紛失と虚偽報告のどちらが重罪か
当ブログ2014年7月22日付記事 「岡山市教育委員会がPCB廃棄物の保管状況を虚偽報告」の続報です。
2014年11月5日付 山陽新聞 岡山市教委2職員を書類送検 PCB紛失虚偽報告容疑で西署
有害物質のポリ塩化ビフェニール(PCB)3・8リットルを含む高圧コンデンサー1台が瀬戸中学校(岡山市東区瀬戸町瀬戸)から無くなり、市教委の男性職員2人が虚偽報告などをしていた問題で、岡山西署が10月中旬、2人をPCB特別措置法違反容疑で書類送検していたことが4日、関係者への取材で分かった。「事の重大さを思うと怖くなった」などと供述しているという。
同法では、PCBを含む機器などを紛失した場合の届け出をはじめ、廃品の管理状況を年1回、都道府県や政令指定都市へ報告するよう義務付けている。
関係者によると、市教委学校施設課の50代職員は紛失に気付いていたのに上司に伝えなかった疑い。40代職員は経緯を知りながら、2009~13年度、同市産業廃棄物課に別の施設で保管していると偽って報告した疑い。
市教委の発表などでは、高圧コンデンサーは08年まで同校電気室にあったが、同7~8月に行った設備改修工事で無くなり、他の廃棄物と一緒に処分したとみられる。50代職員は工事監督を担当していた。
2人が6月、上司に申し出て発覚。市は岡山西署に同法違反に当たると申告していた。
事件自体の再解説は不要と思いますが、当事者ではない我々にとっても教訓となり得るものとして、
「事の重大さを思うと怖くなった」 という供述に注目したいと思います。
あってはならないことですが、PCB廃棄物を不適切に処理委託し、そのまま紛失してしまうという事件がちょくちょく起こっています。
行政機関もその例外ではなく、岡山市教育委員会以外も多数同様の犯罪を起こしています。
そうしたPCB廃棄物の不適正処理を行ったすべての関係者が書類送検されたかどうかはわかりませんが、おそらく書類送検されるケースは稀ではないかと思われます。
今回は岡山市が警察に犯罪の事実を自ら申告している点が、他の事例と大きく異なるところとなっています。
もしも、岡山市教育委員会のケースで「保管場所の虚偽報告」が無く、「過去の不適正処理が急に発覚した」だけであれば、他の事例と同様に警察沙汰になることはなかったかもしれません。
岡山市教育委員会のケースでは、本当は紛失してしまったPCB廃棄物をずっと保管し続けていると虚偽の報告をしていたため、「譲渡しの制限違反」と「虚偽報告」の2つの犯罪を構成しています。
特に「虚偽報告」は善意無過失で行われたわけではなく、明らかに犯罪を隠ぺいするために行われたものであるため、警察としては書類送検せざるを得なかったものと思われます。
PCB特措法の罰則としては、
適切な施設と許可を持たない者にPCB廃棄物を渡すと、第24条の「PCB廃棄物の譲渡しの制限違反」で「3年以下の懲役若しくは1万円以下の罰金、又はこれの併科」の適用対象となります。
また、PCB廃棄物の保管および処分状況に関して虚偽の届出をした場合は、第25条の「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」の適用対象となります。
行為者の「事の重大さを思うと怖くなった」という発言に戻りますが、
罰則としては「譲渡しの制限違反=不適正処理」の方が量刑が重いため、それを隠ぺいしたくなる気持ちもわからなくはありません。
しかし、皮肉なことですが、不適正処理の事実を隠ぺいせずにそれを把握した時点で公表をしていたとしたら、不適正処理を行ったという事実は変わらないにもかかわらず、書類送検されることはなかったかもしれません。
「一時の恐怖で我を忘れて過去の不始末を隠ぺいする方向に走ると、後々大きなしっぺ返しをくらうことになる」
という大変ありがたい教訓になった事件でありました。
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2014年11月7日 | コメント/トラックバック(2) | トラックバックURL |
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コメント
はじめまして。
昭和47年以降にPCB入りの電気トランスを
製造販売した業者は罰せられないのでしょうか?
業者は微量であれど否定できないから
検査機関に送れと言われました。
製造販売した後、ノーメンテであることが
立証された場合は法律を破って製造したことになり
業者は罰せられますか?
コメントいただき、ありがとうございました。
たしかに、廃棄物処理法以外でそのような罰則を定めた法律がありますが、時効の問題があるので、2018年以降にそれを刑事事件化するのは困難なのではないでしょうか?