

土地所有者としての地方自治体の管理責任としては、不法投棄されていないかどうかの定期的なチェックや、不法投棄されないための対策(フェンスの設置など)を行い、
万が一不法投棄をされた場合は、都道府県などに迅速に通報することが、廃棄物処理法で義務づけられています。

公有地を有する地方自治体にとっては、同じような不法投棄がいつ起こるかわかりませんので、今回の事例を教訓として、不法投棄を見つけた際には迅速に対処したいところです。

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