不法投棄防止に監視カメラは有効か

昨日は、中学生が考えた超ローコスト、かつ費用対効果が高そうな看板の話をご紹介しました。

今日は、奇しくも同じ北海道のニュースですが、比較すると看板よりもコストが掛かる監視カメラの導入事例をご紹介します。

2014年10月11日 WEBみんぽう(苫小牧民報社) 不法投棄一掃へ監視カメラ 林野に2カ所

 苫小牧市は、ごみの不法投棄が目立つ場所に監視カメラを設置し、抑止につなげる取り組みを始めた。人目のつかない林野などに家庭や事業系のごみを捨てる行為は後を絶たず、設置の効果が確認できれば、増設を検討する考え。対策で監視カメラを取り付ける動きは、道や他の自治体にも広がっている。

 市は9月、市内の2カ所にカメラを設置。そばに「監視カメラ作動中」と記した看板を立て、不法投棄は5年以下の懲役、または1000万円以下の罰金に処せられる―との警告文も記載した。設置場所での不法投棄の状況がどう変わるか、今後、効果について詳しく調べる。

 市が確認した2013年度の不法投棄は156件。近年、件数は横ばいで推移しているものの、依然として後を絶たない状況が続いている。市は市民から情報を得る「不法投棄110番」を設けたり、不法投棄の多い場所をパトロールしたりと対策に取り組んでいるが、より抑止効果を狙って監視カメラを取り付けることにした。市環境衛生部は「カメラで見られていることが分かれば、不法投棄しにくいだろう」と話す。

 道も今年4月以降、試行的に胆振管内など道内4管内の道有林の林道にカメラを取り付け、設置区域に警告の看板も掲示した。場所や台数は明らかにしていないが、胆振管内では林道4路線に設置。不法投棄される廃家電などの処理費用は全道で年間平均80万円に上っている中、効果に期待を寄せる。

 カメラは、安全上通行を規制している林道ゲートを破壊し入林する行為を防ぐ狙いもある。9月末には空知管内由仁町でゲートを壊して森林に入り込んだ人がカメラに映り込み、警察に通報した。道の道有林課は「カメラの効果が出たケースとなったが、本当は未然に防止できるのが一番。試行結果を踏まえて、今後増設するかを検討していきたい」と言う。

 室蘭市でも昨年、不法投棄が多い場所に、環境省の貸与を受けたカメラを試行的に設置。同市は「取り付けた場所での不法投棄が無くなり、効果が見られた」とし、今年度も引き続き貸与を受ける考えという。

少々古い小説ですが、アメリカの作家グレッグ・ルッカが書いたシリーズ物に「ボディガード」シリーズがあります。

主人公はタイトルのとおりボディガードなのですが、その主人公が「暗殺者」という作品で

暗殺をしようと決めた人間から警護対象者を永遠に守り続けることはできない。ボディガードもいつかは疲れ、警護に緩みが生じることになるが、暗殺者はその瞬間を気長に待つだけで良いからだ

という趣旨の独白をしています。

記事を読んでいてふと思ったのが、監視カメラによる不法投棄対策とボディガードの独白には共通する部分があるということです。

すなわち、「最初は抑止効果になったとしても、すぐに抜け道を見つけられてしまう」という点です。

監視カメラは人間とは違って疲れませんが、設置された場所から動けないという弱点があります。

そのため、監視カメラが設置されていない場所に不法投棄されたり、ひどいケースでは監視カメラを破壊された上で不法投棄が行われることもあります。

通常は夜中に不法投棄されることが大半ですから、わざわざ林道に廃棄物を運び込んだ人が、監視カメラを見た瞬間に改心して不法投棄を諦める、ということは期待できそうもありません。

そもそも、北海道のように面積が広いエリアにおいては、不法投棄される可能性の高い場所のすべてに監視カメラを設置することは不可能です。

本物のカメラではなく、ダミーのカメラを設置するという方法もありますが、
プロ(?)の手にかかると、一瞬でダミーと本物の違いを見分けられてしまうそうなので、やはり効果は限定的です。

人がある程度出入りする場所の場合は、それだけ犯罪の発生する確率も高くなるため、監視カメラを活用する場面が増えることにつながりますが、林道や山中の場合は、不法投棄される確率が「野生動物がカメラの前を通過するのを待つ」くらいの低いものとなります。

その結果、監視カメラの大半はただ単に置いているだけの代物となり、活用されることなく老朽化していきます。
(もちろん、活用されない方が社会的には望ましいのですが)

自治体が不法投棄対策として監視カメラを導入し始めてから15年余り経ちましたが、
「監視カメラの設置で不法投棄が激減した」という発表を聞いたことはありません。

15年間で全国で100を超える導入事例があっても抑止効果には疑問符を付けざるを得ない状態です。

なにより、山中に設置された監視カメラは無粋です(苦笑)。

ユーモラスな外観ながらも、行政が「効果がある」とお墨付きを出している長野県の「ごみ無し地蔵」の方がよほど霊験あらたかです。


※お地蔵様の画像は、長野県上小地方事務所のブログから転載させていただきました。 じょうしょう気流 (上小地方事務所)

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