悪質な過積載の即時告発事例

産業廃棄物運搬車両が告発されたわけではありませんが、
排出事業者と収集運搬業者の双方に関わりがある実例ですので、ご紹介しておきます。

2015年6月3日 テレビ朝日 “過積載”で全国初の刑事告発 ネクスコ東日本

 高速道路上で制限された重量を大きく上回る違反車両を走らせたとして、ネクスコ東日本が3日、全国で初めて運送会社と運転手を刑事告発したことが分かりました。

 国土交通省によりますと、総重量20tを超える違反車両は全車両の1割以下ですが、橋の亀裂や陥没などインフラ劣化の主な原因になっています。都内の荒川河口橋では、この影響で、完成から20年にもかかわらず、4600カ所以上の亀裂が見つかっています。こうした事態を受け、国交省は、2月から悪質な違反車両を見つけた場合、道路管理者がすぐに刑事告発できるよう規制を強化しています。関係者への取材で、ネクスコ東日本が3日、千葉県の東関東自動車道で基準よりも2倍以上重たい過積載の車両を走らせたとして、県内の運送会社と運転手を道路法違反の疑いで刑事告発したことが分かりました。事故に至らずに刑事告発するのは全国で初めてとなります。

当ブログでも、2014年11月13日記事 「国交省、悪質な過積載車両を迅速に刑事告発する方針に」で、悪質な過積載が即時告発される動きにあることを紹介したところです。

その後、2015年1月23日付で、国土交通省から
『車両の通行の制限について』等の一部改正について ~重量が基準の2倍以上の悪質違反者に対する即時告発の実施~」が公表されており、

基準の2倍以上の重量超過の悪質違反者に対しては、現地取締りで違反を確認した場合に、その事実をもって告発を行う

という通達になってから初めての告発事例となりました。

罰則としては、国土交通省の公表資料では、道路法第102条違反で「100万円以下の罰金等」となっていますが、
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正しくは道路法第104条違反で「100万円以下の罰金」ではないかと思われます。

道路法
第104条  次の各号のいずれかに該当する者は、100万円以下の罰金に処する。
 一  第47条第2項の規定に違反し、又は同条第1項の政令で定める最高限度を超える車両の通行に関し第47条の2第1項の規定により道路管理者が付した条件に違反して車両を通行させた者
 二~五 略

いずれにせよ、利益のねん出に四苦八苦している運送事業者にとっては、非常に痛い罰金額ですので、「一罰百戒」の効果を望めそうです。

また、テレビニュースの表現では、

道路管理者がすぐに刑事告発できるよう規制を強化しています。

となっていますが、

より正確に言うならば、
「(国土交通省は)道路管理者に対し、すぐに刑事告発を行うように求めています。」
となろうかと思います。

改正されたのが国土交通省の「通達」である以上、
通達一本で刑事告発が急にできるようになったわけではなく、
「通達によって、刑事告発するべきか否かの判断基準が明確化された」というのが正確なところです。

昨年以前であっても、法律的には過積載を現認した際に刑事告発をやろうと思えばできたのです。

問題は、告発すべきか否かの判断が付きにくかったこと。

今回のニュース報道では、
「法律」と行政の内部マニュアルに過ぎない「通達」を混同しています。

報道機関は正しい情報を伝えることが社会的存在意義ですが、
それを全うするためには、最低限の法律的なリテラシーが不可欠です。

報道機関の情報を受け取る立場の我々としても、情報を鵜呑みにするのではなく、自分自身でその真偽を考える訓練を積む必要がありそうです。

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