行政代執行の限界

不法投棄された廃棄物は、それを捨てた行為者に撤去させることになりますが、
実際には、誰が捨てたかがわからない場合が多く、またわかったとしても、その行為者に資力が無いことがほとんどであるため、自治体が代わりに撤去(行政代執行)せざるを得なくなります。

2014年10月1日付読売新聞 「産廃撤去 代執行費用回収1件

 不法投棄の産業廃棄物(産廃)を、投棄した業者に代わって県が撤去する行政代執行のうち、業者から費用が完済されているのは、1997年から昨年度までに実施した22件のうち1件にとどまっていることがわかった。未収費用は約7億8000万円に上る。30日も今年度初の代執行があったが、費用回収は困難視されている。主に県外から持ち込まれた廃棄物の処理に、県費が充てられている状況に県は頭を抱えている。

「生活環境の保全」という公益上の必要性があるため、行政代執行はそれが必要とされる時に行う必要があります。

しかし、地方自治体の財源は無尽蔵ではありませんので、高額な行政代執行費用のしわ寄せで、他の事業の縮減につながることもあります。

ごく一部の犯罪者が起こした不始末の後片付けを、無関係な住民及び国民・事業者が支払った税金で肩代わりしているとも言えます。

 ほとんどが周辺都県で排出されたといい、代執行に関係する県職員は「県内で排出されたものではないのに、県費で処理をするのは理不尽だ」と漏らす。

記事は千葉県に関するものですが、
東京都で発生した廃棄物が千葉県に大量に不法投棄されるという構造がずっと変わることなく続いています。

ここ数年間は、日本全体の傾向として大規模な不法投棄の件数と量の双方が減少傾向にありましたが、それでも行政代執行の機会が皆無になったわけではありません。

「撤去費用が高額になる」ことから、廃棄物が大量に堆積、あるいは投棄された時点で、不法投棄犯との勝負は負けと言えます。

不法投棄を抑える側の自治体としては、最初から非常に分が悪い勝負であるため、
「監視パトロールを増やす」「行為者に強力に撤去指導する」といった精神論的な対策だけでは、自治体に勝ち目はありません。

千葉県のような大都市圏と隣接した自治体の場合は、自治体の独自施策だけで不法投棄をシャットアウトするのは困難である以上、そろそろ法制度その他の見直しを行い、不法投棄をシステマチックに抑制していくことが必要ではないかと思います。

これが唯一万能の解決策という便利な道具は存在しませんので、
法制度の改正と、自賠責保険のような保険制度の組み合わせが有効ではないかと考えています。

問題は「廃棄物の撤去費用を誰が負担するか」ですので、
保険金としてあらかじめ委託者や処理業者に費用負担をしてもらい、保険期間中に不法投棄が行われた場合には、保険金から迅速に自治体に撤去費用を支払う
というイメージです。

もっとも、現実問題としては、保険期間中の不法投棄かどうかを立証することが難しいため、自賠責保険のような広がりを最初から持たせることは困難なのは間違いありません。

重要なことは、「不法投棄をした者の逃げ得」としないことですので、
そろそろ種々の施策を組み合わせて、不法投棄対策に取組むべきタイミングではないかと考えています。

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